つらすぎる過去を背負った『ONE PIECE』敵キャラ 悪役なのに思わず同情?
漫画『ONE PIECE』(作:尾田栄一郎)の悪役たちには数々の非人道的なふるまいのエピソードが多く、はらわたが煮えくり返った読者もいるかもしれない。しかし、そんな悪役たちの中には“自身が壮絶な人生を送ってきた”というパターンも少なくない。今回は、つらい過去がある『ONE PIECE』の悪役を紹介しよう。
極悪非道な悪役たちのなかには過去につらい傷を負った者たち
漫画『ONE PIECE』(作:尾田栄一郎)の悪役たちには数々の非人道的なふるまいのエピソードが多く、はらわたが煮えくり返った読者もいるかもしれない。しかし、そんな悪役たちの中には“自身が壮絶な人生を送ってきた”というパターンも少なくない。今回は、つらい過去がある『ONE PIECE』の悪役を紹介しよう。
(※以下、漫画の内容に関する記述があります)
物語の序盤である「東の海」編でもっとも注目すべき悪役は、魚人海賊団を束ねるノコギリザメの魚人・アーロンだ。
アーロンは麦わらの一味の航海士・ナミの故郷を長年にわたり支配し、逆らう者や貢ぎ金を納められない者の命を容赦なく奪ってきた。その証拠にナミは少女の頃、養母であるベルメールをアーロンの手によって殺されている。
そんなアーロンは人間を下等な種族と称するなど、人間に対する憎しみと侮蔑をあらわにしていた。しかし、その理由は、自身がかつて所属していた「タイヨウの海賊団」の船長であるフィッシャー・タイガーの死にあった。
タイガーは海軍に狙われて瀕死の折、人間からの輸血を拒んで死に至っている。彼が人間の血を拒んだのは、天竜人によって「奴隷」にされた過去があるからだ。人間からの仕打ちによって心の底では誰よりも人間を憎んでいたタイガーは、人間の血が自分の体内に入るのを拒否したのである。
魚人族は、長年にわたって人間たちから差別を受けていたという悲しみの歴史を持つ種族。被差別民として生きてきた怒りと悲しみが、人間を恐怖で支配するアーロンの行動につながったのかもしれない。
2人目は「天竜人」として生を受けた、元王下七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴだ。彼は幼少期の折、天竜人でありながら「人間として暮らしたい」という父の考えのもと、マリージョアを出て生きていくことになる。
しかし、その暮らしの中で彼らを待ち受けていたのは、天竜人への恨みを募らせる人々からの迫害の日々だった。
天竜人に戻るため、自らの父を殺すという凶行を冒し、マリージョアに戻るも、天竜人には戻れなかったドフラミンゴ。子どものころにそのような壮絶な経験をしたからか、自分の仲間、特に「幹部」と呼ばれるものたちを傷つけることは決して許さない「血の掟」を掲げている。
結果的には実の弟・ロシナンテの裏切りを許さず、実の父だけでなく実の弟すらも手にかけることになったという悲劇の悪役である。
記憶に新しい「ワノ国」編で「悲劇の悪役」としてあげられるのは黒炭カン十郎だろう。カン十郎は、光月おでんの忠臣として狐火の錦えもんらと長年にわたって苦労してきた侍の1人である。しかし、その正体は黒炭家の一員であり、ワノ国を支配する将軍・黒炭オロチの放ったスパイだった。
カン十郎は大衆劇の両親の元に生まれ育ったが、長年ワノ国で迫害され続けた黒炭家の一員という理由から、舞台の上演中に両親が殺害されてしまう。
彼はまさに「環境のせいで悪役になってしまった人物」であり、多くの読者に憎まれながらも、最後はオロチとともに焼死するという、なんとも後味の悪い最期を迎えた。
SNS上では「魚人族が抱える苦しみや、ドフラミンゴの過去の存在によって、『ONE PIECE』が勧善懲悪の物語でないことが際立つ」といった投稿も寄せられている。悪役にもしっかりとドラマを持たせることで、『ONE PIECE』のストーリーがさらに奥深いものになっているのかもしれない。