サザンオールスターズの「TSUNAMI」や福山雅治の「桜坂」が大ヒットした2000年。58歳の新人男性が歌う演歌「孫」が大ヒットし、異彩を放っていた。歌っていたのは、その前年にデビューしたばかりの歌手・大泉逸郎さん(78)。孫のかわいさを率直に歌い、多くの人の共感をよんだ。その大泉さんは今、どうしているのか。大泉さんに電話で聞いた。

「孫」でメジャーデビューしたときもそうだけど、山形県の河北町でさくらんぼ農園やりながら歌手やってるんだ。今年は新型コロナウイルスで親戚や友達んとこも、どこにも行けないから、そのぶん、さくらんぼに手かけてる。今、ちょうど赤くなり始めたところ。手入れするほどこたえてくれるから面白いよ。

　1800坪の畑に佐藤錦や紅秀峰、紅さやかとかが70～80本植わってる。毎朝4時に起きて、女房と2人、車で5、6分の畑へ行って、夜6時頃まで作業してる。でも、疲れすぎないように、2時間に1回ぐらい、畑の中に作った囲炉裏でお茶飲んだりしながらだね。たまに、お客さんが来ると、即席ステージ、ってんで歌ってあげたりもして(笑)。楽しみながらやってるよ。夜寝るのは9時半～10時頃。年のせいで早いよ。

　家は二世帯住宅を建てていて、長男夫婦と4人で一緒に住んでる。“1億円の孫御殿”?　いやいや、そんなことない(笑)。でも、一緒に住みたくて二世帯住宅建てたのさ。1階に住んで、2階の長男夫婦の生活の音が聞こえると、「ああ元気にやってるな」って、それも嬉しいっていう感じだね。孫の慎太郎はもう26歳。東京の保育園で働いてるよ。独身だから、ひ孫はまだまだ(笑)。結婚も、山形に帰ってウチ継いでくれるのかも、慎太郎の考えだからどうなるかわかんない。慎太郎の人生。こっちからあれこれ言えない。

　子供は2人で、次男もいるんだけど、次男は女房の実家のある福島へ養子に行って、そこで結婚して暮らしてるんだ。東日本大震災のときは被災して、一時、ウチへ避難してきて一緒に暮らしてたんだけど、もう福島へ戻ってる。元いたとこは住めなくなったから、別んとこだけどね。次男に子供はいなくて、長男の子の慎太郎は一人っ子だから、孫は慎太郎1人っきり。だからよけいにめんごいよね。

　自分も高校出てから東京行ってたから。深川の工場に勤めてさ。そこで、2歳年下の伸子(のぶこ)と出会って23歳で結婚。そして、山形へ戻ってきたの。最初はメリヤス工場とかで働いてたんだけど、30歳の頃、オヤジがやってた畑継いで、もう40、50年になるね。最近は年取って、思うようにいかないこともある。ビニールハウスなんて、4、5メートルも高さがあるところへ上って、ビニール張ったりするわけだから大変なんだよ。それでも、好きでやってることだから、畑仕事が薬になってるんじゃないかなぁ。