プロボクサー兼コスプレイヤーのTaKaNa、トレーナーから言われた「自分の顔は自分で守れ」
プロボクサー兼コスプレイヤーの女性がいる。横浜光ボクシングジム(以下、横浜光)所属のTaKaNa(タカナ)。2022年から本格的に練習を始め、今年4月に挑戦したプロテストに合格し、同ジム初の女子プロボクサーとなった。コスプレイヤーとしては、9月に開催された「東京ゲームショウ2023(以下、TGS)」の企業ブースで、『鉄拳』シリーズに登場するシャオユウの公式コスプレイヤーを担当。ボクサーという一面を生かし、格闘キャラクターの動きを再現した。子役、アイドルを経験して現在は唯一無二の二刀流。悩み、迷いもありながらそれを続ける理由を聞いた。以下、インタビュー「後編」。
横浜光ボクシングジム所属のTaKaNa、インタビュー後編
プロボクサー兼コスプレイヤーの女性がいる。横浜光ボクシングジム(以下、横浜光)所属のTaKaNa(タカナ)。2022年から本格的に練習を始め、今年4月に挑戦したプロテストに合格し、同ジム初の女子プロボクサーとなった。コスプレイヤーとしては、9月に開催された「東京ゲームショウ2023(以下、TGS)」の企業ブースで、『鉄拳』シリーズに登場するシャオユウの公式コスプレイヤーを担当。ボクサーという一面を生かし、格闘キャラクターの動きを再現した。子役、アイドルを経験して現在は唯一無二の二刀流。悩み、迷いもありながらそれを続ける理由を聞いた。以下、インタビュー「後編」。(取材・文=大野代樹)
――「プロボクサー×コスプレイヤー」。両方を続けることに悩みや迷いはなかったのでしょうか。
「ありました。私が所属している横浜光ボクシングジムは、もともと女子選手を受け入れてなくて、入った当初は『プロになるまでは面倒を見るけど、試合をやりたいなら他のジムに行って』というスタンスだったんです。女子ボクシングはマイナー競技なので、お金にも話題にもならない。だから、女子を受け入れるメリットはないんですよ。だけど、私は『どうしてもここでプロになりたい』と思ったので、仕事終わりに毎日通い続けました。常にオーディションを受けているかのような気持ちで練習をしていました。コスプレやMCの仕事も見せて、今後、どれだけファンを獲得して有名になるかというのを見せつけたんです。その頑張りが認められて、『プロになってからも続けていい』と言ってもらえた時は、うれしくて号泣しました(笑)。とはいえ、スタート地点に立てただけです。これから初の女子選手としてのデビューを控えているので、かなりプレッシャーもあります」
――この二刀流に否定的な声もあると思いますが。
「『どっちつかずなんじゃないか』『どっちも真面目にやってないんじゃないか』と思われても仕方ないです。でも、そいう意見も分かった上でやっているので、本当に両方全力なんですよ。これを証明するためには、結果で見せるしかない世界だと思っています。ボクシングは練習あるのみ、コスプレはキャラに近づく努力あるのみです」
――横浜光ボクシングジムでプロになりたかった理由とは。
「横浜周辺にある5つのジムに体験に行きましたが、ここのトレーニングがめちゃくちゃきつかったんです。ずっと続けるなら『このジムでやりたい!』と燃えるところの方がいいし、『毎日やったら強くなれるかも』と思って決めました。メニューとしては回数がやや少ないだけで、基本的には男性と同じものをやっています」
――具体的にはどのようなトレーニングをしているのでしょうか。
「男性と違って筋肉量が少ないので、カバーするために重りを持ってスクワットをしたり、スタミナをつけるためのランニング、ボクシングの基本であるシャドーやミット、たまにスパーリングをしています。スパーは男性の先輩選手に相手をしてもらっています」
――男性とのスパーは過酷ですね。
「そうですね。今後は女性がいるジムに出稽古に行かせてもらうこともあると思うんですけど、環境が全く違うので『大変なんだろうな』と思っています」
――プロテスト合格後の状況は。
「6月に母親が亡くなり、立て続けに祖父、祖母が亡くなってしまいました。それで1か月半くらいジムに行けませんでした。今は次に進むための休養と練習期間だと割り切って、ジムでトレーニングに励んでいます」
――デビュー戦が楽しみですね。プロとしてやる以上、減量をする場面もあると思います。
「試合が決まったら、今より5、6キロ落とすことになるでしょう。試合経験がないのでちゃんと減量をしたことがないんですけど、2か月くらいはほしいです。すごく食べるのが好きで、ケーキが一番好きです(笑)。生クリームとスポンジの組み合わせがたまりません。でも、計量で失敗すると地獄なので減量中は我慢したいと思います。当たり前ですが」
――美容との両立が大変そうですね。
「ボクシングは顔を殴られることもある競技なので、人前に立つお仕事とのバランスは難しいですね。基本的にボクシングを1番に考えていたいので、試合が決まったらその前後にはお仕事を入れないようにしようと思っています。あとは、なるべく顔を殴られないようにしたいですね。それに特化したトレーニングもしています。トレーナーに『自分の顔は自分で守れ』と常に言われているので」
――憧れている選手はいますか。
「逆に『憧れられる存在になりたい』と思って生きています。女子ボクサーは人口が少ない世界なので、ボクシングやっている姿を見せて、同世代の人や子どもたちに興味を持ってもらうことも目標にしています。全力で何かに熱中するということは、体にも心にもいいことだと思うので、子どもたちに伝えていきたいです。実績ができてきたら、子ども向けのボクシング体験教室をやってみたいと思っています」
――世界チャンピオンになるために必要だと思うことは。
「やっぱり、『無敗』はすごく難しいと思うんです。無敗のチャンピオンもいますし、誰もが憧れることですが、私は負けても諦めないで続けることが大事だと思っています。まだ負けも勝ちも経験していないのですが、負けてもまた練習に行って前に進む。『やりたい、続けたい、夢を叶えたい』という気持ちを常に持って、練習を続けていきたいと思っています」