プロボクサー兼コスプレイヤーの女性がいる。横浜光ボクシングジム（以下、横浜光）所属のTaKaNa（タカナ）。2022年から本格的に練習を始め、今年4月に挑戦したプロテストに合格し、同ジム初の女子プロボクサーとなった。コスプレイヤーとしては、9月に開催された「東京ゲームショウ2023（以下、TGS）」の企業ブースで、『鉄拳』シリーズに登場するシャオユウの公式コスプレイヤーを担当。ボクサーという一面を生かし、格闘キャラクターの動きを再現した。子役を経てアイドル活動をしていた時期もあったタカナの素顔に迫った。以下、インタビュー「前編」。（取材・構成＝大野代樹）

――小学生の時に子役デビューをされたそうですが、幼少期から芸能界への憧れがあったのでしょうか。

「母から聞いた話によると、幼稚園の時からミュージカルに憧れていたみたいで、中でも『セーラームーン』のミュージカルがすごく好きで『私もやりたい』と言っていたようです。それで母が芸能事務所のオーディションに応募して、受けたら合格。だけど、めちゃめちゃ泣いて『やりたくない！』と言ってお断りしたみたいです（笑）。結局、小学生に上がってから、別事務所のオーディションを受けて、子役になりました」

――アイドルとして活動していた時期もあったとか。

「子役をやっていた時に、アイドルグループさんと一緒にお仕事をさせていただく機会があったんです。そこでグループのプロデューサーさんに『歌って』と言われて、歌ったら気に入っていただけたのか『アイドルやらない？』と声をかけていただけたんです。中学生から約3年間活動していました。グループ名は非公開にしているので、見つけられた人はラッキーです（笑）」

――アイドル活動をしながらの高校生活は。

「高校は芸能系でした。だけど、徐々にお仕事が忙しくなったので『やりたいことに専念しよう』ということで中退しました。その後もアイドル活動を続けていたんですけど、精神的にきつくて病んでしまって、声が出なくなっちゃったんです。それでアイドルは辞めました。活動がハードだったのと、何かと不安定な年頃だったから病んでしまったんだろうなと思います」

――大変な時期を乗り越えて今があるんですね。

「少し休んで再スタートしました。自分でボイストレーニングやダンスレッスンに通いつつ、新しい事務所に移って、それからはお芝居や舞台への出演、モデルのお仕事もさせていただいていました」

――コスプレはいつ頃から始めたのですか。

「中学生の時で、14歳でした。今でも忘れられないんですけど、ボーカロイドが大好きで鏡音リンちゃんのコスプレをしました。中学生の時は自分で衣装を作っていたので、毎週のように徹夜していました（笑）。物心つく前からアニメや漫画、ゲームが好きで、筋金入りのオタクだったんですよね。芸能界を目指したきっかけも『セーラームーン』だったくらいですし。コミケ（コミックマーケット）にも14歳の頃から参加していて、今ではお仕事でサークルのコスプレイヤーをさせていただいています。20歳くらいから徐々にお仕事につながるようになって、いろいろな企業さんでコスプレをさせていただいています」

――初コスプレに『セーラームーン』は選ばれなかったんですね。

「私の中で偉大な作品過ぎて、やりたかったけど踏み出せませんでした。幼稚園の頃に『セーラームーン』のコスチュームを着ている写真はたくさんあるんですけど、『がっつりコスプレ』ってなると気合いを入れてやりたいので、まだ準備が整っていないかなと」

――では、プロボクサーを目指したきかっけは。

「もともと、キックボクシングとグラップリングを趣味程度にやっていました。体作りやアクション演技のためでした。そして、22歳くらいの時に韓国のアイドルを目指しました。ただ、韓国では16歳からデビューするのが当たり前。20歳以下じゃないとオーディションを受けられなかったので、年齢詐称して受けていたんですけど、やっぱり難しくて……。それで諦めました。挫折して落ち込んでいた時には既にボクシングを始めていたので、『せっかくついた筋肉や技術を失うのは嫌だ』と思い、練習を再開したんです。ずっと練習していたおかげで立ち直れたので、『ボクシングに救われた』と思ったんですね。恩返しをするためにも、トップを目指して本格的に始めることを決意しました」

――ボクシングがコスプレ活動で生きた場面はありましたか。

「『TGS』では、企業ブースで格闘ゲームのキャラクター（シャオユウ）のコスプレをさせていただいたんですけど、体がガッチリしているところや、ボクシングで身についた動きを評価してもらえて、ご依頼いただけました。有名なコスプレイヤーさんにお仕事がいってしまうので、まだコスプレで知名度が低い私はなかなかお仕事がもらいにくいんですけど、他のコスプレイヤーさんにはない部分をコスプレで表現していきたいと思いました」

――とはいえ、かなり忙しいようですね。Xで「53連勤」と記していましたが。

「ありがたいことにお仕事をいただけていて！　でも、これは本当にたまたまで、今はイベントの繁忙期なんです。それでこの連勤数になってしまいました（笑）。練習にももっと力を入れたいので、バランスを調整しようと思っています」