5分に1回は探し物、天然女優・北村夏未の素顔 プロデューサー評は「ぶっとんだ感性」

「特技は振袖を1人で着られること」「5分に1回は探し物をしている」「時々ご飯を食べるの忘れてしまう」……ゆるい空気感をまとっている俳優・24歳の北村夏未が、12月13日から東京・赤坂RED/THEATERで上演される舞台『赤坂ビーンズクラブ‐side3-』に出演している。選考でプロデューサーに「ぶっ飛んでいる」と評価された感性の持ち主。その素顔に迫った。

透明感ある声も特徴的だか「生まれてからずっとこの声なので、あまり気にしていなかったです」という北村夏未【写真:ENCOUNT編集部】
透明感ある声も特徴的だか「生まれてからずっとこの声なので、あまり気にしていなかったです」という北村夏未【写真:ENCOUNT編集部】

13日開幕の舞台『赤坂ビーンズクラブ‐side3-』に出演

「特技は振袖を1人で着られること」「5分に1回は探し物をしている」「時々ご飯を食べるの忘れてしまう」……ゆるい空気感をまとっている俳優・24歳の北村夏未が、12月13日から東京・赤坂RED/THEATERで上演される舞台『赤坂ビーンズクラブ‐side3-』に出演している。選考でプロデューサーに「ぶっ飛んでいる」と評価された感性の持ち主。その素顔に迫った。(取材・文=大宮高史)

「探し物、忘れ物はしょっちゅうで、今日も家を出るときにメイク道具が見つからなくて焦りました(笑)。この舞台は場面転換がすごく速くて、楽屋で探し物をしているひまなんてないので、アクセサリーも多めに準備しておかないとですね。見かねた共演の水野花梨さんから、予備にとアイライナーもたくさんもらってしまいました」

 そう話す北村は既に約10年の舞台歴を持つ。『赤坂ビーンズクラブ』は8人の女性俳優だけで演じるショートドラマ、歌、圧巻のダンス、コントなどで構成されるオリジナルのレビューショー。昨年の夏・冬に続いて3度目の上演だ。

「私はストレートプレイをメインでやってきました。歌やダンスについては、共演者の皆さんのレベルがとても高いので、『技術にこだわらずにどう表現磨いていこうか』と日々挑戦しています」

 彼女がなぜ出演者に選ばれたのか。選考はプロデューサーの難波利幸氏との面談で進んだが、同氏には「会話を続けるうちにぶっとんだ感性が伝わってくるんです。それも本人が意図しないうちに」と言わしめている。

難波氏「この舞台はシュールな笑いやハイレベルなコーラスやダンス、昭和のバラエティー番組のようなカラフルな構成にしています。選考で大切なのは、会話の中でその人の人となりやセンスをさぐっていくんですが、笑いを取ろうとしなくても彼女の感覚が平凡ではないのは分かるんですね。言われたことに応えられる俳優はたくさんいますが、僕はそういう会話の一端から『自ら役を作り上げる力を持っているのか』を知りたいといつも思うんです」

 一方で、北村自身は「天然」の自覚はさほどなかったようだ。

「中学から高校まで入っていた英語劇の部活で、新入生歓迎会でペアを組んだ友達に『最初に会ったときにすごい変な子だった』と高校1年の頃に言われました。仲はいいんですが、そんなこと全く気付かなかったですね。中学、高校と英語劇のサークルにいて、もっと演劇をやりたくて演劇の専門学校を受けようとしたら、母に泣かれました。他に進路も考えていなくて……いろんな人との交流も役者に必要かなと、大学に進んで俳優と学業を両立して、卒業して今に至ります」

 舞台を離れると、日本舞踊を学んでいたり、着物好きという一面もある。

「『お着物が好きです』って言っていると、友達や親せきが古着とかをたくさんくれるんです。オーディションにも和装で行ったら、それをきっかけに別件で振袖を着るお仕事をいただいたこともあります」

 趣味のウクレレに出会ったきっかけを聞くと、「子どもの頃に、クリスマスにサンタさんからウクレレをもらったのが始まりですね」と真顔で答えた。

「『小さくてかわいいので、ギターより簡単そう』と思って弾いてみたんですが、すぐ飽きてしまいました(笑)。それから長いこと触っていなかったんですが、コロナで舞台のお仕事がほとんどなくなって暇だった時期にまた弾くようになりました。そして、オーディションでウクレレの弾き語りしたことがきっかけで、今の事務所に所属させてもらいました。好きでやっていることが仕事につながる瞬間はよくありますね」

 さらに、「夏と冬で体温が変わるんですよ」と言い、自身の変わった「特技」を明かした。

「冬は体温計が35度台になることもあります。なのに、夏は37度台でも平気だったりするんです。だから、検温で『体調不良』と疑われることもよくあります(笑)」

北村と『赤坂ビーンズクラブ』プロデューサーの難波利幸氏(右)【写真:ENCOUNT編集部】
北村と『赤坂ビーンズクラブ』プロデューサーの難波利幸氏(右)【写真:ENCOUNT編集部】

俳優としての自身の長所は「対応力」

いう。

「言われたことにはすぐ『面白そう』と思って試してみたくなります。だから、むちゃ振りもむちゃ振りと思わずにやってしまえるたちなんですが……『赤坂ビーンズクラブ』は逆なんですね。稽古場での具体的なオーダーはほとんどなくて、もっと自分を出して『こういうことがしたい』という意志を見せてほしいと求められています」

 ストーリーの異なるショートドラマでつないでいく本作は、稽古の過程で配役が決まっていく。

「稽古中は俳優同士で同じ役の演技を見ることができるんです。俳優同士で競い合える環境で、演出家からもオーダーをもらうより、日常での考え事や習慣を聞かれることが多くて、毎日がオーディションのような感覚ですね」

 北村自身、学生演劇では劇作や演出も担当していたが、こだわりが強い一面もある。

「演出の側でいると、『ここはこうしたい』というポイントがたくさん見えてきて、それを絶対に譲りたくなくて、音を流す秒単位のきっかけにもこだわってケンカ寸前になったこともあります。自己アピールは苦手で、オーディションでも『自己PRより演技を見て』と思うたちなんですが、時には自分を出していくことも必要なのかなと思います」

 演劇に熱中した原点を聞くと、「子どもの頃に見たグリム童話の舞台です」と即答した。

「といっても大人向けの演出で、原典のように人がどんどん死んでいく劇が衝撃でした。その脚本集を今でも持っています。テレビや映画ではない、生の舞台で初めて見る光景がそれでした」

 鮮烈な世界観の舞台が脳裏に残っているようだ。だからこそ、映像仕事の経験を積みながらも舞台を主軸に活動し続けている。そして、目標とする俳優像を聞くと、「満島ひかりさんのような』と返した。

「『この人が出てるんだから面白い作品になるだろう』と確信させてくれる、そんな信頼をお客さまからいただける俳優ですね。今、ネットでショート動画がすごくはやっていますよね。そんな時代に、お金を払って劇場で結末が分からない芝居を2時間楽しんでもらうことってハードルの高いことだと思います。そう考えると短い劇を次々演じていく『赤坂ビーンズクラブ』もレトロなショーに見えて、現代的なエンタメなのかもしれません。『短い時間でどれだけお客様にインパクトを与えられるか』を楽しんで演じていきたいです」

 北村は「根は普通の人なんだけれど、わざとキャラを作らなくてもちょっと変わった個性がにじみ出る人。そんな存在がいるから面白い」と評されてきた。そんな24歳は、舞台でどんなパフォーマンスを見せるか。今後、さらに気になる存在になりそうだ。

□北村夏未(きたむら・なつみ)1999年4月25日、東京都生まれ。俳優業の他、ラジオ、ナレーションなど声の仕事でも活動中。「きものクイーンコンテスト2022」でフォトジェニック賞を受賞。特技は日舞、着付け、ウクレレ。160センチ。

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