朝倉未来は「ビジネスの才覚がすごい」 賛否両論のBreakingDownを「僕はめちゃくちゃ賛成」と評価するワケ
オーディションや大会が配信されるたびに物議を醸しているのが、BreakingDownだ。格闘技エンターテインメントを掲げて、話題性やストーリーには事欠かないものの、選手の言動や元不良の武勇伝に嫌悪感を抱く格闘技ファンもいる。つい先日には元K-1の魔裟斗が、「喧嘩自慢」横行の格闘界に対し、「すそ野がしぼんじゃう」と警鐘を鳴らした。そんななか、BreakingDownに「僕はめちゃくちゃ賛成なんですよ」と高評価を下すのが、経済アナリストの森永康平氏だ。9月には自身もリングデビューを果たした“異色の経済通”から見たBreakingDownの魅力とは。
「喧嘩自慢」横行の格闘界に警鐘を鳴らした魔裟斗
オーディションや大会が配信されるたびに物議を醸しているのが、BreakingDownだ。格闘技エンターテインメントを掲げて、話題性やストーリーには事欠かないものの、選手の言動や元不良の武勇伝に嫌悪感を抱く格闘技ファンもいる。つい先日には元K-1の魔裟斗が、「喧嘩自慢」横行の格闘界に対し、「すそ野がしぼんじゃう」と警鐘を鳴らした。そんななか、BreakingDownに「僕はめちゃくちゃ賛成なんですよ」と高評価を下すのが、経済アナリストの森永康平氏だ。9月には自身もリングデビューを果たした“異色の経済通”から見たBreakingDownの魅力とは。
「最近BreakingDownに対する賛否両論が盛り上がっていますよね。ネット上でも魔裟斗さんの発言が物議をかもしているじゃないですか。先日ケラモフを倒した鈴木千裕選手も魔裟斗さんに賛同するような発言をしていましたけど、僕はどっちかっていうとあれはエンターテインメントとして見ているので、否定する必要は全くないし、逆にあれがきっかけで格闘技を好きになる人は絶対いっぱいいるから、僕はめちゃくちゃ賛成なんですよ」
森永氏は渦中のBreakingDownをこう評した。
経済評論家として知られる森永卓郎氏の長男。格闘技は小学生から大学生まで継続して見続け、K-1やPRIDEの全盛期に熱中した。プライベートでは柔道の有段者でもある。最近の主要マッチはすべて会場で観戦しているという森永氏がいま、熱い視線を注いでいるのがBreakingDownだ。
最大の魅力は何より、一般層への影響力だと言い切る。
「ちゃんとしたもの以外は認めないみたいなことやっていたら、どんどん尻すぼみしていくのがカルチャーだと思う。普段は格闘技に全然興味ないけど、何となく見てますみたいな緩い人を許容していかないと、カルチャーは広がらないから、僕はBreakingDownはめちゃくちゃいいと思います。あんまり否定する必要もないかなと思うし、格闘技業界にすごく貢献している気はしますね。そもそも新参者に優しくしないとカルチャーは廃れますよ。古参が老害化するようなカルチャーは長続きしません」
格闘技はコアなファンが多いことでも知られる。しかし、どの業界でも“コップの中”ではいけないと森永氏は訴える。「“朝倉未来の試合しか見ません”みたいな人でも別に良くない?」と、付け加えた。
一方で、懸念材料もある。BreakingDownの持つアウトロー性だ。殺伐とした空気が視聴者を引きつける反面、エンターテインメントとはいえ、暴力的な言動や乱闘騒ぎが他の格闘技といっしょくたにされる結果、健全な発展にはつながらないという見方もある。
「結局そこがメインになっちゃっていることが問題だってことですよね。僕もオーディションを見たりしますけど、元犯罪者のやつらが犯罪歴を自慢したりする。殺人以外は全部やったみたいな。そこはふざけんなと思っています。いや、むしろお前よく堂々と出てこれんなって話なわけですよ。そいつが犯罪したってことは被害者が絶対いるわけじゃないですか。それを堂々と自慢しているお前の倫理感どうよって思いますし、クソだなって。そういう人たちには申し訳ないけど、ろくでもない人間だとしか僕は思っていません」と、ばっさり切り捨てた。
「格闘技業界がBreakingDownに寄せていってはいけない」
森永氏の目に経営者・朝倉未来の姿はどう映っているのか。
「朝倉未来を見ていると、ビジネスの才覚がすごいと思うんですよ。そういう意味では彼は格闘技以外の部分でもセンスがあるんだと思います。BreakingDownをオーディションから収録して放映したっていうのは、本当に天才的な判断だったと思っていますね。何かよく分からないヤンキーのキャットファイトみたいな1分の試合だけを見せられても、なんだこいつら? って思っておしまいじゃないですか。試合にどれだけ感情移入できるかは、その人のことをどれだけ知っているかが全てです。試合までのストーリーを全部流して、さらには試合後の絡みまでコンテンツとして一本化させたからあれだけ盛り上がっている」と、目を細めた。
人気絶頂にあるBreakingDown。
一方、格闘技業界にも対抗手段がないわけではないという。
「格闘技業界は単純にレベルの高い試合を見せていくしかないと思うんですけど、ただそれをビジネスとして続けていくためには、その試合がレベルが高いんだって満足できる人を増やさないといけないと思うんです。結局日本の場合って日本語っていう言語的障壁があるので、日本国内で何とか魅了してマーケットを開いていかないと、UFCとかベラトールみたいにならないと思っています。間違っても格闘技業界がBreakingDownに寄せていってはいけないと考えます。ただ、早くもそっちに寄っていっている懸念はありますが」
例えば、日本中が固唾(かたず)をのんだ那須川天心VS武尊戦は、格闘技のだいご味を伝える大一番だった。BreakingDownではまず実現できない闘いだった。ただ、次に続くのはどの選手の試合なのか。選手が知られていなければ、そもそもビッグマッチにはなりえない。
「その入口をRIZINやK-1から作るのって今はすごく難しいと思います。そういう意味では、よしあしあると思うけど、BreakingDownみたいにめちゃくちゃ敷居の低いところからすそ野を広げていくというのは、ある意味、仕掛けとしては正しい」と、森永氏はBreakingDownの役割を期待した。
普段興味のない層をどれだけ取り込めるかは、どの業界でも喫緊の課題となっている。格闘技が大みそかに地上波で放送していたころは、まだその可能性は大きかったと森永氏は振り返る。
「最近、民放で格闘技をやらなくなっちゃったじゃないですか。あれは格闘技業界にとっては結構マイナスだと思うんです。結局テレビって、僕はいまだに強大な威力を持っていると思っていて、とりあえずつけとくかみたいなノリからの、なんか見るようになるみたいな流れはめちゃくちゃあると思っています。今はPPVが主流だから金を払ってまで見るみたいなモチベーションがない限り、(ファン以外は)格闘技と接点がない。だから格闘技が広がる要素がないんですよ。BreakingDownは本戦はPPVでも、ある意味メインコンテンツのオーディションは、未来君のYouTubeで無料で見れちゃう。だからやっぱり仕掛けとして強いなと思います」と、結んだ。
□森永康平(もりなが・こうへい) 1985年2月5日、埼玉県所沢市出身。SBIホールディングス、楽天証券などを経て、2018年6月、金融教育ベンチャーのマネネを創業。23年9月、キックボクシングで格闘技デビュー。3児の父。