「どっかのタイミングでBreakingDownに応募したい」 経済アナリストと格闘家を両立 異色の“2足のわらじ”の理由

経済評論家・森永卓郎氏の長男・森永康平氏は、経済アナリストとして活躍しながら、アマチュア格闘家としてリングに立つ異色の“2足のわらじ”をはいている。9月にキックボクシングでデビューすると、10月には総合格闘技(MMA)ルールで試合を行い、判定勝利を収めた。気鋭の若き経済論客として注目される康平氏はなぜ、全く畑違いの格闘技を始めたのか。実際にリングに上がった感想と格闘家としての目標を聞いた。

総合格闘技初戦で勝利を収めた森永康平氏【写真:ENCOUNT編集部】
総合格闘技初戦で勝利を収めた森永康平氏【写真:ENCOUNT編集部】

なぜ畑違いの格闘技に? ダイエットで20キロ減

 経済評論家・森永卓郎氏の長男・森永康平氏は、経済アナリストとして活躍しながら、アマチュア格闘家としてリングに立つ異色の“2足のわらじ”をはいている。9月にキックボクシングでデビューすると、10月には総合格闘技(MMA)ルールで試合を行い、判定勝利を収めた。気鋭の若き経済論客として注目される康平氏はなぜ、全く畑違いの格闘技を始めたのか。実際にリングに上がった感想と格闘家としての目標を聞いた。

芸能界屈指の肉体派が絶賛する驚きのトレーニングアイテムとは?

 きっかけは、今年の2月くらいだったと思います。かねて若者に政治や経済に興味を持ってもらいたいと思っていて、若者向けのマーケティング会社の社長に、「最近の若い子って何にハマってるの?」と尋ねたんですよ。いくつか若い子たちの間で熱いコンテンツをピックアップしてくれて、そのうちの一つがTikTokだったんですけど、僕みたいなアラフォーのおっさんが踊ってる動画をアップしても面白くない。「他にないの?」とリストを見たら、その中に格闘技があったんです。

 僕自身は小学生からずっと格闘技を見ているけど、若い子の間で人気があるイメージが全くなかったのですが、「BreakingDownがすごくはやっていて、一つのエンターテインメントとして格闘技に興味ない子も見ている」という説明を受けました。それで、周りの格闘技に興味はないけど、BreakingDownは見ている、っていう若い子たちに話を聞かせてもらっていると、そのうちの何人かはBreakingDownをきっかけにRIZINやK-1を見るようになったと言うんです。これはすごく影響力あるな、と実感して、これは活用するべきだと思って、格闘技をやることにしました。

 キックボクシングの練習を始めたのは6月からです。それまでは、まずは動ける体を作ろうと、ダイエットに全力をかけました。4月に80キロあった体重を、6月には60キロまで20キロ落としました。それからは、ダイエットの延長でボクササイズのジムに通いつつ、現役選手がいるジムに出稽古をして実戦練習を積みました。

 周りからすると、僕が急に格闘技を始めると言い出して、無謀にも試合をやっていると思われがちですが、一応バックボーンもあるんですよ。高校3年間は柔道部で、初段を持っています。大学では2年間、松濤館という流派の空手をやっていました。柔道も空手も市内大会では入賞したこともあるんです。

リングに上がると目つきが変わる森永康平氏(右)【写真:令和熾烈大合戦】
リングに上がると目つきが変わる森永康平氏(右)【写真:令和熾烈大合戦】

プロレスラー最強説が崩壊…衝撃を受けたミルコ、ノゲイラの試合

 格闘技は小学校4年生ぐらいから大学卒業するぐらいまでずっと見ていました。最初は新日本プロレスにはまって、その後K-1、PRIDEが出てきて熱中しましたね。寝技はアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、立ち技はミルコ・クロコップ、プロレスラーは小島聡が好きでした。僕の中でプロレスラー最強説を持っていたので、藤田和之や永田裕志がミルコに秒殺されたときには衝撃を受けましたね。あれだけ自分が強いと思っていた人達が、こんなにも相手にならないっていうミルコのやばさ……。僕は柔道やっていたときも基本投げ技の選手で、あんまり寝技は好きじゃなかったんですよ。地味でつまらないと思っていた。でも、ノゲイラの試合を見て寝技はすごいな、殴り合ってKOを取るのだけが格闘技じゃないんだなって驚きました。

 デビュー戦は9月、キックボクシング(2分2R)の試合でした。正直、リングに上がるまでは全然緊張していなくて、意外と緊張しないんだなって拍子抜けしていましたけど、いざゴングが鳴ると、急に視野が狭くなって、相手の一部しか見えなくなった。対戦相手の過去の試合の映像は何度も見ていたので、インファイターでボクサータイプの相手はカーンって鳴った瞬間に突進してくるだろうと思っていたら、こなかったんです。

 そこで、僕がジャブを打って距離を測った瞬間、バッと踏み込まれて、一発バチンと顔を殴られて、その瞬間にもう頭が真っ白になっちゃった。

 1Rの後半、たぶん僕の右フックがたまたま相手のあごに入って、相手の目が飛んだのが見えたんです。作戦を練るのが好きな僕はインファイターの相手に前蹴りで距離を取りながら戦おうと考えていたのに、パンチでいけるかもと思っちゃって、スケベ心が出て、パンチを打ち合うようになった。

 後で対戦相手から聞いた話だと、たしかに僕のパンチは効いていたようで、インターバルのとき、相手の選手がセコンドに「パンチがあるから、あまり食らうとやばいかも」という話をしていたそうです。すると、セコンドから「パンチを食らう前に倒しきれ」という指示が出たらしいんですよ。

 それで、2Rが始まったら、相手の選手が一気に手数で圧倒してきて、もう面食らっちゃいました。ガードを上げて耐えている際にプッシュ気味に押されたことでバランスを崩してこけてしまった。これがダウンの判定になってしまった。別にパンチが効いたということはなかったのですが、相手はチャンスだと思ったようで、ここで決めてやると一気にラッシュをかけてきて、僕はずっとガードしていたのですが、アマチュアの試合ですから安全第一ということで、そこで試合を止められてしまい、1分半ぐらいでTKO負けしました。

20キロ減量し、みちがえる肉体になった【写真:令和熾烈大合戦】
20キロ減量し、みちがえる肉体になった【写真:令和熾烈大合戦】

雪辱を期した2戦目 「勝ち方はどうでもいい。とにかく勝て」

 そこまで悔しいという気持ちはなかったです。そもそも6月ぐらいから始めて9月に試合しているので、それで勝てるほど甘くないよなって気持ちもあったし、相手がものすごく練習してきたんだなっていうのも感じることができていました。

 ただ、その後、家で試合の動画を見たらショックでしたね。思った以上にガードが下がっているし、パンチもストレートやジャブなどの真っ直ぐ系のパンチをほとんど打っていなくて、全部フックだけ。それでは勝てるわけないと思いました。

 次の試合は10月に決まっていました。今度は総合格闘技(MMA)ルールで、寝技がありました。どうしようかなってなったときに、戸井田カツヤさんに指導してもらったら、「森永君はグラップリングをやったことがないから、次の試合は絶対寝技をやるな。寝技は1か月やってうまくなることは絶対ないから。ストライク(打撃)だけでやれ」と言われたんですね。それを、うちのYouTubeをやっているチームに共有したら、「まずは勝つことが大事。KOとかサブミッションとか判定とか、勝ち方はどうでもいい。とにかく勝つことを第一に戦略を練ろう」と言うのです。

 そこで考えた作戦が、投げを入れることでした。僕は柔道部でずっと投げ技の選手だったこともあり、MMAの出稽古にいってスパーリングをしても、組まれて投げられることはほとんどありませんでした。逆にかなり格上の相手でも投げることはよくありました。でも、投げた後って柔道だと一本で終わりなんですけど、MMAは投げた後に早く寝技やパウンドにいかないと、逆にバックを取られてキメられるリスクがすごくある。しかも柔道着がなく裸なので、汗で滑るから投げた後に相手をうまくコントロールできない。これは誤算でした。そこで、「総合は3分2Rなので、2分50秒まではひたすらタックルを切って、立ち技だけに専念しよう。残り10秒になったら組んで投げて倒して、その後はゴングが鳴るまで相手を抑えつけておこう」と決めました。

 試合はだいたい思い通りになって、勝つことができました。でも、試合を見返したときにどうかというと、やっぱりガードが下がっている。あとは緊張ですね。リングに上がったら緊張しちゃって、2戦目も相手のパンチが先に顔に入ったことで頭が真っ白になっちゃって……。次の試合ではしっかりとガードを上げて、かつ緊張しないようにしなくてはいけないな、と思っています。

 長年格闘技を見ていると、何となくプロの動きが頭にはあるじゃないですか。僕の中のキックボクサーはそれこそ、那須川天心と武尊がイメージにあるし、ボクシングは井上尚弥がいるし、総合だとノゲイラとか、そういう選手がいる。そういう状態で自分の試合動画を見ると、自分のフォームや試合運びのヒドさに絶望するんです。でも、逆にそれだけ成長する伸びしろがあるんだと前を向いています。

アラフォー戦士の挑戦は続いている【写真:令和熾烈大合戦】
アラフォー戦士の挑戦は続いている【写真:令和熾烈大合戦】

BreakingDownへの道のり 「タイトルマッチに出れるかもしれない」

 いまの練習は週6でフィジカルの強化、あとはスタミナをつけるのと体脂肪率を減らすために、同じくらいの頻度でランニングをしています。出稽古は行けるときは週3、4ぐらい。出稽古以外ではトイカツさんのジムでグラップリングやMMAの基礎を習っています。

 格闘技を通じて、若い子たちに政治や経済に興味を持ってもらうという目的は変わっていないです。あくまで知ってもらうきっかけ、ツールですね。BreakingDownみたいにチンピラが殴り合っているのとは違って、真面目そうな、しかも、いい年したおっさんがイメージと真逆の格闘技やっているっていうギャップが面白いかなって思っています。

 手応えですか? 正直、いま僕のやっている取り組みを知ってくれてる人たちは、僕のSNSをフォローしてくれている人たちばかりだから、そういう意味ではまだ全然実現できていないと思います。だから、どっかのタイミングでBreakingDownに1回応募してみようかな、とは思っています。ただ、いきなり応募しても選ばれることはないし、仮に出たとしても、ただボコボコにされておしまいじゃないですか。そういう意味では、それまでの準備段階として実戦をやっていくみたいな感じですかね。次戦は年明け1月にMMAの試合が決まっています。いま以上の減量ができそうだったら3月に55キロ級のキックのタイトルマッチに出れるかもしれない。そこまでいけたらいいなと思っていますね。どんなに小さい団体だとしでもタイトルを持っていれば、それなりに説得力あるわけで、そのためには多少の負荷を覚悟してでもチャレンジしていいかなと思います。

 今、日本経済が大きく変わるかもしれないという転換点に来ている実感があるので、政治や経済に興味がない人たち、特に若い世代の人たちにどうやってもっと興味を持ってもらうか、そこが一番僕の注目点だし、注力しているところです。政治にしてもみんな投票に行かない。若者の投票率は低いじゃないですか。でも、僕はあんまり若者を責める気はなくて、そうさせたのは上の世代だろうと思っています。

 とはいえ、民主主義である以上、選挙でしか社会を変えられない。選ぶためには知識がないといけないので、若い人たちに政治や経済、教養を持ってもらいたいし、僕は右とか左とかっていうイデオロギーは嫌いなので、そこは関係なく全方位で発信していきたいなって。いかに10代20代にリーチできるか、そこが僕の課題だし、そこをやるべきなのかなって思っています。

□森永康平(もりなが・こうへい) 1985年2月5日、埼玉県所沢市出身。SBIホールディングス、楽天証券などを経て、2018年6月、金融教育ベンチャーのマネネを創業。23年9月、キックボクシングで格闘技デビュー。3児の父。

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