令和のタッグ屋襲名へ 「テンコジ」「ノーフィア―」「炎武連夢」に憧れたコンビの熱い思い
「令和のタッグ屋ナンバー1」を目指す。土肥羆(どいくま)のリーダー格・土肥こうじが不退転の決意で自主興行(12月4日、東京・新宿FACE)に臨む。
毎週金曜日午後8時更新、柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.171】
「令和のタッグ屋ナンバー1」を目指す。土肥羆(どいくま)のリーダー格・土肥こうじが不退転の決意で自主興行(12月4日、東京・新宿FACE)に臨む。
「テンコジ(天山広吉、小島聡)」、「ノーフィアー」(高山善廣、大森隆男)、「炎武連夢」(大谷晋二郎、田中将斗)、「大日コンビ」(関本大介、岡林裕二)、「GET WILD」(大森隆男、征矢学)……平成のプロレス界を彩った名コンビたち。「あの人たちに憧れた自分を思い出す」と土肥は神妙な表情を浮かべた。
土肥と羆嵐(くまあらし)の「土肥羆」はWRESTLE-1タッグチャンピオンシップを獲得するなどW-1マットで暴れまくり、団体解散後も多くのリングで活躍。巨漢がそろう全日本プロレスのタッグ戦線でもたくさんの爪痕を残している。W-1解散後に乗り込んできた土肥羆を全日本のファンは温かく迎えてくれた。「とても感謝している」とうれしそうな土肥だった。
今年もさまざまなマットに登場したが「いまいち、ギラついてない」と反省する。デビュー12年、33歳と脂が乗っているのに爆発しきれていない。実際、コンディションは最高。気力も充実しきっているのに「不完全燃焼」とモヤモヤを抱え込んでしまった。
完全燃焼の場として自ら用意したのが、12・4新宿大会だ。盟友・羆嵐は持ち前の明るさでもっぱら営業を担当し、土肥は交渉事や手続きなどでフル回転。リング上だけでなく「いろいろと大変だけど、力を合わせればなんとかなる」と、公私に渡って名コンビぶりを発揮している。
注目の対戦チームは小島聡、KAI組。小島はテンコジの一員、KAIはW-1旗揚げ時からのエース、二人にとって手の届かない先輩だった。KAIには二人ともコテンパンにやられており、W-1解散前に団体を離れたKAIへの複雑な思いを隠しきれない。
そして4人はアニマル浜口ジム出身。運命の糸がつながっての激突なのだ。
「土肥羆のすべてをお見せする」と土肥。タッグ屋としての自負と自信がある。同じルーツを持つとはいえ、即席コンビには負けるわけにはいかない。
今回の自主興行はあくまでスタート。後藤洋央紀、YOSHI-HASHIの「毘沙門」、ジュンとレイの「斉藤兄弟」、野村卓矢、阿部史典の「アストロノーツ」など、令和マットの名コンビとのタッグ決戦を実現させていくという目標がある。ハードルがあることは承知している。だが、土肥羆の底力を発揮し、認めさせていくしかない。
土肥は週に3回、PPPのコーチも務めている。「男子も女子も教えている。自分の勉強にもなる」と、その時間も大切にしている。
人材派遣業や運送業を手掛ける「DoIt」の代表でもある。土俵の違う人たちとの交流から、思わぬアイデアが浮かぶこともあるという。
12・4決戦には「デカい、強さ、うまい、速い、華やか……プロレスの魅力をすべて楽しめるカードを並べた。お祭りにしたい」と、日ごろの思いがこめられている。
羆嵐は「ファンの皆さん。レスラーのみんな。会場にいらした方。全員に幸せになってほしい」と豪快に笑う。土肥羆の掛け合いは天下一品。公私に渡って息はピッタリだ。
安定した強さ、コンディションの良さ、タッチワーク、二人には名タッグの要素が詰まっている。
土肥は「土肥羆のチームだけでなく、2人のそれぞれのシングル戦、土肥と羆嵐の対決も実現させたい」と自主興行のシリーズ化も見据えている。
思えば昭和には「ヤマハ・ブラザーズ」(星野勘太郎、山本小鉄)、「極道コンビ」(グレート小鹿、大熊元司)など、まさにタッグ屋が存在していた。
昭和、平成を経て令和の時代に「令和のタッグ屋ナンバー1」を目指す土肥羆の進撃に期待が膨らむ。