【週末は女子プロレス♯128】スターダムで開始が2時間半遅れるアクシデント、「本当に腹立たしい」オーナーが謝罪…現場で起きていたこととは

スターダム11・5牛久大会で試合開始時間が大幅に遅れるアクシデントが発生した。当初は午後1時開始予定も、午後3時半スタートに変更。しかも、その告知がホームページや一部マスコミを通じておこなわれたのが前日午後だ。そうなれば、変更を知らずに会場にやってくるファンもいる。変更によって観戦を断念したファンもいるかもしれない。ファンのみならず、スケジュールの都合で欠場せざるを得なかった選手までいるのだ。しかも、遅れの具体的な理由が明らかにされなかったことも混乱に拍車をかけた。そして、親会社のブシロードファイトから原田克彦社長、ブシロードの木谷高明会長が会場に駆けつけ謝罪する事態に。では、変更決定から当日にかけて、現場ではなにが起こっていたのだろうか?

会場にかけつけたブシロードの木谷高明会長【写真提供:スターダム】
会場にかけつけたブシロードの木谷高明会長【写真提供:スターダム】

11・5牛久大会で午後1時開始予定も午後3時半スタートに

 スターダム11・5牛久大会で試合開始時間が大幅に遅れるアクシデントが発生した。当初は午後1時開始予定も、午後3時半スタートに変更。しかも、その告知がホームページや一部マスコミを通じておこなわれたのが前日午後だ。そうなれば、変更を知らずに会場にやってくるファンもいる。変更によって観戦を断念したファンもいるかもしれない。ファンのみならず、スケジュールの都合で欠場せざるを得なかった選手までいるのだ。しかも、遅れの具体的な理由が明らかにされなかったことも混乱に拍車をかけた。そして、親会社のブシロードファイトから原田克彦社長、ブシロードの木谷高明会長が会場に駆けつけ謝罪する事態に。では、変更決定から当日にかけて、現場ではなにが起こっていたのだろうか?

 まず、牛久大会の時間変更が会場担当責任者から現場スタッフに知らされたのが、前日の高崎大会だった。午後1時開始で予約したつもりが、体育館の使用時間が同時刻からと発覚。当日は日曜日とあってさまざまなイベントが開催されており、プロレス会場の体育館でも午前中には別の催し物がおこなわれていた。アリーナに入ることさえ不可能だったのだ。1時からならば、当然その時間に試合は始められない。アリーナにシートを敷きリングを設営、イスを並べる作業を完了してからでないとイベントをおこなえず、最速で始められるのが午後3時半という判断になったのである。

 大幅な変更を知らされるも、スタッフは当初の予定通り午前10時には会場に到着、対応にあたった。案の定、知らずにやってきたファンもかなりいたそうで、窓口で一人ひとりに状況を説明。キャンセルには返金措置を取ることも説明した。話を聞いてみると、「変更は知っているけど早く来た」「変更は知らなかったけど、開始まで待ってるよ」など、さまざまな反応があったという。その場でのクレームやキャンセルを申し出たファンはいなかったとのこと。

 とはいえ、前売り段階で売れていながら来場しなかったファンもいるため、その数がキャンセルの人数ではないかと思われる。会場入口では木谷オーナーと原田社長が頭を下げてファンを場内に迎え入れた。原田社長は前日の高崎大会から視察に訪れており、木谷オーナーは事態を重くみて当初の予定をキャンセル、急きょ茨城県牛久市の会場にやってきたようだ。

ファンに向けて謝罪した木谷高明会長(左)と原田克彦社長【写真提供:スターダム】
ファンに向けて謝罪した木谷高明会長(左)と原田克彦社長【写真提供:スターダム】

 そして第3試合終了後、両者がリングサイドから今回の件に関して謝罪した。

 原田社長「ブシロードの原田でございます。本日は大幅に開場時間、そして試合開始時間が遅れまして大変申し訳ございませんでした。原因としましては、会場側との確認ミス、我々の方の確認ミスという事態でございます。お客様には、そしてスターダムを応援してくださっているファンのみなさまには、本当に大変ご迷惑をおかけしました。以後このようなことがないように、チェック機能を働かせたような組織づくりをしていきたいと思っておりますので、みなさん、どうぞご了承していただければと思います。よろしくお願いいたします」

 木谷高明オーナー「本当に今日ご来場のみなさま、2時間半遅れまして誠に申し訳ないです。2時間半というと、ここにいるみなさまの時間を全部足すと800時間以上になります。それだけの時間が無駄ではないかもしれませんがロスしてしまった。このこと我々本当に重く受け止めなければなりません。ブシロードグループはプロレスのみならずカードゲームの大会、ライブ、舞台、日本のみならず海外でも合計すると500を超える、もしかしたら1000近くやってるのではないかなという、大中小のイベントをやってます。そのなかで2時間半も遅れたことは1回もありません。機材トラブルとか、その他の都合で30分、1時間は2、3年にいっぺんくらいはあるかもしれませんが、基本はありません。

 ボクは開始時間が遅れるのが一番嫌いなんです! なぜかっていうと、イベントが開始する前の高揚感、さあ始まるぞという高揚感が5分10分遅れてしまうだけでも拍子抜けてしまうんですよ。イベントは、イベント開始からがイベントではないです。ここに来るまで、ここに会場に来るまでもイベントであったり、この中で仮に2時間3時間イベントがあったとしても、そのあと家に帰るまでがイベントなんです。その高揚した、楽しかった、明日からまたがんばるぞ、選手の活躍に負けないようにオレもがんばるぞという、その高揚感がなくなってしまうんです!

 ずさんな運営で。今日は象徴的でありますんで、いままでグループ会社の社長にはなるたけ口を出さないようにというふうに思っております。もちろん、ちゃんとやってるグループ会社も、ほとんどがそうです。ただ、確かにプロレスというのは、確かに運営が非常に難しい部分はございます。ここにいらっしゃるみなさまにも言えないような難しい部分も実はあったりもします。だから世界で見てもそれほど大きな企業はないし、日本でそれほど大きな企業になってない。難しいことは確かに難しいんですよ。でも、難しいからと言ってそれに甘えてたら、いつまでたってもこのレベルでしかないんですよ。本当に腹立たしいです。心の中で涙を流してます。本当に恥ずかしい。

 本来的にはリング上からごあいさつしなきゃいけないのを恥ずかしくて、みなさまに恥ずかしくて、また命を削ってがんばってくれてる選手のみなさんにも恥ずかしくて、とてもボクはリングの上には上がれません! 2度とこのようなことがないよう誓いますから、みなさん見捨てないで応援してください、よろしくお願いいたします! お願いします! お願いします! 必ずスターダムを世界一の団体にします! よろしくお願いいたします! すいません。ちょっと湿っぽくなりましたが、このあとみなさん、楽しんでってください。ぜひ日ごろの仕事の疲れとかを癒したり、明日からのまた活力を持って帰宅していただきたいと思います。なにとぞよろしくお願いいたします。以上、あいさつさせていただきました。ありがとうございました」

 従来のプロレス団体ならば、このようにトップみずからが謝罪することはなかったのではなかろうか。それこそ原因がうやむやのまま何事もなかったかのようにイベントが終わったかもしれない。が、スターダムはブシロード傘下となり、さまざまな面で変革を遂げている。ファンは選手を見に来たのだから会長に出てこられても……という考えもあるかもしれないが、精一杯の誠意は見せたと思う。そして、通じたと思う。

スターダム11・5牛久大会、会場の様子【写真提供:スターダム】
スターダム11・5牛久大会、会場の様子【写真提供:スターダム】

会場担当責任者のケアレスミスが原因

 事実、スターダムでは開始時間が遅れたことはほとんどなく、驚くほどのオンタイムでイベントがスタートする。開場前にはスタッフが「お客様をお待たせしないように!」とリングでウォームアップする選手に控室へ戻るよう促している。某団体では30分遅れも当たり前、そんな過去のマット界がいまでは信じられないくらいだ。もはや「プロレスだから」が許される時代ではないのである。

 実は今年6月3日にも、宇都宮大会で開始時間変更のハプニングがあった。これは台風や事故の影響による高速道路の渋滞によるもの。そのときは観客側に大きな混乱はなく1時間遅れでスタートできた。しかし今回は2時間半という実質半日遅れ。しかも会場担当責任者のケアレスミスが原因だった。ミスは誰にでもある。むしろ誰にとっても教訓になりえるだろう。大切かつ必要なのは、いかに迅速かつ誠実に対応できるかなのだ。

 また、見えない部分では、スタッフがお詫びとしてポスターを来場者に配ろうと考えた。が、徹夜でかき集めるも最終的に百数十枚で、不公平感が出るからと断念。今後はこういった不測の事態に備え、あらかじめ何か用意しておいた方がいいのかもしれない。また、コロナ禍の余波もあり難しいかもしれないが、(選手の責任ではないにせよ)一部選手が観戦後のファンを見送るなどの措置があってもよかったのではなかろうか。あってはならない事態ではあるけれど、団体側の誠意が伝わり、かえって貴重な体験になったと喜んで帰ってもらえれば、今後も続けて応援してもらえるはずである。

「スターダムを世界一の団体にします」と木谷オーナーは言う。だからこそ、一級のエンターテインメントとして信頼される団体になってもらうためにも、この場を借りて提言もさせていただきたい。

 たとえば、第0試合があるビッグマッチの開始時間についてだ。第0試合とは本イベント開始前におこなわれる試合のことで、チケット発券時に発表されていなければ、第0試合ありの明記はされていない。「第0試合があるから早めに行こう」と考えるのは、おそらくプロレス観戦上級者。一般の人にとって第0試合が何を意味するかはわからないだろう。典型的な例としては、フワちゃんのプロレスデビュー戦が挙げられる。人気タレントのプロレスとあって話題を呼び、初観戦やプロレスを知らない人たちも数多く会場に足を運んだ。しかし、フワちゃんの登場は第0試合。「会場に入ったら終わっていた」……という人もいたかもしれない。

 それだけではない。スターダムの第0試合にはビッグマッチの主要カードに漏れたメイン級の選手も当たり前のように出場する。「時間通り着いたのに推しの選手が見られず」……ではシャレにならないではないか。たとえホームページで告知されたとしても全員がチェックしているとは限らない。開始時間前に始まる第0試合の可能性がある旨をチケットにも添えるべきだろう。

 また、出場選手に関しても同様のことが言える。ブシロード傘下で所属選手が激増したスターダム。いまでは所属全員が出場するとは限らなくなっている。チケットではスペースの問題で無理としても、ホームページやSNSで大会ごとに出場選手、あるいは欠場が判明している選手のリストを(「変更の可能性あり」とともに)明記しておくべきではなかろうか。

 持論ながら、プロレス団体には3年から4年で何らかの不具合が生じ、ときにはそれが表面化する傾向がある。これまで突っ走ってきたぶん、そういった問題が一気に噴出するのかもしれない。2011年旗揚げのスターダムは15年に存亡の危機に瀕しており、ブシロード傘下になって4年、生まれ変わった新団体と考えればちょうどその時期にあたるとしてもおかしくはない。このところケガ人続出で、一度に複数のテーマを課した過酷なスケジュールが問題視されている。現場と上層部の意識のズレか、今回の一件も、これらの問題と陸続きなのかもしれない。

 改善点が露呈したのは、さらなる飛躍のための通過点。ここを乗り越えたスターダムを、ぜひとも見せてほしいと思う。

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