STU48卒業→女優の道へ “絶対的エース”瀧野由美子がアイドルとして愛されたワケ

瀬戸内7県を拠点とするアイドルグループ・STU48の絶対的エースとしてグループを牽引してきた1期生の瀧野由美子は、10枚目シングル『君は何を後悔するのか?』を最後に約6年半のアイドル活動にピリオドを打ち、夢だった女優を目指す。多くのファンから愛された彼女は、群雄割拠のアイドル界で何を大切にしてきたのか。

瀧野由美子はSTU48を卒業して新たな道に進む【写真:冨田味我】
瀧野由美子はSTU48を卒業して新たな道に進む【写真:冨田味我】

常に同じ立場でメンバーに寄り添い、「ついていきたい」存在であり続けた

 瀬戸内7県を拠点とするアイドルグループ・STU48の絶対的エースとしてグループを牽引してきた1期生の瀧野由美子は、10枚目シングル『君は何を後悔するのか?』を最後に約6年半のアイドル活動にピリオドを打ち、夢だった女優を目指す。多くのファンから愛された彼女は、群雄割拠のアイドル界で何を大切にしてきたのか。(取材・文=小田智史)

 瀧野はSTU48初のオリジナル曲『瀬戸内の声』、デビューシングル『暗闇』から全表題曲で選抜入り。シングル計8作でセンターを務め、STU48の歴史を支え続けたグループの“顔”だ。同じ1期生で現キャプテンの今村美月や副キャプテンの福田朱里、センター経験を持つ石田千穂ら中心メンバーはほかにもいるが、センターの重責や「STU48と言えば瀧野由美子」というイメージのプレッシャーは、経験した者しか分からない世界。壁にぶつかり、ときに気落ちしてしまうこともありながら、固い絆で結ばれたメンバーやファンに支えられ、先頭に立ち続けてきた。

 活躍の場はSTU48だけにとどまらず、2017年にはAKB48の50枚目シングル『11月のアンクレット』で初めてAKB48選抜メンバーに名を連ね、『第68回NHK紅白歌合戦』にAKB48として出演した。瀬戸内と関東の行き来が続く多忙な日々のなかで、STU48をもっと多くの人に知ってもらいたいという強い想いが彼女の原動力となった。20年6月からはオンライン予備校で大学受験に挑戦し、22年春には晴れて志望校合格を果たした。

 瀧野に「無数のアイドルがいるなかで日頃から意識してきたこと」を問うと、「私はあまり器用なほうじゃないので、何事も全力で頑張ろうと心がけてきました」と答え、「アイドルとしては……、どうなんだろう」と考えを巡らせた。

 キャプテンの今村によれば、瀧野はいい意味で変わらず、常に同じ立場でメンバーたちに寄り添ってきたという。誰しも活躍して上に行けば、少しは人間性にも変化が出てきてしまうもの。しかし、瀧野にはそれが一切なかった。

「ゆみりん(瀧野)は1人でAKB48さんのシングル選抜に入ったり、外のお仕事が人一倍多くて、STU48の活動と並行してやっていくのは大変な時期もあったと思います。でも、ゆみりんはずっと変わらなかった。どんなに忙しくなっても同じ立場で、今までどおりのゆみりんでいてくれているから、私たちもついていきたいと思えたし、安心できました」

絶対的エースとして同期や後輩たちから全幅の信頼を寄せられた【写真:(C)STU48】
絶対的エースとして同期や後輩たちから全幅の信頼を寄せられた【写真:(C)STU48】

夢だったアイドル人生は「何も後悔はない」

 瀧野の魅力の一つが、ふとした言葉で心を打つ力だろう。コンサートや公演、イベントで締めのMCを任されることも多く、ひとたびグループを代表して想いを伝えるとなれば、普段のおっとりした雰囲気はセンターとしてのそれに変わった。

 例えば、2019年10月に行われた2期生最終オーディションでライブ最終曲に『夢力』を披露する際、「私たちはみなさんに夢を与えるものだと思っていますが、いつもみなさんからたくさんの夢をもらっています。私たちには夢が叶った子もいれば、まだ夢を追いかけている子もいたり、そして今から夢を追いかけて2期生が入ってきます。その私たちにこれからも夢と力をください」と、曲名になぞらえてファンにメッセージを投げかけた。

 仲のいい同じ1期生の甲斐心愛は、「由美子から発せられる言葉だからこそ響くものがあって、聞いていて思わず泣いてしまったこともありました。純粋な言葉の意味だけではなくて、由美子が言うからこそ、違う感情が湧いてくるんです」と瀧野の“言霊”の力を証言する。もっとも、瀧野にとってはあくまで自然体で、考えて作ったものではないという。

「私はあまり台本どおりに進めたくなくて(笑)。『曲振り』とか台本には大まかに書いてあるんですけど、長い文章を覚えるのは苦手だし、自分の言葉で言いたいなと思ったときに、たぶんそのときの感情で出てくる言葉なのかなって。同じ曲について話す言葉でも、そのときの自分の気持ちで結構言っていることが違うと思います。その瞬間の感情で話している分、何を言ったかと聞かれると分からないですけどね(苦笑)」

 瀧野のアイドルとしての生きざまを近くで見てきた甲斐は、なぜ瀧野がアイドルとして愛されたのか、自身の考えを口にする。

「STU48は1期生がゼロから積み重ねてきたことが、そのままグループの歩みになってきました。その最初のセンターを務めてくれて、そこからずっと引っ張ってきてくれたので、私たち以上に背負ってきたものが由美子にはあると思います。『自分がやること全部がSU48のイメージになる』とか、たくさんの責任や重みを感じながら活動するなかで、由美子自身の人柄と魅力で、メンバーにも、グループにも、ファンの方にも愛された。本当にいろんな人に愛されたアイドルだと思います」

STU48卒業後は女優の道へ【写真:(C)STU48】
STU48卒業後は女優の道へ【写真:(C)STU48】

 瀧野は卒業シングルの『君は何を後悔するのか?』にかけて、「私は自分のアイドル人生において、大きな後悔は一つもありません。それは良かったことだと思います」と胸を張った。11月3日に広島グリーンアリーナで行われた卒業コンサートでも、「ここで見た景色を一生忘れません! 私のアイドル人生、何も後悔はないです!!」と語っている。

 アイドルに憧れながらも、その夢は「来世で」と夢のままだったなか、ギリギリまで悩んだ末に、締め切り最終日に「最初で最後」と心に決めて受けたSTU48のオーディション。その決断が瀧野の人生を変えた。「『オーディションを受けて良かったよ』と言ってあげたいし、一歩踏み出した自分に拍手を送りたい」。STU48としての活動は11月30日まで。そして今、瀧野は自分の人生に後悔を残さないように、女優という次なる目標に向かって歩み始める。

□瀧野由美子(たきの・ゆみこ)1997年9月24日、山口県出身。STU48 1期生。グループ愛にあふれた絶対的エース。鉄道ファンとして知られ、“自身のアイドル”は新幹線と電車。

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