野球漫画なのに主人公は中継ぎやクローザー “陰の立役者”にスポットあてた人気作
野球漫画の主人公と言えば、花形である先発投手や4番打者が多い。しかし、中には試合の大事な局面でしか登場しない選手や監督にフォーカスした作品もある。普段はあまり目立たない、陰の功労者が輝く野球漫画3選を紹介しよう。
先発投手や4番バッターでなくても主人公になれる
野球漫画の主人公と言えば、花形である先発投手や4番打者が多い。しかし、中には試合の大事な局面でしか登場しない選手や監督にフォーカスした作品もある。普段はあまり目立たない、陰の功労者が輝く野球漫画3選を紹介しよう。
1作目は『ストッパー毒島』(作:ハロルド作石)だ。1996年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて連載されていた作品で、ストッパーとして活躍する毒島大広が主人公である。ストッパーとはゲームの終盤や最終回に登板し試合を締める投手のことであり、抑えやクローザーとも呼ばれる。
プロ野球選手を目指す毒島は乱闘事件をきっかけに高校を退学になったが、奇跡的にドラフト会議で指名される。コントロールが悪く変化球も投げられないが、160キロの剛速球を武器にストッパーを任されることに。
そんな毒島を成長させるのは、所属する球団のマスコットキャラ「チックくん」だ。毒島は制球難が問題視されていたが、チックくんの指導によりコントロールが安定していく。そして193センチの高身長という体格を活用して、球界を代表するストッパーへと躍進する。
試合での出場時間が短い毒島だが、金髪で破天荒な性格のため存在感は大きい。抑え投手を主役にした本作に、ネット上では「先発よりも目立たないけど、唯一無二の存在感が好き」「抑え投手が主役なのが新鮮で、野球の練習もかなりリアルで面白い」など読者からの高評価コメントが目立っていた。
2作目は『週刊モーニング』(講談社)で連載されていた『グラゼニ』(原作:森高夕次、作画:アダチケイジ)で、先発から抑えにつなげる役割の投手である中継ぎ投手・凡田夏之介が主役の作品だ。試合の中間に登場して、展開を左右する場面で投げる中継ぎは陰の功労者ともいえるだろう。
また、本作は野球選手の年俸にも大きく触れている。凡田は各選手の年俸を把握しており、対戦する打者の年俸によって勝敗が大きく変わることもある。
右投げのオーバースローが多いなか、凡田は左投げのサイドスローというのも珍しい要素だ。注目されにくい中継ぎ投手を主役に描いた本作には「試合の途中で出てきて、要所を抑える凡田がかっこいい」「切り口が斬新で、プロ野球選手の裏側を知れて面白い」などのコメントが寄せられ、一味違う野球漫画として本作を楽しむ読者が多いようだ。
なお、本作は現在『グラゼニ~大リーグ編~』を連載中で、今後の展開にも注目したい。
3作目は、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載されていた『ラストイニング』(原作:神尾龍、作画:中原裕)だ。本作の主人公・鳩ヶ谷圭輔は高校時代に甲子園出場を夢見たが、地方大会のベスト8で敗退。高校卒業後にさえない生活をしていたが、母校である彩珠学院高校の校長・狭山滋明から野球部の監督就任を依頼される。
同校の野球部は学校の経営状態を理由に廃部が検討されており、来年の夏までに甲子園出場が存続の条件となっていた。自分の思い出が詰まった野球部の未来を託された鳩ヶ谷は、熱血や根性論ではなく戦術に重きを置いて指導していく。本作は主人公が監督であるために、監督目線から描かれる練習方法や戦い方の論理的な説明などを楽しめる珍しい作品だ。
読者からは「監督目線という変わり種だけど、読みやすくて面白い」「定番の熱血根性漫画ではなくて心理的描写が多く読みごたえアリ」などのレビューが寄せられている。
普段はあまり目立たないポジションを主人公にした野球漫画たち。彼らが中心の作品は、王道漫画にはない面白さで読者を楽しませている。