港区タワマン購入で「後悔しきり」 雨の日の内見で気付かず…縦長リビングの“盲点”
タワーマンションを購入する際、多くの人が重視するポイントは「耐震構造」「エレベーター」「管理体制」「売却時の条件」など。一方で、予算や立地を重視するあまり、生活する上で重要視されるべき「間取り」はおろそかにされがちだ。この「間取り」について深く考えなかったがために後悔しているマダムがいるという。
キャンセル住戸で購入も…これが裏目に
タワーマンションを購入する際、多くの人が重視するポイントは「耐震構造」「エレベーター」「管理体制」「売却時の条件」など。一方で、予算や立地を重視するあまり、生活する上で重要視されるべき「間取り」はおろそかにされがちだ。この「間取り」について深く考えなかったがために後悔しているマダムがいるという。
「内見した日は、あいにくの雨だったんです」
悔しさをにじませながらそう語るのは、港区某所のタワマンに住む佐倉聖子さん(仮名・33歳)。8年ほど前に、会社の上司だった6歳年上の夫と結婚。ある程度資金のメドがついたところで、タワマンを新築で購入したという。
周辺の子育て環境が整っているため、完成する前から大人気だったという現在のマンション。夫の会社へのアクセスも便利だったことから、最初の段階でエントリーはしたものの、抽選に漏れて購入できず。しかし、その後も施工会社に何度も連絡を取り続けた結果、ギリギリのところでキャンセル住戸を購入することができた。
「夫は購入することをすでに決めていたようですが、せめて中を一目見たいと訴え、内見がかないました。あらかじめ間取り等は図面で見ていましたが、やはり、高いお金を出して買うものだからこそ、自分の目で見て確かめたかったんです。私が最も気になっていたのは『縦長リビング』だったこと。以前、やはりマンションを購入した方から『縦長リビングだと、キッチンまで採光が届かない』と言われたことがあったんですよ……」
聖子さん夫婦が内見に行った日は、朝からあいにくの雨。窓の外にはどんよりとした雲が垂れこめ、室内がかなり暗く感じられたが、営業の人間から「南向きの部屋なので、窓からの採光は素晴らしいですよ」「最高の眺望をお約束しますよ!」と言われると、すでにその気になっていた夫にも押し切られ、その日のうちに契約。すぐに数千万円の頭金も支払ったという。
「夫の仕事の都合で、購入から2か月ほどたってから入居したのですが……私の懸念通り、曇りの日、雨の日になると、まったくと言っていいほど光がダイニングやキッチンに届かず、常に照明をつけていないと不便で仕方ないんです。晴れた日は確かに日差しが降り注ぎます。でも逆に光が強すぎて、リビングではまぶしくて目を開けていられない状態です。遮光のためにカーテンを閉めてしまうとさらに部屋の中が薄暗くなってしまうため、本末転倒でした。
結局、昼間からあちこちの照明をつけたままにして生活しているのですが、昨今の電気代の値上がりもあってか、夫から『少しは節電してよ』なんて嫌味を言われてしまう始末です。夫は台所に立つことがほとんどないから気付かないのだと思うのですが……こんなことなら、キャンセル住戸に飛びつくことなく、別のタワマンの横長タイプのリビングの部屋にすれば良かったと後悔しきりです」
資産運用での購入じゃないならば、間取りも重視するべきポイント
バルコニー(ベランダ)にリビングの長辺が接している「横長リビング」は、リビングそのものの奥行きが短くなるため、採光性が高く開放感があることが特徴。逆に、リビングの短辺がベランダに接している「縦長リビング」は、代わりにベランダに面する居室が用意されていることが多く、育児に向くといわれている。しかし、縦長の場合はリビングの奥にあるダイニングやキッチンまで光が届きにくく、「実は人気がない」のだと不動産のプロである中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんは明かす。
「横長と縦長、どちらが人気かと言われれば間違いなく前者になります。横長は開放的でキッチンまで明るいことが多く、家事に育児にとリビングやキッチンで1日を過ごす女性にとってうれしい間取りなのだと思います。縦長の場合、ベランダ側の居室に行くためにリビングを廊下代わりにする必要があり、導線が悪くなることがあるのも人気がない要因でしょう。
ただ、絶対に縦長が悪いかというと、そんなことはありません。まず、避ける人が多いということは、その分、安価で手に入れることができる可能性があります。また、間接照明などを上手に使えば、そこまで暗さを感じることなく過ごせるはず。LED電球など省エネタイプの照明を用いれば、そこまで電気代がかさむことはないのではないでしょうか」
横長リビングのほうが人気があるとはいえ、縦長リビングにも良さはあるというのだ。購入者が住居に何を求めるかで、選ぶべき間取りは変わってくると姉帯さんは語る。
「憶測にはなりますが、聖子さん自身が、あまりその物件を気に入ってなかったことが問題なのでは、と思います。でも、すでに購入してしまっているのは動かしがたい現実。ご主人が何を言おうとも照明をバンバンつけて、自分が納得できる明るさの中で暮らし、ストレスを解消する感じでいいと思います。
タワーマンションに限らず、不動産物件は決して安くはない買い物です。立地や耐震条件も大切ですが、家族と暮らす部屋であれば、間取りも大切な要素。すべてに納得がいく部屋を見つけるのは至難の業かもしれませんが、家族それぞれが落としどころを見つけられる部屋を購入することをおすすめします」
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。