テレ朝がジャニーズ問題検証 『Mステ』言及なく「交渉は会社事で気を使う」「紳士的な事務所」の声も

テレビ朝日系は12日、特別番組『テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証』(午前10~11時)を放送した。局員、局員OBの計103人からの証言を基に旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)との関係性を検証し、同事務所の故ジャニーズ喜多川元社長をめぐる性加害問題を今春まで取り上げなかった理由などを示した。黒のスーツを着た大下容子アナウンサーと小木逸平アナウンサーが番組を進行した。

テレビ朝日【写真:ENCOUNT編集部】
テレビ朝日【写真:ENCOUNT編集部】

特別番組『テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証』を放送

 テレビ朝日系は12日、特別番組『テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証』(午前10~11時)を放送した。局員、局員OBの計103人からの証言を基に旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)との関係性を検証し、同事務所の故ジャニーズ喜多川元社長をめぐる性加害問題を今春まで取り上げなかった理由などを示した。黒のスーツを着た大下容子アナウンサーと小木逸平アナウンサーが番組を進行した。

 冒頭、ジャニーズ問題の経緯を振り返り、10月末に同事務所設置の「外部専門家による再発防止特別チーム」が指摘した「マスメディアの沈黙」について、テレビ朝日が実施した世論調査の結果を発表。「テレビ局に事務所への忖度があったか」の問いに対して、該当の「思う」65%、「やや思う」19%だったと示した。

 その後、元ジャニーズJr.で俳優の橋田康、ジャニーズJ性加害当事者の会・平本淳也代表の証言を紹介。平本氏は「テレビ朝日さんはジャニーズ事務所のタレントを多く扱っていた。他局よりも多く忖度があったと思う」と指摘した。

 続けて、今春までテレビ朝日が同問題を報じてこなかった理由について、局員、OBの証言を基に検証した。まず、週刊文春による「ジャニー喜多川氏セクハラキャンペーン報道」の訴訟で、2004年2月、最高裁がジャニー氏の性加害については「真実性を認める」とした東京高裁の判決を維持。この事実をテレビ朝日を含めてテレビ局が報じなかったことを伝え、内藤正彦報道局長が登場。元社会部、ニュース番組デスクの証言などを登場した。

「芸能ネタだと判断して、スルーしていたと思う」「ワイドショーが扱うネタだと思っていた」「性的な話は避けていたと思う」などで、内藤報道局長は「男性の性加害、被害に対する無知、無関心、そして、人権意識の低さがあったことは否定できません」など話した。

 さらに、ジャニーズ事務所に関する問題を扱うことに、報道局員らも慎重になっていた声を紹介した。

「ジャニーズ事務所に力があるときに社会部の一記者が牙をむいて伝えなきゃという雰囲気はなかった。サラリーマン記者がそういう記事を書く勇気というのはうちに限らず民放にはなかったと思う」

「テレビ朝日の番組にジャニーズ事務所のタレントが多く出演していることも踏まえ、配慮が必要だったという意識があったのは事実」

「ジャニーズ事務所をはじめとする大手芸能プロダクションに所属するタレントについて、マイナスの取り上げ方をする場合は事前に編成への報告が求められる」

「ジャニーズ事務所の所属タレントの事件・事故を扱う際は、編成担当がニュースフロアや当該部署まで来て『どのようにどこまで扱うつもりなのか』を逐一確認する姿を見てきた」

 そして、4月12日に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトが記者会見した当日も報道しなかったことを内藤局長は「ジャニーズ事務所の反応を待つという状況になっていました。これをすぐに報じ切れなかった理由は、この重大な性被害に関して実態解明の取材と確認作業を積み上げてこれていなかったこともありますが、編成局とのやり取りを通して『扱いにくい案件だ』という空気が積極的な確認作業を妨げていたことは、忸怩(じくじ)たる思いです」とコメント。その上で「裁判結果をテレビが報じていれば、被害者が減らせたのではないかとの指摘は、当時、報じることができた立場として極めて重く受け止め、深く反省しています」などと反省の弁を述べた。

 続いて、奥川晃弘コンテンツ編成局長が登場し、編成、制作現場の声を紹介。「旧ジャニーズ事務所に忖度することはあったか」について、認否両方の声が上がっていたことを明かした。

「忖度したつもりは全くない。事務所から『だれだれを使ってください』と言われたことはない」「気持ちよく仕事をしてもらうように他の大口事務所と同じ」「視聴率のためにキャスティングしていた。圧力は感じたことはない」「忖度というより、むしろ貸してほしいというお願いだった」「お願いして出演してもらっていた。紳士的な事務所だった」

「忖度したことはある。他の事務所の男性グループはジャニーズが気にするだろうなと忖度した」「ジャニーズの圧というより、テレビ朝日内で忖度していたという理解」「特にジャニーズ事務所は人気者が多いので、会社事として上層部や編成幹部が動くので、『扱いづらい事務所』『機嫌損ねると社内でも怒られるのでは』と現場の若手は考えてしまったのかもしれない。ある種、配慮はあったことは事実」

 その上で、奥川局長は「ジャニーズタレントのキャスティングに関して、7名が『忖度はあった』と回答しました」とし、「テレビ朝日は後発局ということもあり、キャスティングを強化したいという背景の中、旧ジャニーズ事務所のキャスティングは社の戦略として、上層部や編成幹部が動くことが多くなりました。評価は分かれると思いますが、テレビ朝日の社内においては、旧ジャニーズ事務所が神経を使う事務所である。そういう雰囲気が醸成されていたということです。それが一部の局員が『忖度があった』と言う理由の1つだと思います」などの見解を示した。

 その後、西新常務取締役(コンテンツ編成局担当)が登場し、社内で旧ジャニーズ事務所に気を使う空気が出てきた理由について「旧ジャニーズ事務所が近年、非常に大きくなり、会社マターとして編成や制作の幹部が直接交渉に動くことが多く、忖度という空気が徐々に醸成されたものだと思われます」と説明。続けて「我々のエンターテインメントの空気が報道局にも影響を与えていたとするならば、それは猛省すべきことだと考えております」などとコメントした。

 また、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)でアイドルグループ・忍者の元メンバーだった志賀泰伸さんが、ジャニー氏からテレビ朝日内で性被害に遭ったことを一部メディアに告白したことについては、「当社の施設内でジャニー喜多川氏による性加害があったかどうか、当時の音楽番組担当スタッフにヒアリングしましたが、全く認識がないということでした。当該施設でそのような性加害があったとすれば、大変遺憾です。当時の関わったプロデューサーをはじめ関係スタッフの多くは亡くなっております。このため、事実の確認は困難でした」などとコメントした。

 最後に篠塚浩社長が登場。「私たちは公共的なメディアであることをうたい、世のため、人のためを信条にしてまいりましたが、今回の事案ではそこにゆがみが生じていたように思います。テレビ局は私企業であり、視聴率は重要ですし、売り上げ、利益が最も大事な指標であることは間違いありません。ただ、その基盤には私たちの持つ公共的な役割があり、視聴者の皆さまの信頼があるというまさに当たり前のことを経営から番組スタッフまでもう1度、徹底して認識してまいります」などと宣言し、頭を下げて番組は終了した。

 テレビ各局では、NHK『クローズアップ現代』を皮切りに旧ジャニーズ事務所との関係性を検証する番組を放送。民放では日本テレビ、TBS系『報道特集』、フジテレビが社内調査し、「忖度があった」とする社員の証言などを伝えている。最近ではテレビ東京が10月26日午後5時5分から、検証番組『ジャニー喜多川氏の性加害問題~検証報告と今後の対応について~』を放送していた。大トリでの放送となったテレビ朝日は、長期に渡って多くの所属タレントを起用。音楽番組『ミュージックステーション』については、同事務所の所属タレントと競合するグループの出演が少ないことが指摘されていたが、同番組に特定した担当者の証言、局としての見解はなかった。

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