「自分から『格闘技をやってます』と口にしたことは一度もない」堀口恭司の考える「プロ格闘家」と「草格闘家」の違い
日本人史上初のBellator世界王者・堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が大みそかの格闘技イベント「RIZIN.45」に参戦することが決まった。また大みそかの前には初の著書『EASY FIGHT』(12月7日・幻冬舎)が発売されることもアナウンスされた。ENCOUNTでは、“史上最強のMade in JAPAN”こと堀口の自伝的書籍に関する内容の一部を、随時掲載していく。
堀口宛に届く「絶対強くなります」とのDM
日本人史上初のBellator世界王者・堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が大みそかの格闘技イベント「RIZIN.45」に参戦することが決まった。また大みそかの前には初の著書『EASY FIGHT』(12月7日・幻冬舎)が発売されることもアナウンスされた。ENCOUNTでは、“史上最強のMade in JAPAN”こと堀口の自伝的書籍に関する内容の一部を、随時掲載していく。
第3回は堀口の持つ直弟子への考え方と、「格闘家」についての見解を公開する。この見解は、何かと物議を醸す「Breaking Down」に対し、「あれが許されてしまうと、余計に勘違い野郎が増えてしまう」と発言した話とリンクしていく。
「最終的にどうなるのかはまだわからないけど、自分は直弟子は取らないかもしれない」
堀口は著書のなかでそう述べている。「理由は、もし自分が人生を賭けていろんなことを教え込んだとしても、その弟子がいつ辞めていくのかがわからないから。実際、(堀口の師匠である)山本“KID”徳郁さんの弟子になった人たちで、まったく通用せずに辞めていく人たちをたくさん見てきた」。
事実、堀口にはSNSを通じてDMが届くと、そこには「僕は絶対に強くなります」と書かれているが、堀口はそれを見ながら「口だけでなら誰でも言える」と思っているそうだ。
「自分の目で見て、こいつはイケると思ったような子でさえ、結局はすぐに辞めていくパターンが多い。だからこそ、そこはシビアに行こうと思っている。自分だって、育てた選手がいれば、少しでもデビューしやすい状況を整えてやることはできるかもしれないけど、結局、いくら自分が骨を折ったところで、最後は実際に闘う選手がどこまでプロとして高い意識でいるかになってしまう」
そして、他のジャンルの師匠格の方に聞いた話を例に挙げる。
「これは他のジャンルの方の話で聞いたけど、いくら師匠筋がお膳立てしてデビューさせたとしても、その弟子本人がやる気にならない限りは続いてはいかないらしい。格闘技に関してもそれは似ていて、すぐに辞めていくし、続けたところで、大した成績につながっていくとは思えない」
熱意のある弟子は「ひとつまみ」
「今、自分はアメリカに自宅があって、部屋もそこそこ空いているから、そこを誰かに貸してあげる程度ならともかく、『育てる』となると、自分にもそれなりの意識で手をかけることになる。本当にそこまで熱意のある弟子が見つかればいいけど、そんな人間は本当にひと握りしかいない。いや、ひと握り以下、ひとつまみだと思ったほうがいいのかもしれない」
しかも堀口は、この後、超一流のプロと一般的な「格闘家」の違いについて言及する。
「たしかに最近、世の中には『格闘家』と呼ばれる人たちがそれなりに増えてはきたと思う。アマチュアの人でも、その辺のジムに通ってしまえば、『格闘技をやっています』と言えてしまうのかもしれない。ただ、プロ野球選手と、草野球の選手ではまったく違うし、プロ野球選手の中にも超一流のプレイヤーから、そうではない選手までいるように、『格闘家』にも、いろんなレベルの『格闘家』が存在する。自分だってプロデビューしてから最初の数年は、空手を教えながら生計のタシにしていたように、インストラクター業や、ゴルフでいうところのレッスンプロとして、格闘技に関わっている選手がそれなりにいると思う」
とはいえ、試合の報酬として計上されるファイトマネーだけで生計を立てていける選手がどれだけいるのかと言えば、その数は決して多くはない気がする。
おそらくもう少し区分は分かれる気もするが、堀口の言葉から「格闘家」にはファイトマネーだけで生計を立てる「プロ格闘家」とレッスンプロを兼ねる「プロ格闘家」とそれ以外の「草格闘家」の三種類が存在していることがわかる。
もちろん文脈から察するに、柔道やレスリング、ボクシングなどで五輪を見据えるようなアマチュア選手は「草格闘家」には含まれてはいないだろう。
そして堀口は「断言すると、仮に成功しなかったら他に仕事を探せばいいだろう、程度の意識や覚悟でいるなら、絶対に生き残ることはできない」とトップファイターになる厳しさを説く。
さらに面白いのは、堀口が「自分から『格闘技をやってます』なんてことを口にしたことは一度もない」と語っていることだろう。
「誰かが自分のふくらんだ耳を見て、『レスリングをやっているんですか?』と聞かれたから、『はい、レスリングです』と答えたことがある。細かいことをいちいち説明していくのがわずらわしいし、面倒に感じるからだ。こんな自分だから、やっぱり直弟子はできないのかなと思っている」
裏を返せば、この見解を見て、尻込みせずに「やってやる!」と思うくらいでないと堀口の「直弟子」にはなれないし、トップには立てない、という禅問答的な見解ともいえる。