【週末は女子プロレス♯126】レジーナ、日本の女王に敗れ悔しさあらわ「まだリスペクトする存在じゃない」

東京女子プロレス10・27後楽園ホール大会のメインイベントは、王者・山下実優がフィンランドから初来日のレジーナを迎え撃つプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合だった。この試合は日本vsフィンランドという意味合いもあり、女子プロレスと後楽園ホールの歴史においてもこの図式の試合がおこなわれるのは史上初。しかもベルトを懸けたタイトルマッチでのメインイベントとあって、見方によっては歴史的な一戦でもあったのだ。

ベルトを懸けた歴史的なタイトルマッチ【写真:(C)東京女子プロレス】
ベルトを懸けた歴史的なタイトルマッチ【写真:(C)東京女子プロレス】

王者・山下実優がフィンランドから初来日のレジーナを迎え撃った

 東京女子プロレス10・27後楽園ホール大会のメインイベントは、王者・山下実優がフィンランドから初来日のレジーナを迎え撃つプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合だった。この試合は日本vsフィンランドという意味合いもあり、女子プロレスと後楽園ホールの歴史においてもこの図式の試合がおこなわれるのは史上初。しかもベルトを懸けたタイトルマッチでのメインイベントとあって、見方によっては歴史的な一戦でもあったのだ。

 挑戦者のレジーナは身長166センチ、体重105キロのパワーファイターだ。北欧フィンランドの首都ヘルシンキで生まれ、ヘルシンキから北のドゥードラという街で育った。WWEにあこがれレスラーを目指し、当時フィンランドで唯一のプロレス団体FCF(ファイトクラブフィンランド)に入門。2015年5月にデビューし、今年でキャリア8年になる。

 FCFといえば、2010年にSMASHが「北欧の神」と言われるスターバックを招聘し、日本にも知られるようになった。FCFからはフィンランドのプロレス文化を生んだスターバックのほか、ジェシカ・ラブら個性豊かなレスラーが来日。これまでの外国人レスラーにはない独特な空気を持ち込んだことでSMASHは他団体との差別化をはかると同時に、プロレス未開の地を開拓していったのである。

 レジーナもそんな流れを汲むレスラーのひとり。FCFは男女混合団体で、レジーナはデビューから3か月で総帥スターバックと初めてチームを組んだ。その後、アルファ・フィーメル、トニー・ストームら来日経験のある選手とも対戦し、19年12月7日、5WAYによるラダーマッチでFCFフィンランド・ヘビー級王座に初挑戦。22年6月にオーストリアROE(リング・オブ・ヨーロッパ)でGLAM!王座をアマゾンことアイーシャ・レイモンドから奪取し、初戴冠を成し遂げた。今年2月にFCF王座挑戦者決定トーナメントに参戦し、4月15日には師匠2人を含む24人参加のランブル戦を勝ち抜き挑戦権を獲得、5月27日に男子レスラーを破って同王座初奪取、第34代王者となったのである。

 04年にスタートした同王座の歴史においても女子レスラーの獲得は初めての出来事となった。これまでは男子のタイトルとして試合がおこなわれており、FCFに女子の王座は存在していない。今後も女子王座ができる予定はないそうで、FCFフィンランド・ヘビー級王座こそがFCFの頂点をジェンダーレスで決めるタイトルになっていきそうだ。

 その現王者として日本にやってきたレジーナ。2度の防衛を果たしてからの来日で、初防衛戦はシングル&タッグ王者がトリオを組み、両方のベルトを懸けるタイトル戦だった。この試合ではレジーナがタッグ挑戦者のひとりをフォールし防衛、2度目の防衛戦も含め、女性はレジーナひとりだった。スーパーヘビー級がひしめくFCFにおいても男子レスラーを圧倒する彼女はデビュー当初からラテン語で女王を意味するレジーナを名乗っており、ユニークな経歴とキャラクターがマット界以外からも注目を浴びている。2年前から彼女の人生を追いかけるドキュメンタリーの撮影がおこなわれており、今回の来日にも撮影クルーが同行。ヨーロッパ以外で初の試合となる東京女子への来日が、どうやらクライマックスになるらしい。

 レジーナが初めての日本でいきなり東京女子の最高峰タイトルに挑戦なら、迎え撃つ王者・山下は日本を飛び出し海外でも活躍中。プリプリ王座は4度目の戴冠で、もちろん東京女子最多である。かつては絶対王者としての地位も築いた山下は、過去とは異なる新しい立場で、再び東京女子のトップに立った。

山下「体の割りにはスタミナがありましたね」

 10・9八王子、瑞希からの勝利で「自信を持って新しい出発地点に立てた」と言う山下は、この時点で日米英の3冠王。すぐにアメリカに飛び、11日の試合に臨んだ。しかし、日本でも闘ったビリー・スタークスに敗れ、スパーク女子世界王座を失ってしまう。

「ビリーにやられちゃいました。いい子だったんですけどね、すっかり悪くなってて……。ベルトで殴られ意識が飛んだところでフォールを取られたんです。向こうのズル勝ちですよ。納得いかないので、また取りにいかないといけないですね」

 アメリカで3試合をこなし、ホームリングでのプリプリ王座防衛戦。ここ数年で世界各地のリングに上がっている山下とはいえ、さすがにフィンランド人レスラーとは初対戦だ。身長はほぼ同じながらも体重差の大きいレジーナは体格だけでも脅威である。しかもレジーナは山下が得意とする蹴り対策を十分に練ってきた。プリプリ王者の山下が外国人レスラーと防衛戦をおこなうのは、第5代王者時代のベーダ・スコット、プリシラ・ケリー以来5年ぶり。外国人レスラーの挑戦は過去に6人でレジーナが7人目。未知だからこそ何が起こるかわからない。初の外国人プリプリ王者誕生の可能性があるなかで、結果的には山下が防衛。しかしながら、王者には予想以上にピンチの連続だったことは否定できない。

「体の割りにはスタミナがありましたね。ハイキックやスピンキックは相手が重くても一発いいのが入れば相手は倒れるんですが、前半はけっこう私の方がやられていたので、それって向こうがかなり動いていたことになるんですよね」

 では、敗れたレジーナは山下とのタイトルマッチをどう感じたのだろうか。

「さすがにこれまでジャパンで2試合やった相手とは違ったわ。ヤマシタは確かに強かった。『タイトルマッチは早い』なんて声もあったけど、それは私を知らないだけで、ベルトを懸けるにふさわしい闘いだったとわかったんじゃないかな。メインでタイトルマッチ、べつに驚くことじゃない。ジャパンのみんなが知らないだけで、私のやってきたことからして当然なのよ。試合後、手を差し出されてもヤマシタとは握手しなかった。まだリスペクトする存在じゃないからね(笑)」

 試合後の山下は、「レジーナを蹴り倒しにフィンランドまで行きたい」とコメントした。東京女子とフィンランドFCFとの“国交”が開いたいま、決して不可能な話ではないだろう。もしも実現すれば、こんどはレジーナのFCF王座を賭けるのもおもしろい。山下が敵地で王者となった場合、日本人の彼女がFCF男子王座の歴代王者として名を連ねるのだ。

 かつて里村明衣子がイギリスでFCP(ファイトクラブプロ)王者となり、DDTでKO-D無差別級王座のベルトを巻いたことがあった。どちらも男子の王座であり、世界を戦場とする山下がその座を引き継ぐのもありではないか。イギリスEVE王座は奪取から間もなく一年が経過、日本とイギリスで現在8度の防衛に成功中だ。東京女子のプリプリ王座と合わせ、今後何ヵ国のベルトを巻くのか、世界を旅する山下の活動に注目したい。

 また、フィンランドから発掘のレジーナの再来日にも期待したい。現在、東京女子ではマックス・ジ・インペイラーがインターナショナル・プリンセス王者に君臨している。10・9八王子で辰巳リカとダブルタイトル戦をおこない、インペイラーはインター王座奪取と同時にNWA世界女子TV王座を防衛。実はインペイラーはFCFで9月30日にレジーナと一騎打ちで対戦しており、NWA王座防衛に成功しての来日だった。

 世界を駆け巡る、東京女子を拠点とするタイトル戦線。今後の展開が楽しみである。

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