渋谷「来ないで」、それでも集まる若者たちの言い分 報道に不信…「自分の目で見ないと」

ハロウィーン当日の10月31日、近年大勢の人が押し寄せ大きな問題となっていた東京・渋谷では、警察官や警備員が多数出動、“厳戒態勢”の1日となった。今年は区長が前もって「来ないで」とアナウンスしていたためか、例年ほどの盛り上がりを見せることはなかったが、それでもスクランブル交差点ではスマホを掲げ、人だかりを撮影する若者や外国人の姿が多く見られた。再三にわたって事前のアナウンスがあったにもかかわらず、なぜこの日渋谷を訪れたのか。彼らの言い分を聞いた。

毎年恒例のハロウィーンの喧騒が包んだ渋谷の街【写真:ENCOUNT編集部】
毎年恒例のハロウィーンの喧騒が包んだ渋谷の街【写真:ENCOUNT編集部】

事前に区長が「来ないで」と再三にわたってアナウンスしていた渋谷のハロウィーン

 ハロウィーン当日の10月31日、近年大勢の人が押し寄せ大きな問題となっていた東京・渋谷では、警察官や警備員が多数出動、“厳戒態勢”の1日となった。今年は区長が前もって「来ないで」とアナウンスしていたためか、例年ほどの盛り上がりを見せることはなかったが、それでもスクランブル交差点ではスマホを掲げ、人だかりを撮影する若者や外国人の姿が多く見られた。再三にわたって事前のアナウンスがあったにもかかわらず、なぜこの日渋谷を訪れたのか。彼らの言い分を聞いた。

 まだ日も高い午後3時、センター街を歩いていた制服姿の女子高生2人組は「日曜と今日と、友達と買い物で来ました。自分たちではしないけど、コスプレしてる人を見たり一緒に写真を撮ったりするのは楽しくて好きだった。でも今年はコスプレしてる人も少ないし、なんか警察とか警備の人が怖いので早めに帰ります」と話し、足早に去っていった。

 スクランブル交差点が混み合いだした午後6時、人気アニメ『呪術廻戦』の五条悟のコスプレで来たという23歳の男性は、「いつもは歌舞伎町とかで飲んでることが多いんですけど、ハロウィーンはやっぱ渋谷かなって。ぶっちゃけナンパ目的で来たんですけど、今年はもうダメっすね。そもそも若い子が少ないし、コスプレしてるノリのいい子なんてほとんどいない。かと言って今からこの格好で他の街に行っても浮くだろうし……。路上飲みもできないので、とりあえず景気づけに店で飲んで遅い時間に備えます」と話した。

 ネット上ではこの数日、過去に渋谷区や企業がこぞってハロウィーン誘致に取り組んでいたことが話題に。顔半分にゾンビの特殊メイクを施した20代の女性は「3年くらい前から? 毎年来てます。コロナになってから来るなって言われるようになったけど、もともとは街を挙げてハロウィーンを盛り上げようとしてたって聞きました。大人の都合で来てとか来るなとか、ころころ言うことが変わるのはおかしいと思います」と疑問を口にする。

 友人と待ち合わせをしているという、都内の大学の法学部に通う21歳の男性は、「今年は路上飲酒は条例で禁じられたけど、街に来るなという法的な根拠はありません。日本人は体制側が一方的に決めたことを何の疑いも持たずにうのみにする悪い癖がある」ときっぱり。「メディアの報道だって信用できない。実際に渋谷に来て自分の目で見たものと比較しないと、正しいかどうか分からないじゃないですか。今日は普段の渋谷と比較してもそこまで人は多くないし、バカ騒ぎしてる人も少ないけど、どうせ切り取られて『若者がバカ騒ぎ』って記事が出ますよ」と記者に疑いのまなざしを向けた。

 胸元の大きく開いた露出度の高いドレスに身を包んだ51歳の男性は「こういう機会でもないと、普段はなかなか自分の好きな格好ってできないでしょ。騒いだり暴れたりはしないから、年に1回くらい、人目を気にせずなりたい自分になれる日があってもいいと思うの」と大真面目な顔で語った。

「特に目的があるわけじゃないんです」と話すのは、喫煙所でたたずんでいた20歳の男性。「例えば、カップルでにぎわうクリスマスのイルミネーションの中、一人あてもなく街をさまよって、切なさに浸りたい気分のときってあるじゃないですか。あれと同じで、このハロウィーンの喧騒の中でこそ得られる孤独感っていうものもあるんですよ」と笑ってタバコの煙を吐き出した。

 一方、この日街全体で若者以上に目立っていたのは、外国人の割合だ。米国・フロリダ州から観光で日本に来たという30代の女性は「来たらダメというのは知らなかった。店も開いているし、電車も遅くまで通っているのに『来たらダメ』というのもおかしな話」と首をかしげていた。

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