「京大にミスコン文化を持ち込むな」OG作家の投稿が物議 大学側が見解「論点が異なる」

「京大にミスコン文化を持ち込むな」。京都大学の卒業生で作家として活動する西郷南海子氏が、同学の広報誌に掲載されたミスコン参加経験のある在校生へのインタビュー記事に対しSNS上で批判を展開、物議を呼んでいる。「ルッキズム(外見至上主義)を助長する」との批判もあるミスコン文化について、どのように考えていくべきなのか。西郷氏と記事を編集した京都大学総務部広報課に見解を聞いた。

大学広報課編集のウェブマガジンが物議を呼んでいる京都大学(写真はイメージ)【写真:写真AC】
大学広報課編集のウェブマガジンが物議を呼んでいる京都大学(写真はイメージ)【写真:写真AC】

大学広報誌に掲載された、外部でのミスコン参加経験のある京大生のインタビューを問題視

「京大にミスコン文化を持ち込むな」。京都大学の卒業生で作家として活動する西郷南海子氏が、同学の広報誌に掲載されたミスコン参加経験のある在校生へのインタビュー記事に対しSNS上で批判を展開、物議を呼んでいる。「ルッキズム(外見至上主義)を助長する」との批判もあるミスコン文化について、どのように考えていくべきなのか。西郷氏と記事を編集した京都大学総務部広報課に見解を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「【京大にミスコン文化を持ち込むな】 京大生なら知っていると思いますが、京大の学園祭ではミスコンをやらないということを長年の合意としてきました。女性を見た目で序列化し、商品化することの問題です。ところが今日京大の公式インスタで外部のミスコンにチャレンジしてきた人物が載りました」

 西郷氏は今月25日、京都大学総務部広報課が編集するウェブマガジン『ザッツ・京大』に、外部でのミスコン参加経験のある京大生のインタビューが掲載されたことをSNS上で問題視。続く投稿では、「外部のミスコンに出ることはその人の自由ですが、京大の広報に出ることは、これまで学生間で作ってきた合意とかけはなれている」「ミスコンがあれば学祭がもっと盛り上がるのに、という意見があるそうですが、その考えこそが女性を見世物にしているのです。他の大学にはあるのに、という意見に対しては『そうですか』としか思えません。女性が容姿でジャッジされて当たり前の世界を変えなければ」とつづり、大学に抗議の電話をしたことを明かしている。

 一連の投稿は1300件を超えるリポスト、3000件近い“いいね”を集めるなど話題に。「女性の容姿に優劣をつけるミスコンは時代遅れ」「外見という才能を評価する機会=ミスコンはあっていいけど、大学でやる必要はない」といった声の一方で、「京大でミスコンを行わない事と、学生が出場したコンテストで準ミスに選ばれた栄光を紹介することは別の話では」「見た目の美しさも才能。勉学やスポーツで努力するように、美しくあろうとする行為も努力だ」「女性だけが容姿でジャッジされるのが嫌ならミスターコンテストもやれば平等で良いのでは?」といった意見も寄せられるなど、賛否両論を呼んでいる。

 西郷氏は2006年に京大に入学し、20年に博士号を取得するまで14年間在籍。「学生としては長い方だと思います。その中で、学園祭に主体的に関わったことはありませんが『京大ではミスコンはやらない』というのが決まりになっているのを知りました」と今回の投稿に至った経緯を語った。

 投稿には「ミスコンをやらないことは学生の合意ではない」といった反論の声も多数寄せられたという。

 西郷氏は「そこについては私の知らない過程があったのだろうとは思います」と認めた上で、「ただ、『京都大学ではミスコンを行わない』としていることは社会に対して大きなメッセージを持つと思います。ミスコンが女性の序列化を堂々と行っていることは言うまでもありません。むしろ序列化することが本質です。それを見て楽しむとはどういうことなのでしょうか。私は一学生として京大がミスコンを行わないことに『ほっとした』人間の一人です。ミスコンは『美の規範』を示す力が強く、そういった規範は知らず知らずのうちに内面化されていきます。この息苦しさからは自由でありたいです」と投稿の意図を説明。

「『出たい人は出ればいい』という意見はその通りです。ただ、それを『大学』という場で行ったり、大学が広報で紹介するとなると話は違ってきます。そこを理解していただきたいです。また組織としてのミスコンが多くの問題をはらんでいることも知っておくべきです。議論が進むことを願っています」と話している。

 一方、京大総務部広報課は『ザッツ・京大』の編集方針について「京都大学が標榜する『自由の学風』から生み出される『京都大学らしさ』を感じていただくことを目的に、京都大学の学生、教職員、卒業生の活動等を紹介するウェブサイトです」と説明。当該記事の企画意図については「日本からより多くのグローバルリーダーを輩出したいという目標に向かって努力される姿を多くの皆様に知っていただきたいとの思いからです。彼女のこれまでの歩みや思い、活動などを幅広くご紹介しております」と回答を寄せた。

 西郷氏の投稿にあった「『京大の学園祭ではミスコンをやらない』という長年の合意」に関しては「確認した限りでは、大学と学生の間での合意はありません」とした上で、一連の投稿に対しては「『京大の学園祭』は、学生主体のイベントであり、個々の企画内容については尊重されるべきものと考えております。多様なご意見があることは承知致しておりますが、京大の学園祭における企画の件と、今回、ミスコンへの出場を通じて自身の活動を社会へアピールしたいと考えた本学学生の活動について大学の広報で紹介した件とは、論点が異なるのではないかと考えています」との見解を示している。

次のページへ (2/2) 【写真】京大広報誌に実際に掲載されたミスコン出場者の姿
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