【アフター・コロナ】コロナ契機に効率化推進で日本経済は“倍返し”で回復も可能!
中国のリベンジ消費が凄まじい
第二に、一部の国の回復の速さだ。欧米より一足先に行動制限を解除した中国では、「リベンジ消費」、すなわち、抑制されていた反動からの消費拡大が著しい。高級宝飾品メーカーであるLVMHグループは、4月以降、傘下のルイヴィトンの中国での売り上げが、前年の同じ頃を50%も上回っているとしている。まだ女性たちは大きなマスクをして街を歩いている。それでもこうした宝飾品への欲求は、しばらく抑えられた分、凄まじい反動増となって現れているようだ。
宝飾品だけではない。中国では、4月のスマホの出荷額も前年比17%増と強いとする。まだ部分的な回復に過ぎないが、行動制限が解除されつつある他国の消費を占う上では明るい材料だ。
加えて、業務革新という副産物もついてきた。今回、人が移動しないで業務を行うことが案外可能で、それが時間やストレスを抑制しうるということが図らずも示された。これは、特に日本にとって重要だ。日本企業の効率性の低さの一因に、対面・書面・現物主義がある。対面で業務を行うことが尊まれ、押印をついた現物が求められることが多い。しかも欧米では、オフィスが日本ほど一都市に集中していないため、もともと日本よりは非対面のコミュニケーションが多かった。例えば筆者が米系金融機関で働いてた数年前に行われた調査では、筆者と米国の同僚の顧客ミーティングの数は、筆者の方が1.5倍程度多かったと記憶している。
失ったものを“倍返し”したい
今回の新型コロナで、“足が命”と言っていた中高齢層も、案外オンライン飲み会を楽しんだりしている。すでにこうした非効率の見直しに政府や大企業が着手している。今後の効率化推進の起爆剤になればと思う。
もっとも、こうした見直しの機運も「喉元過ぎれば……」ということになりかねない。外出制限後に会って最初に交わされるのは、「やっぱりリアルに会うのはいいですね」という感想だ。しかし、大きな痛みを伴って得た改革の機会を逃すのはあまりに惜しい。
失ったものを倍にして返すくらいの気概でアフター・コロナの回復に賭けたいものだ。
□大槻奈那(おおつき・なな)茨城県古河市生まれ。88年、東京大学文学部卒業後、三井信託銀行(現・三井住友信託銀行)入行。ロンドン・ビジネス・スクールでMBAを取得し帰国後、スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券などでリサーチ業務に従事。2016年1月、マネックス証券チーフ・アナリストになり、国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析している。名古屋商科大学大学院教授なども務める。