円安加速で家賃10万円→45万円に 物価高騰のハワイのいま「格差が如実に広がってる」

日本人による海外旅行が復活の兆しを見せる中、暗い影を落とすのが円安の進行だ。渡航費、食費、娯楽費……コロナ禍前とは大違いの価格設定に、驚いた人も多いだろう。いま、日本人に人気の観光地ハワイはどうなっているのか。10月16日から現地を訪れた格闘技記者の“Show”大谷泰顕がハワイの最新事情をレポートする。

ハワイ・オアフ島といえば、ご存知ダイヤモンドヘッド
ハワイ・オアフ島といえば、ご存知ダイヤモンドヘッド

かけうどん+トッピング2品で1杯1600円

 日本人による海外旅行が復活の兆しを見せる中、暗い影を落とすのが円安の進行だ。渡航費、食費、娯楽費……コロナ禍前とは大違いの価格設定に、驚いた人も多いだろう。いま、日本人に人気の観光地ハワイはどうなっているのか。10月16日から現地を訪れた格闘技記者の“Show”大谷泰顕がハワイの最新事情をレポートする。

 令和の時代、ハワイは完全に観光地の象徴として日本人の心象風景のなかにある。イメージ的には芸能人の御用達の場所であり、とくに年末年始ともなれば数多くの姿が目撃されている。

 そんなハワイもコロナの影響で、今年5月12日(現地時間)から、ようやく国外からの渡航者に対し義務付けていた2回以上の新型コロナウイルスワクチン接種証明書の提示が撤廃された。これにより出入国に関してはコロナ禍前と同じ状況が戻ってきたことになる。

 さて10月中旬、久々にハワイの地を訪れる機会を得た。場所はオアフ島のホノルルである。

 まず最初に驚いたのは、ホノルル空港で、神奈川県下の高校生たちの修学旅行らしき集団を見かけたこと。高校生にまでハワイ旅行が許されているということは、それだけ人々の意識が緩和されてきたという証拠でもある。もちろんピーク時に比べれば回復したとは言えないだろうが、少しずつ日本人観光客の客足は戻ってきているのだろう。

 とはいっても、まだまだハードルは高い。なにせ円安のあおりを受けていることもあって、二の足を踏んでいる人は少なくないことは容易に想像できる。

 一般的にコロナ禍の始まりは2019年末からを指すそうだが、この時点での円相場は1ドル110円を切っていた。それが今年5月の時点では1ドル135円、今では1ドル150円の大台に乗った。

 こうなると、約4年前とは物価が大きく違ってしまう。

 実際、現地では変化を痛切に体感した。例えば日本でもおなじみの丸亀製麺。日本同様、各種のうどんがおいしくいただけるホノルル店は、おそらく世界で最も行列ができている丸亀製麺の店舗で、ホノルルに行くなら一度はその行列を目にしてほしい場所でもあったが、今回、改めて値段を確認すると少々驚かされた。

 私は2019年11月にハワイを訪れた際にも丸亀製麺で食事をしたが、そのときはかけうどんのレギュラーサイズの値段が3ドル95セントだった。当時のレート(1ドル109円)で換算すると約435円だ。これに天ぷらのトッピングを2品入れて、だいたい800円くらいだった記憶がある。

 今回、同じかけうどんを注文すると、この4年で値段が5ドル50セントに値上げされたこともり、1ドル150円で換算すると825円になる。4年前のほぼ倍の値段だ。今回もトッピングに天ぷら2品を注文したが、合計で10ドル71セント。日本円だと1600円を超えた。これだとやはり少し高い気もする。

 4年前もそうだったが、丸亀製麺の行列は時折、まったく列をつくらないことがあり、今回訪れた時間もたまたま列がなかった。そのため、すんなりと入店して食事を済ませたが、その日の夜にまた同店の前を通りがかると、外国人を中心に、いつものような長蛇の列が店の前に形成されていた。日本人にとっては“1杯1600円”のうどんは割高に感じるものの、海外の客にとってはそこまで感じるものではないのかもしれない。

ハワイでは不動産価格も上昇
ハワイでは不動産価格も上昇

不動産の値段は高騰

 物価上昇の傾向は、ほかにもあった。

 現地に住む日本人に話を聞くと、「衣・食・住」にかかる金額は軒並み上がっており、日本人にとってはやはり円安がさらに拍車をかけているとのこと。ここ数年で最も値段が上がったものは何かと尋ねると、「家賃」と即答された。聞けば10年前まで月1000ドル(約10万円/2013年のレート、1ドル=100円で計算)だった賃貸物件が、今では3000ドル(45万円/1ドル=150円で計算)となってしまう場合もあるという。それだけ上がってしまうと、移住などで生活拠点をオアフ島に置くことも厳しくなっていくとの話だった。

 さらに不動産の値段が高騰しており、コロナ禍前には約91万ドル(約1億円/4年前のレート、1ドル=110円で計算)で購入できたマンションが、今では平気で100万ドル(約1億5千万円/1ドル=150円で計算)、133万ドル(約2億円/1ドル=150円で計算)といった値が付けられており、庶民と裕福層の格差が如実に広がっていることを実感しているという。

 もちろん、観光客への影響は大きくなる。そういった事情とどこまで関連しているのかは分からないが、現地では自転車シェアサービスをひんぱんに見かけた。金額的に値が張るレンタカーではなく、これを用いて気軽にオアフ島の名所を散策するのだろう。同サービスに関しては、最近では東京でもあちこちに見かけることが増えてきたが、ハワイでも今後はさらにその数は増加していくに違いない。

 ちなみに、格闘技関係者の立場から言わせてもらうと、ハワイはUFCの殿堂入りを果たしているBJ・ペンのおひざ元だが、亡くなったジャイアント馬場さんがオフになると訪れていた場所として知られつつ、実はライバルだったアントニオ猪木さんの最初の妻はハワイの女性だった、という格闘技界とも縁の深い場所。もちろん歴史的に見ても、かつてハワイは真珠湾攻撃を含め重要な拠点になった、日本人にとっては特別な場所でもある。

 実際、今だって真珠湾に足を運べば、当時のゼロ戦を含む戦闘機が航空博物館に展示され、大戦を潜り抜けたミズーリ艦も観光客向けに開放されている。ミズーリ艦には日本の特攻を受けて曲がってしまった船の跡もそのままにされており、当時の激戦の生々しさが見て取れる。

 昨今は直行便を使えば、東京から8時間かからずにハワイ・オアフ島に着く(帰りは向かい風のため9時間半)こともあって、日本人にはワイキキビーチでの海水浴やショッピングを含め絶大なる人気を誇る。時期にもよるが、風光明媚(めいび)で雨が少なく、日本と違って湿気もないため1年を通じて比較的快適に過ごせることがメリットになっている。

 今年も12月10日にはホノルルマラソンが開催されることが決まっており、ここ数年に比べれば、日本人の参加者も激増するだろう。

 一方、現地に移り住んだ日本人からすれば、円安の今、余計に損をしている感覚を強く持つに違いない。それでも、下がっているものはそのうち上がるし、その逆も成り立つ。そこは気長に構えるしかない部分があるのかもしれない。

 我々一般庶民にとっては、一刻も早く円安が改善され、せめて4年前の金額でハワイと日本を行き来できるようになってくれればと望むばかりである。

次のページへ (2/4) 【写真】一杯800円もする「かけうどん」実際のメニュー
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