SKE48荒井優希、選抜落ちしてもプロレスに挑み続ける理由「やり切らないと納得がいかない」

アイドルグループ・SKE48の現役メンバーでプロレスラー、二刀流の荒井優希(25)が27日、東京女子プロレスの後楽園ホール大会で引退を控える赤井沙希とのシングルマッチに臨む。東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞で新人賞も獲得した逸材に、プロレス挑戦後の心境の変化、パートナーでもある赤井との最初で最後の対戦に向けての思いを聞いた。

プロレス本格デビューから2年半が経ったSKE48の荒井優希【写真:イシイヒデキ】
プロレス本格デビューから2年半が経ったSKE48の荒井優希【写真:イシイヒデキ】

27日の東京女子・後楽園大会で赤井沙希と最初で最後のシングルマッチ

 アイドルグループ・SKE48の現役メンバーでプロレスラー、二刀流の荒井優希(25)が27日、東京女子プロレスの後楽園ホール大会で引退を控える赤井沙希とのシングルマッチに臨む。東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞で新人賞も獲得した逸材に、プロレス挑戦後の心境の変化、パートナーでもある赤井との最初で最後の対戦に向けての思いを聞いた。(取材・構成=イシイヒデキ)

 荒井がプロレス本格デビューを飾ったのは2021年5月4日。15歳でSKE48に加入し、アイドルの道を歩み続けた荒井は、本格デビュー後の変化をこう表現した。

「SKE48しかないと思っていた自分に、違う景色を見せてもらえたことで、タレントの荒井優希としても、人間・荒井優希としても、いろんな面で成長したと思っています。できなかったことができるようになる経験を積ませていただいて、頑張ればどうにでもなることを知りました。人間としても余裕ができて、好きに生きようと思いました」

 自分自身の新境地を開き、二刀流アイドルとして注目を集める彼女に喜びを感じる瞬間を聞いた。

「東京女子プロレスを見たことがない人、中にはプロレス自体を見たことない人が、『あなたが見たくて来ました』と言って、会場まで足を運んでくださります。プロレスファンの方も、アイドルの私を見るためにSKE48の公演を見に来てくれて、海外からいらっしゃった方が東京女子プロレスのTシャツを着ていて、驚いたこともありました。たくさんの方が私を見るために会いに来てくださることはうれしいことだと感じています」

 荒井は赤井とのコンビでプリンセスタッグ王座戴冠、シングルプレイヤーとしてはプリンセスカップ2023でベスト4入り、着実にプロレスラーとして結果を残している。一方で、アイドルとしての活動を以前のように続けることは難しくなっていた。劇場公演の出演回数は減少。直近のシングル3作品では選抜入りを逃している。アイドルとしての現状をどう考えているのか。

「やはり、『劇場の私を見たい』『選抜の私を見たい』と言ってくださる方もいらっしゃいます。でも、選抜ではないことで、SKE48としてもっと頑張ろうと思えるので、前向きにとらえて、まだ足りない部分があると思って頑張ろうと思っています」

 そんな中、9月29日から10月1日に開催された楽曲の総選挙『SKE48 リクエストアワーセットリストベスト100 2023』では、荒井がセンターを務める『あの頃のロッカー』が第1位に輝いた。この裏にはプロレスファンの支えもあったことを明かす。

「ファンのみなさんが熱く応援してくださって、プロレスの会場でもチラシを配ってくれていたみたいなんです。それで投票してくださるプロレスファンの方もたくさんいて、みなさんに1位を獲る姿を見せることができてうれしかったです。みなさんのおかげで、アイドルとプロレスを両立できていると実感しました」

 アイドルとしての勲章をつかんだ荒井は27日、“令和のAA砲”として東京女子プロレスのタッグ戦線を盛り上げた赤井と最初で最後のシングルマッチを控えている。

「SKE48でも先輩が卒業していって今があるので、そこはアイドルもプロレスも一緒ですよね。赤井さんとの時間を大切にしようと思いました。引退すると聞いた時は実感が無かったのですが、愛知で最後にタッグを組んで、試合が終わった後に実感が湧いて、赤井さんに戦いたい気持ちを伝えました。引退してしまうので、言わなかったら後悔する。後悔したくないという気持ちが一番大きかったです」

 プロレスと芸能活動の両立、プロレス大賞新人賞獲得、京都府出身など、たくさんの共通点がある荒井と赤井。たった1度しかない赤井との試合には、特別な思いがある。

「赤井さんはプロレスラーとして残された時間は短いので、その中でシングルマッチができるのは本当にありがたい時間です。もちろん、勝ちたいし、自分は絶対に忘れない試合になる。赤井さんにとっても忘れられない試合にしたいです。ずっとパートナーとして隣にいてくださったので、自分の成長を見せたいです」

赤井沙希とのタッグ“令和のAA砲”としても活躍した【写真:(C)東京女子プロレス】
赤井沙希とのタッグ“令和のAA砲”としても活躍した【写真:(C)東京女子プロレス】

プロレスラーとして大切にしていること

 荒井自身も当初は、21年末までの参戦を予定しており、リングを離れるはずだった。しかし、レスラー活動の継続を決意。なぜ、彼女はリングに上がり続ける道を選んだのか。

「本格デビューしてから期待されていることが伝わって、『もっと頑張らないといけない』と思いました。当時、求められているレベルにたどり着けないと思い、自分もやり切らないと納得がいかない性格なので、『もっと頑張りたい』と思い続けることを決めました」

 そして、レジェンドレスラーとの出会いが、継続の決め手となった。

「決断するきっかけになったのは、アジャコング選手との対戦でした(21年10月9日、東京・大田区総合体育館大会、タッグマッチでアジャが荒井からスリーカウントを奪った)。悔しくてもう1度戦いたかったけど、アジャ選手が手術を受ける前で、年内には戻って来られなかった。私が辞めてしまったら、もう戦うことができないので、試合終わりに続けたい意志を伝えました」

 今年3月の有明コロシアム大会では、シングルマッチも実現した。

「この試合も私が続けていなかったらなかったことです。負けてしまいましたが、終わった後にアジャ選手が『またやろうな』と言ってくださったので、また戦える日を楽しみにしています」

 大物レスラーとの対戦も経験し、着実に成長を続ける荒井はプロレスラーとしてずっと大切にしていることがある。

「ひとつひとつの技に思い入れがあって、ドロップキックはずっと下手でやらない方がいいと言われていましたが、(坂崎)ユカさん、中島(翔子)さんにたくさん教えていただいた思い出があります。今はひとつひとつの技の精度を上げていきたいと思っています」

 最後にプロレスラーとしての目標を聞いた。

「プロレスとSKE48の二刀流、その珍しさだけで見てもらえてもうれしいし、自分を見たいと思って会場まで足を運んでもらえるのはすごいことだと思っています。会場まで人を動かせるプロレスラーになりたいです」

□荒井優希(あらい・ゆき)1998年5月7日、京都府生まれ。2013年に「第1回AKB48グループ ドラフト会議」でSKE48・チームKⅡに指名されグループ加入。21年5月4日に東京女子プロレスでプロレス本格デビューを果たし、アイドルとプロレスの二刀流を続けている。

次のページへ (2/2) 【写真】荒井優希の腹チラショット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください