話題の3Dプリンター住宅、若い世代を攻めたつもりが「想定外」の需要爆増 切実な住宅事情の購入希望も
3Dプリンターで一軒家を丸ごと出力する「3Dプリンター住宅」が、一般普及への「足固め」を着実に進めている。今年5月には長野で、商用化第1号となる、10平方メートル・330万円の「serendix10」が完成。3棟目が工事着工の見込みだ。2人で暮らせる50平方メートル・1LDK・550万円の「serendix50」も今年8月から販売が始まっている。最新鋭の技術で作る新しい家には、「想定外」の需要が爆増。メーカーには問い合わせが殺到し、「ありがたい悲鳴」を上げている。
最短2日で完成 70平方メートル・ファミリータイプはデザイン製作中
3Dプリンターで一軒家を丸ごと出力する「3Dプリンター住宅」が、一般普及への「足固め」を着実に進めている。今年5月には長野で、商用化第1号となる、10平方メートル・330万円の「serendix10」が完成。3棟目が工事着工の見込みだ。2人で暮らせる50平方メートル・1LDK・550万円の「serendix50」も今年8月から販売が始まっている。最新鋭の技術で作る新しい家には、「想定外」の需要が爆増。メーカーには問い合わせが殺到し、「ありがたい悲鳴」を上げている。
3Dプリンターを使った素材で建築する新型住宅。最短2日間で完成可能であることで工期短縮やコストカットなど、住宅業界が抱える課題解消への期待感も集めている。開発・製造元は、兵庫県のスタートアップ企業『セレンディクス』。球体状の3Dプリンターハウス「Sphere(スフィア)」を取り上げたプレスリリースは世界80媒体で紹介され、大きな話題に。開発と実用化を進める中で、次から次へと一般希望者からの問い合わせが急増。現在、6000件の問い合わせを受けており、正式な契約書ではないが、1460棟分の「購入意向表明書」を取り付けているという。
同社担当者は「毎日すごい数のお問い合わせをいただいておりまして、販売担当者が追い付かない状態です。とにかく開発を急がないといけません」。あまりの数から販売受付が“パンク状態”であるというのだ。
メーカー側が強く感じていることがあるという。意外な需要だ。「皆さんの切実な思いをひしひしと感じ取っています。『今住んでいる家の契約が切れてしまうので、できたら来月に間に合わせてほしい』『貸し渋りがあって、家を借りられないのでどうにかしたい』といったものです」。住宅価格は高騰化が顕著なだけに、住宅事情で困っている人が大きな関心を寄せているようだ。
世界からの協力企業は膨れ上がり224社に
もともとは「若い方向けに攻めた」つもりが、60代以上の夫婦からの問い合わせが多数届く状況に。「『住宅のリフォームが1000万円以上かかってしまう。それならば思い切って今の家を売って、郊外に3Dプリンター住宅を建てたい』。こんな希望も承っております」。老後の住環境をどうするか検討する人が多い60代の興味を誘っているというから驚きだ。日本初の2人世帯向け「serendix50」は夫婦で住める住環境をテーマに、慶応大と連携して開発が実現した。
世界の企業や技術者も興味津々。協力企業は膨れ上がり、現在224社に。技術協力やアドバイスを受けている。プリンターは計5台の最新モデルを投入し、施工・建築作業を進めている。
最初に完成した第1号プロトタイプから課題や反省点を見いだし、改善を積み重ねている。そして、70平方メートルのファミリータイプ「serendix70」のデザインを製作中。その勢いはとどまることを知らず、担当者は「一般普及に向けた足固めを進めています。アップデートを重ねていますので、皆さんが安心して住めるような品質を届けたいです」と力強く語った。