アニー子役から声優へ 『北極百貨店のコンシェルジュさん』の主役に大抜てきの川井田夏海とは

漫画家・装飾家・イラストレーターとして活躍する西村ツチカの人気漫画を、Production I.Gがアニメ映画化した『北極百貨店のコンシェルジュさん』(10月20日公開、板津匡覧監督)。本作で新人コンシェルジュ・秋乃役を務めたのは川井田夏海だ。子役時代はミュージカル『アニー』(2009年)に出演したこともある声優界の新星だ。

声優界の新星として注目を集める川井田夏海【写真:矢口亨】
声優界の新星として注目を集める川井田夏海【写真:矢口亨】

ミュージカルの学校で学ぶため上京も声優の道へ興味

 漫画家・装飾家・イラストレーターとして活躍する西村ツチカの人気漫画を、Production I.Gがアニメ映画化した『北極百貨店のコンシェルジュさん』(10月20日公開、板津匡覧監督)。本作で新人コンシェルジュ・秋乃役を務めたのは川井田夏海だ。子役時代はミュージカル『アニー』(2009年)に出演したこともある声優界の新星だ。(取材・文=平辻哲也)

 本作は来店する客がすべて動物という不思議な百貨店を舞台にした奇想天外なファンタジー。西村が描く緻密なタッチを、『ハイキュー!!』シリーズや『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で知られるProduction I.Gが忠実に映像化した。

 川井田が演じたのは、動物たちを相手に孤軍奮闘する新人コンシェルジュ、秋乃。自身の名前にも「夏」という文字が入る。

「私は2月生まれですが、父が夏とサーフィンが大好きで、夏海とつけたそうです。そんな私が『秋』乃さんを演じることには何か縁を感じます」

 もともと、ミュージカルの学校で学ぶために上京したが、1年間勉強しているうちに、もう一つ好きなことだった声の仕事に興味を持った。

「『声のお芝居にもずっと興味があるな』と思って、今の事務所のワークショップに応募したのが声優を目指すきっかけでした。声優の仕事は人間だけでなく、動物などさまざまなキャラクターを演じられるところにひかれました。ワークショップは先生も役者としてお互いに学び合うスタンスを持っている素晴らしい環境でした。」

 2017年に声優としてデビューし、『放課後ていぼう日誌』(20年)、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』(21年)『RPG不動産』(22年)などに出演しているが、アニメ映画での大役は初めて。

「オーディションで役がなかなか決まらない時期もあって、時には私は向いていないのかなとも思いました。秋乃役が決まった時は本当にうれしくて、家に帰ってキャラクターについてもっと調べ、深く理解しようとしました。秋乃は非常にまっすぐで、何かにぶつかった時にくじけない強さを持っています。仕事においては私も同じですが、プライベートの私はもっと簡単にくじけてしまいますね」と笑い。

『北極百貨店のコンシェルジュさん』で新人コンシェルジュを演じる川井田夏海【写真:矢口亨】
『北極百貨店のコンシェルジュさん』で新人コンシェルジュを演じる川井田夏海【写真:矢口亨】

 本作は新人コンシェルジュの秋乃が、最重要顧客の絶滅種の動物たちに最上級のおもてなしをするために奮闘していく。特に、秋乃が深々とお辞儀をしているシーンが真に迫っている。

「収録では、お辞儀をしながらマイクに向かってセリフを言うわけにはいかないですが、家ではお辞儀をしながら声を出して練習していました。以前飲食店でバイトしていた時の接客の感覚を思い出しながら演じてみたり。それが意外と役に立つんですよ。人生に無駄な時間は一つもないですね(笑)」

 自身も大の動物好きで、秋乃との共通点もある。

「私自身、小さい頃から常に何らかの動物がそばにいる生活をしていて、上京してからは最近、女の子と男の子の2匹の保護猫をお迎えしまして、寂しいと思うことがなくなりましたね(笑)。映画はすべてが見どころですが、ニホンオオカミさんのプロポーズや、最後にウエディングドレスを試着するシーンは特に感動的。秋乃の人生にとっても、大きなものとなる瞬間を表現していると感じました」

 役作りや声作りは、いつも新しい学びがあるという。

「家でどれだけ練習しても、現場に行って他のキャストと一緒に作品を作り上げていくことが大切だと感じています。監督の指示や客観的な意見を受けて、試行錯誤することも。声優の仕事は瞬発力が求められることもあるので、細部にも注意を払って、ただ絵に頼る演技ではなく、もう一歩踏み込んだ演技をするように心掛けています」

『北極百貨店のコンシェルジュさん』は自身に大きな作品になり、両親も喜んでいる。

「近所などにチラシを配って歩くほどです。近くの映画館でも上映してもらえるようなので、親戚一同で見に行く予定です。でも、舞台あいさつに来てもらうのはちょっと恥ずかしいですね。しゃべれなくなってしまいます(笑)。この作品は、動物たちを通して、親子関係や恋人のことなど、普遍的なものが描かれているので、共感していただけたらうれしいです」

 本作では初めて主人公を演じることができたが、「いろんな役を自由に表現できる声優になりたいです。物語の中ではヒール役も重要な部分なので、そのような役も演じることができたら。どんな役でも全身全霊で挑んでいく役者になりたいと考えています」とさらなる飛躍を誓った。

□川井田夏海(かわいだ・なつみ)愛知県出身。インテンション所属。主な出演作品は、「放課後ていぼう日誌」(帆高夏海役)、「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」(結城あさみ役)、「RPG不動産」(ルフリア役)など。今作で劇場アニメーション映画初主演を務める。

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