【どうする家康】NHKがムロ秀吉を高評価「大きな火種を残す、素晴らしい退場劇」

NHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)の第39回が15日に放送され、俳優・ムロツヨシが演じる秀吉の最期が描かれた。チーフ演出・村橋直樹氏が、秀吉が家康と最後に言葉を交わす場面や茶々に看取られる場面などについて、ムロと話したことや演出意図などをコメントした。

秀吉を演じるムロツヨシ【写真:(C)NHK】
秀吉を演じるムロツヨシ【写真:(C)NHK】

チーフ演出・村橋直樹氏が秀吉の最期描いた第39回についてコメント

 NHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)の第39回が15日に放送され、俳優・ムロツヨシが演じる秀吉の最期が描かれた。チーフ演出・村橋直樹氏が、秀吉が家康と最後に言葉を交わす場面や茶々に看取られる場面などについて、ムロと話したことや演出意図などをコメントした。

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「登場時から天下人に駆け上がるまで徹頭徹尾『底が知れない』『何を考えているのか分からない』という今回の秀吉像を独特なリズム感で体現してくださっていたムロさん。クスリと笑える柔らかい表現から、一気に背筋を凍らせる冷たい表情まで、温度差とその急激な乱高下で、家康を翻弄(ほんろう)させ続けてくれました」

 第39回について具体的なシーンを例にコメント。

「この39回においては、変幻自在に他者を翻弄してきた秀吉が、ある意味、老いというものに自分自身も翻弄されているさまが、ムロさんによって絶妙な塩梅で表現されています。たとえば第二次朝鮮出兵を決めるシーン。『この頭には無限に策が詰まっている。ワシに任せとけばいいんじゃ』といいながら、家康に背を向けて主座に帰っていく瞬間の秀吉の表情は、少し虚ろで、自分が放った言葉に驚き混乱しているようにも見えます。

 稀代の人たらしとして他者をコントロールしてきた男が、自分のコントロールができなくなっている。しかし地頭が回るが故に、場はコントロールできてしまう権力者の悲哀を、見事に画面に焼き付けてくれました。演技の表現としては一瞬ですが、このカット以降、今この秀吉は正気なのか、呆けているのか、真剣なのか、嘘なのか、見ているこちらも分からず、目が離せなくなります」

 家康を呼び出して言葉を交わすシーンの舞台裏も紹介した。

「そして死の直前に家康を呼び出し、死後の天下を託すシーンへ。天下をメチャクチャにしたまま家康に放り投げる、という流れのシーンでしたが、最期に『すまんのう』とボソリとつぶやきます。いくら呆けていてもこれは嘘ではないと分かる真剣で誠実な表情で。これは、ムロさんが一言だけ足したい、と提案してくれたものでした。自由に芝居をやっているように見えて、実は台本のセリフを大切にしてくれるムロさんが、珍しく足した言葉。これが、のちのち強く効いてきます」

 茶々に看取られるシーンにも言及。

「次のシーン。茶々に看取られながら血を吐いて死んでいくなか、茶々は『あとは任せよ』と天下人を引き継ぐ覚悟を、秀吉に宣言します。そのときのムロ秀吉はなんと、笑うのです。茶々という戦国の怪物の誕生を寿ぐように。ついさっき天下を家康に託したばかりなのに……。これこそがまさに、このドラマにおける秀吉なのです」

 第39回の撮影に臨むムロの様子も紹介してくれた。

「第39回の撮影に臨むにあたり、ムロさんは『最期まで(このドラマの)秀吉でいたい』ということを、おっしゃっていました。いままでも、そして晩年も、ムロ秀吉の言う言葉はすべてが嘘のようで、すべてが本音のようです。その対極にあるものを内包することが、このドラマの秀吉像の底知れぬ気持ち悪さであったのでしょう。まさにトリックスターとして、物語をかき回し、けん引してきてくれたムロ秀吉。ドラマにありがちな、死の間際に急に善人になるのではなく、清濁併せ呑んだ英傑として強烈な印象と、物語における大きな火種を残す、素晴らしい退場劇でした」

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