【どうする家康】ムロツヨシ、尾張ことばに苦難 岡田准一と松本潤との舞台裏「ハラスメント」
俳優・ムロツヨシが取材に応じ、自身が出演するNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)で演じる秀吉をどんな人物ととらえて演じたのか、また、ムロが考える三英傑の関係などを語った。さらに家康を演じる主演・松本潤、信長役の岡田准一との舞台裏のエピソードなども明かした。
秀吉を熱演 三英傑の関係は「いびつな三角形」
俳優・ムロツヨシが取材に応じ、自身が出演するNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)で演じる秀吉をどんな人物ととらえて演じたのか、また、ムロが考える三英傑の関係などを語った。さらに家康を演じる主演・松本潤、信長役の岡田准一との舞台裏のエピソードなども明かした。
まず、サルと言われながらも天下を取る秀吉をどういう人物ととらえて演じたのか。思いがけない秀吉像に毎回、台本を読んで驚かされたと言うが……。
「今回の秀吉は自己分析能力が高く、予知能力がとても高い人間だと自分の中に落とし込んだ時、すんなり線が通りました。主役は家康ですので秀吉はポイントポイントに点として登場します。その点と点をどうつなげようかと思った時、自己分析力が高かったことと、もしかしたら秀吉は本当に予知能力を持っていたのかもしれないと思うと、道化をやるにしろ、人から見たらサル、ピエロであることを演じやすくなったんです」
主演・松本の俳優としての魅力も聞いた。
「とてつもなく強い責任感。ひとつの役を演じるだけでなく、『どうする家康』という作品を背負う責任感の強さは誰よりも強いです。そこまで持たなくてもいいのに、というところまで持ってしまうところがかっこいい。さらに、どう演じようかと悩んでいる姿も松本さんらしいです。魅力です。弱音をしっかりはいてくれる。彼の人間味ならぬ役者味がすてきだなと思います。支え方はいろいろありますが、僕はしっかり嫌な敵になって終われたらと思って演じました。最後に敵対というより天下取りを成し遂げてしまう人たちの会話を2人でできたのは貴重な財産になっています」
秀吉と家康、信長を含めた3人の関係をどう思うのか。
「信長様はカリスマ。絶対的存在。秀吉はこの人について行く、この人のためなら何でもできるという関係性。秀吉は確実に信頼しています。その頃、家康と秀吉はライバル関係。友情もないです。信長が誰よりも信頼しているのは家康という描かれ方なので、秀吉の家康への嫉妬もあります。でも秀吉には家康を認める力があったと思います。嫉妬だけなら天下は取れていません。秀吉は家康とライバルであり、認めている関係。でも家康からは嫌われている。秀吉が見えていることを信長も見えていたからこそ2人の会話はつながっていた。家康は先を読めないけど変わっていく人。いびつではあるけど三角形がずっとあった。三英傑のいびつな三角形という感じでしょうか」
秀吉は信長が亡くなるまでは道化に徹しているが、目が笑っておらず怖かった。演じる上で表情など意識したことは。
「明るい男で、すべてを笑って返せるだけでは、どうしても、そこから後に天下を取ることが僕の中では線がつながらず、計算高さ、悪どさを気にしていました。家康には何を考えているか分からない人物に見えるようにと意識しました」
信長と家康に無く、秀吉にはあったものは何だと思うか。
「信長様よりあったと演じる上で気づいたことは、予知能力ですね。先をよむ力。戦うこと、人を集めること、領地をどうまとめるか……有名な武将が2手読んでも、その2倍、3倍読めていた。だからバカにもなれる。失敗しても次のことをすぐに考えられる。失敗を受け入れる力も含めて大きい。そこは信長様よりあったと思う」
過去、いろんな作品で描かれてきた明るい秀吉とはちょっと違う印象もある。
「もっといい秀吉を演じられると思っていたんです。明るくて人気者で、人を集める力があるところを描いてくれると思ったら野心しかないんだもの。ポイントポイントで登場して蹴られるか、悪い事を考えているか。天下を取ってからはより悪い描かれ方(笑)。でも、なぜ秀吉がこういうやり方、人格操作をしてそこにたどり着いたかは39話で描いてもらえたかなと思います。そこの悲しみは分かっていただけるとうれしいです」
ほかにも台本を読んで秀吉について驚かされたことがあるという。
「台本でまず一番驚いたのは、家康も信長様も全く尾張ことばを話していないのに、私だけ尾張ことば、あれ、おかしいなと。ムロに好きなようにやらせないように尾張ことばで縛ったのかとか、演技スペースを縮めにかかったのかなというのが最初の思いです(笑)」
尾張ことばついては意外な舞台裏もあったようだ。
「尾張ことばは難しく、トーン、発音がうまくいかない時があるんです。練習していると岡田准一と松本潤が邪魔をしてくるんです。違う発音を僕の耳元で言い、その後、僕が本番に臨むと混乱してしまい、それがOKとなって放送されることもあります。ですから、もし、イントネーションが違うと思ったら、その前に悪い共演者が僕に吹き込んでいることだけは伝えておきたい。それは岡田准一と松本潤です。意地悪です。尾張ことばハラスメントです。でも2人に負けないようにと練習し、やり遂げました」
最後に秀吉をもう1度演じたいと思うか尋ねた。
「もう1度やりたいです。自分自身も『生まれ変わっても自分』と思える人生を歩みたいと思っている人間。もう1回演じたい。もしかしたら違う秀吉になるかもしれませんが」