眞島秀和、“シベリア抑留”経験の祖父から学んだ反戦「国のためにという空気が怖い」

NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(2020年)では、主人公の明智光秀の盟友、細川藤孝役を好演。高校生の娘と体が入れ替わる父親を演じたドラマ『パパとムスメの7日間』(22年)では、コミカルな演技が光った俳優の眞島秀和が今秋、舞台『My Boy Jack』に出演している。第一次世界大戦の時代を舞台に、ノーベル文学賞を受賞したラドヤード・キプリングが残した詩をベースに創作された家族の物語へ出演するにあたっての意気込みと、親族の戦争体験を通じて芽生えたという平和への思いを眞島に聞いた。

出演する舞台『My Boy Jack』への意気込みを語った眞島秀和【写真:ENCOUNT編集部】
出演する舞台『My Boy Jack』への意気込みを語った眞島秀和【写真:ENCOUNT編集部】

東京公演は22日まで 地方公演では「うまい飯屋に足を運びたい」

 NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(2020年)では、主人公の明智光秀の盟友、細川藤孝役を好演。高校生の娘と体が入れ替わる父親を演じたドラマ『パパとムスメの7日間』(22年)では、コミカルな演技が光った俳優の眞島秀和が今秋、舞台『My Boy Jack』に出演している。第一次世界大戦の時代を舞台に、ノーベル文学賞を受賞したラドヤード・キプリングが残した詩をベースに創作された家族の物語へ出演するにあたっての意気込みと、親族の戦争体験を通じて芽生えたという平和への思いを眞島に聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 舞台は「ジャングル・ブック」などで知られるノーベル文学賞受賞作家、ラドヤード・キプリングが、第一次世界大戦中に書いた詩「My Boy Jack」をベースに創作された物語。名優デイヴィッド・ヘイグが戯曲化し、1997年にウェストエンドで上演。英国で2007年にテレビ映画化された際は、戦地に赴く息子を俳優のダニエル・ラドクリフが演じ話題になった。眞島は「健康な体があるなら戦地に行くべし」と声高に理想を語る父・ラドヤードを演じる。

「あらすじをうかがって、台本を読んだ印象は『やりがいがある作品。そしてとても難しいな』でした。共に舞台に立つ役者も妻役の倉科カナさん、息子役に前田旺志郎くん、娘役の夏子さんと僕の家族を中心に、7人しか出演しないのでそれぞれのパートが多い。ボリュームに対応できるよう、頑張らなきゃいけないなと気を引き締めています」

 近視というハンディキャップを持つ息子を、戦地に送り出すためあらゆる人脈を使う厳格なラドヤードについて、どのように感じているのだろう。

「映画を見た印象は『愛国心がある人物』でしたが、相当な堅物ですよね。息子に対する愛情は持っているけれど、家としての名誉を重んじている。この時代を生きた人たちは、現代の僕らよりも密度の濃い人生を生きている。ラドヤードを演じる上で大事な部分なので、稽古でその骨太さを身に付けて舞台に臨みたいです」

 9月末までテレビ朝日系ドラマ『ハレーションラブ』に大学の特別講師役で出演するなど依頼が絶えないが、舞台という場所をどのようにとらえているのか。

「映画やドラマと違って挑戦の場と考えています。僕は元々、演劇の研究所出身なので、舞台は目指すべき場所という思いですね。オファーをいただかないと成り立たないのが役者という職業。経験を重ね、成長していく上で欠かすことができない大切な場所です」

 日本は今夏、戦後76年目を迎えたが、親族などから戦争体験について聞いたことはあったのだろうか。

「僕の母方の祖父が、シベリアに抑留されていたと聞きました。終戦前、満州にいた家族は大変な思いをしたと……。僕自身は戦争を経験したことはありませんが、過去の歴史などを学んで思うのは『戦争なんてなければいい』ということ。でもウクライナとロシアの交戦など、世界に目を向けると争いが起き続けている……。役としては、愛する息子を国のため、家の名誉のために戦地に送ることを『よし』とする、その空気が出来上がっていることを『怖い』と感じました」

 息子役の前田とは、日本テレビ系ドラマ『Dr.チョコレート』以来の共演だ。

「ドラマの現場で撮影の様子を見ていたときは、元々芸人さん(兄とお笑いコンビ『まえだまえだ』として活躍)ということもあり、フットワークが軽く、表情が多彩という印象でした。ほぼ絡みがなかったので、この舞台でご一緒するのが楽しみです」

 難しいテーマを扱う中で、3度目の共演となる倉科の存在は「心強い」と笑う。

「大変な作品に挑みますが、倉科さんが奥さん役と聞き不安が吹っ飛びました。プライベートでも親しくしている友人。正面で組むのは初めてですが、友人としての気安さをプラスに生かしたいですね。今作は地方公演もあるので、スケジュールを見て地元ならではのうまい飯屋に足を運びたいです」

 舞台『My Boy Jack』は10月22日まで、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演中。以降、福岡・兵庫・愛知を巡演する。

□眞島秀和(ましま・ひでかず) 1976年11月13日、山形県米沢市出身。映画『青~chong~』(李相日監督)で99年にデビュー。ドラマ『おっさんずラブ』(2018年)、ドラマ『居酒屋新幹線』(21年)、映画『破戒』、『ある男』(共に22年公開)など話題作に多数出演している。

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