釣りで人気の魚に“怪現象” 「これはなんだろうね」SNS困惑…謎解明を目指すのは大学生
生物・環境の研究をしている学生が、海の魚に関する妙なことに気付いた。釣りの対象や食用として人気の「ウマヅラハギ」の体の一部が、腫瘍のような黒いもので覆われてしまうという現象だ。一部で釣果が報告。原因不明だが、魚特有の病気の可能性もあるという。SNSで情報提供を呼びかけ、謎の解明を目指している投稿者に聞いた。
学術的な関心から調査開始 「ネガティブキャンペーンをしているわけではありません」
生物・環境の研究をしている学生が、海の魚に関する妙なことに気付いた。釣りの対象や食用として人気の「ウマヅラハギ」の体の一部が、腫瘍のような黒いもので覆われてしまうという現象だ。一部で釣果が報告。原因不明だが、魚特有の病気の可能性もあるという。SNSで情報提供を呼びかけ、謎の解明を目指している投稿者に聞いた。
釣り上げられたウマヅラハギ。下あご部分が不気味に黒く変色しており、ただれているようにも見える。
「近年このような黒い変な物体のついたウマヅラハギが釣れており、全国的なものなのか、局所的なものなのか調べたいと思っています。釣ったことがある方、時期と大体どのあたりか教えていただけると嬉しいです」。
今年6月初旬に、実物の写真を添えたXへの投稿を通して情報収集を始めたのは、広島大生物生産学部の在学生のめばる(@Mebaruhitosuzi)さんだ。
小学生のときから釣りが大好きで、魚や環境の保護に取り組むことを志し、同大で勉学に励んでいる。
黒く変色したウマヅラハギが釣れたのは、広島湾。「時期は2020年秋から、現在にかけて釣れ続けています」という。
投稿は反響を呼んだ。同じように変色した個体を釣ったという釣り人や水産関係者からの報告に加えて、「他の魚では見たことないのに、なぜウマヅラハギに現れるのか 不思議ですね」「これはなんだろうね」「初めて見ました」「石鯛にもついてました!」などのコメントが。また、「原因はやはり分かりませんが、卸しても身質には問題があるように思えないので、普通に頂いております」との書き込みも寄せられている。
最新の状況を報告 魚特有の病気の可能性が浮上
約4か月がたち、今月に入ってめばるさんは最新の状況について投稿した。
「少し進展がありましたので報告します。現在大学の先生方に協力いただき、自分の知らなかった論文に出会うことができました。やはり、先生も腫瘍なのではないかな? と、おっしゃっておられました。ニジマスなどの魚に見られる腫瘍と酷似しているとのことでした。また、『魚病学』と呼ばれる分野になるようで、他の先生にも当たってくださるとのことでした。現在わかったことはここまでです」
めばるさんはENCOUNTの取材に対して、魚の感染症「リンホシスチス病」の可能性を示した。
「この腫瘍のようなものには2種類あるように考えています。今のところは“リンホシスチス菌”が関与しているのではないかと考えていますが、まだ明確なことは分かっておらず、今後、顕微鏡や科学的手法により、調べを進めていく予定です」と話す。
黒い塊は不気味ではあるが、原因が定かではない現状で、科学的な根拠に基づかない思い込みの解釈をしてしまうのは禁物だ。それに、風評被害があってはならない。
めばるさん自身、学術的な興味関心から取り組んでいるといい、「ネガティブキャンペーンをしているわけではありませんし、すべてのウマヅラハギがこのようなわけではないことはご承知ください」と強調。大学の先生たちのサポートを得ながらさらなる調査を続けていくとしている。