拍手は「恥ずべき行為だった」 異様だったジャニーズ会見現場で覚えた違和感と反省【記者コラム】

ジャニーズ事務所2回目の記者会見から6日。まだ、騒動が収まらない。指名NG記者、指名候補記者が設定されていた衝撃の事実が判明し、事務所、会見を運営したコンサルティング会社が釈明。会見で設定された「1社1問」ルール、挙手しないで質問をし、当てられなくて声を荒げる記者、それにヤジを飛ばす記者がいたこと、騒ぎを収めようとした井ノ原快彦の発言後、報道陣から拍手が起こったことも議論の対象になっている。私は現場にいた1人として「個人の考え」を示すことにした。批判を覚悟して。

ジャニーズ事務所2回目の記者会見の様子【写真:山口比佐夫】
ジャニーズ事務所2回目の記者会見の様子【写真:山口比佐夫】

現場にいた記者個人としての考え、指名NG記者リストと白波瀬氏に思うこと

 ジャニーズ事務所2回目の記者会見から6日。まだ、騒動が収まらない。指名NG記者、指名候補記者が設定されていた衝撃の事実が判明し、事務所、会見を運営したコンサルティング会社が釈明。会見で設定された「1社1問」ルール、挙手しないで質問をし、当てられなくて声を荒げる記者、それにヤジを飛ばす記者がいたこと、騒ぎを収めようとした井ノ原快彦の発言後、報道陣から拍手が起こったことも議論の対象になっている。私は現場にいた1人として「個人の考え」を示すことにした。批判を覚悟して。(文責=柳田通斉)

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 会見から2日後の今月4日。NHKのスクープによって、指名NG記者、指名候補記者のリストが存在していたことが判明し、会見を運営したFTIコンサルティングが独断で作成したことを認めた。ジャニーズ事務所はリスト作成に関与せず、NG記者リストを見た井ノ原が「絶対に当てなきゃダメ」と伝えたことなどを表明した。

 納得のいかない両者の釈明だった。ジャニーズ事務所には「NG媒体」を作ってきた歴史があるからだ。テレビ局、映画会社、舞台主催者はその意向に従い、該当の媒体を制作会見取材などから排除してきた。その手法をジャニー喜多川元社長の性加害問題を謝罪し、解体的出直しを誓う場にも持ち込んだのか……そんな疑念はどうしても拭えない。FTIの「独断」が事実だったとしても、それほどの「忖度(そんたく)」をさせたのは事務所側の責任。結果、事務所のイメージはさらに悪くなり、所属タレントにも迷惑を掛けている。

 会見が始まる約15分前、FTI側から会見は「1社1問」とするルールが伝えられた。9月7日の会見は時間無制限だったが、今回は取材案内リリースの時点で「2時間で終了予定」と記されていた。だが、約300人の報道陣はこれに異を唱えることなく、会見は始まった。私は正直、「この制限は厳しい」と感じたが、前回会見も1人が1度の機会で複数の質問をして許容される場面が多くあり、事実上は「1社1機会」と解釈して受け入れてしまった。

 私はパソコンのキーボードをたたきながら手を挙げていたが、一向に当てられなかった。同様の記者も多くいた。予想通り、当てられた1機会で複数の質問をする記者もいた。だが、会見が中盤になると挙手せずに質問する記者が出始めた。登壇していた東山紀之、井ノ原もそれに答える場面もあった。しかし、その記者たちは手を挙げて「なぜ、当てないのですか」「茶番だ」などと司会の元NHK松本和也アナウンサーに詰め寄ったが、井ノ原が「すいません。僕も質問されているところを見たので」とけん制する場面もあった。それでも、挙手せずに質問、「ちゃんと、当ててください」の要求が繰り返された。そして、後方や左側から「ルールを守れ」「順番を回して」「司会はしっかりしろ」などのヤジが飛ぶ事態になった。

 その度に会見はストップし、貴重な時間が費やされた。終盤になっても同じ状況が続き、井ノ原が「この会見は子どもたちも見ている。(性加害)被害者の皆さんには、自分たちのことでこんなにもめているんだと思ってほしくない。ルールを守る大人たちの姿を見せたい。どうか、どうかお願いします」と懇願。瞬間、記者たちの発言が止まり、会場の空気が変わった。報道陣からは拍手が起きた。私は「これで止まっていた会見が進む。同じようにいら立っていた記者たちからの拍手だ」と思い、自分も無意識に手をたたいていた。今、冷静になると軽率で恥ずべき行為だった。

 私は性加害問題を看過してきた責任で代表取締役副社長を辞任した白波瀬傑氏について、東山に質問しようと思っていた。「白波瀬氏は退任後も勤務し、事務所にさまざまな影響を及ぼしている」との情報をつかんでいたからだ。そして、「どういう立場で何をしているのか。在職しているのなら、なぜ、この会見に出てこないのか」と聞く準備をしていた。

 だが、私は最後まで指名されることなく、会見は終了した。そして、自分のXに「聞きたかったことはこの後、事務所に問い合わせます。それにしても、行儀の悪い記者には辟易」などと投稿した。だが、この会見自体が仕組まれたものだと分かり、投稿の表現も「自分勝手で適切ではなかった」と反省してそれを削除した。

 会見を見ていた方々からは、たくさんの共感と批判をいただいた。ただ、理不尽でもいったん受け入れたルールは守るべきと思ったのも事実。会見後、さまざまなメディアが「1社1問のルールがおかしい」と報じているが、それは後出しの言い分に感じてならない。

 そうした状況も含めて、今回の会見はジャニーズ側が社名変更、新会社の設立、被害者補償を11月から始めると発表したこと以外は意味をなさなかったように思う。白波瀬氏の立場については、事務所に問い合わせ、「嘱託社員で主な業務は広報、メディア対応の引き継ぎ。被害申告者の在籍確認にも協力している」との回答を得て記事にした。だが、取材を進めていく中で白波瀬氏に会見の意志が全くないことを確認した。

 未確認なのは、指名NGリスト、指名候補リストの作成に白波瀬氏が関与したか否かの問題。同事務所の事情をよく知る人物は、「いかにも白波瀬さんのやりそうなこと」と指摘している。決めつけることはしないが、記者会見でない場でも取材はできる。この件も含めて粘り強く真相を追及していきたい。

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