【どうする家康】松本まりか瀬名介錯の舞台裏明かす 台本にない土下座とひれ伏した理由
俳優・松本まりかが8日、服部半蔵の良きパートナーで忍者集団を束ねる大鼠を演じたNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)について、クランクアップした心境や半蔵を演じる山田孝之とのバディーの感想などをコメントした。
服部半蔵の良きパートナーで忍者集団を束ねる大鼠を熱演
俳優・松本まりかが8日、服部半蔵の良きパートナーで忍者集団を束ねる大鼠を演じたNHKの大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)について、クランクアップした心境や半蔵を演じる山田孝之とのバディーの感想などをコメントした。
まずは、クランクアップした気持ちから。
「実は、『明日クランクアップです』と前夜に突然言われたんです。いまだに実感が湧きません(笑)。オリジナルキャラクターとして、作品の大事なシーンに立ち合わせてもいただき、役者さんたちのすごさをまざまざと体感できる有意義な時間を過ごせました。1年間同じ役を演じるということもなかなかないですし、やっぱりもっと居たかったですね(笑)」
大鼠を演じる難しさもコメント。
「誰もが知る徳川家康を題材にした作品で、歴史的に有名な人物が沢山出てくる中、大鼠は数少ないオリジナルキャラクターの一人。“遊べる”役であり、正解がなく想像力を求められる役でした。戦続きではりつめた戦国の空気を、少し緩ませる役も担っていると理解しつつ、古沢さんがどういうキャラクターを目指して描かれたのかなというのを、少ない手がかりから辿って考えていくのは、面白くも難しくもあり、とてもやりがいがありました。物語が進んでいくうちに、大事なシーンを締めるコミカルな“大オチ”を半蔵と任される場面が出てくるようになったり、『大鼠ってこんなこと言うんだ』と私も予想していなかったようなセリフも出てきたり。とにかく必死で、毎回シーンがくるたびに『こんな一面もあったの!』と思いながら、食らいついていった感じです」
大鼠をどんな人物としてとらえていたのか。
「きっと大鼠は、普段は農業で自給自足の暮らしをしながら、密かに忍びとしての技術を磨いている人。身よりもなく、きっと家もなくて、今日食べるものがあるかどうか、生きるか死ぬかの生活をしている。この作品の中では、戦国時代当時の一般庶民の代表のような人でもあり、とても貧しい暮らしだったと思います。最初はまず大鼠がどういう生い立ちだったのかというのを教えていただいたり、自分でも考えながら。特にはじめの頃は、どんな環境で生きていたのかを想像する作業をしていました。一般庶民の大鼠が、殿(家康)や家臣団の中にぽんと入るわけなので、どう居たらいいかなとか。時々突発的に出てくる役でしたし、その間描かれていないところを、殿に対してどういう緊張感でいたらいいのかとか、どう思っているのかとか。他の家臣団メンバーとは立場が違うので、一つひとつの佇まいや反応に試行錯誤しました」
服部半蔵を演じる山田孝之とのバディーにも言及した。
「23年前、中学生の頃出会っているというのもありますが、何より人としての信頼感は絶大なるものがあります。でも沢山共演してきたわけではないですし、こんなに長期間、しかもバディという役どころで組むのは初めてでした。一緒にやってみると、やはり凄いなと思います。芝居をする中で、彼の感性、感覚、面白さ、ユニークさ、発想には、静かに刺激を受けていました。半蔵と大鼠は似ている部分もあれば、ボケとツッコミ、凸と凹のような相反する面もあるので、山田孝之という人が演じる半蔵に対して、大鼠はどういうスタンスでいたら面白いか…というのを考えながらやっていました」
「『どうする家康』の世界が私は大好き」
半蔵とのシーンで印象に残っているのはどんな場面か。
「特に印象に残っているのは、第6回(続・瀬名奪還作戦)、半蔵が『服部党はあらためて殿のお抱えとなった』と服部党に言いに来るけど、皆半蔵の話は全く聞かずおにぎりに夢中になっているというシーン。クランクインの日に撮影した記憶があります。監督が近付いてきて、こそっと『アドリブを入れて』『半蔵のお尻を叩いてみて』と(笑)。本人には内緒で、タイミングをはかって本番でバーンとお尻を叩いてみたのですが、さすが、半蔵として凄く面白く返してくれました。突然だったのでびっくりしたとは思いますが、その後、本人には特に『怒った?』とも聞いてないです(笑)。撮影初日ということもあり、大鼠をこれからどうつくっていこうかと悩んでいましたが、あのシーンで皆さんが2人の関係の面白さを見つけてくださった感じがします。半蔵と大鼠の関係性は、あそこから広がっていったんじゃないでしょうか」
大鼠にとって半蔵はどんな存在だと思うか。
「甘い言葉も言わないし顔には出さないけれど、身寄りの無い大鼠にとって半蔵は唯一、公私ともに心を許せる人になっていったのかなと思います。最初は義務感もあったかもしれませんが、半蔵と一緒に命がけで戦って任務をこなしていく中で、半蔵ができないところは自分が補完しなきゃと思える良い関係に変化していったのかなと。38回は久しぶりの忍び任務でした。嫌々だけど、“嫌よ嫌よも好きのうち”というか…半蔵がそこまで言うならやってやるというスタンスだけど、でも実は、大鼠にとってもうれしいことだったのかなと思います」
特に印象に残っているのはどんなシーンだろう。
「やはり第25回で瀬名を介錯するシーンですかね。反響も想像以上に大きく、とても心に残っています。瀬名の最期を描く大事なシーン。大鼠は瀬名とほぼ会ったことすらなかったので、初めて台本を読んで大鼠が介錯すると知った時は驚きました。半蔵が信康を、大鼠が瀬名を介錯しましたが、私たち忍びがなぜやるのか。その意味を見つけることが重要だと感じました。この2人に大事な役目を預けた古沢さんの意図が絶対にあるはずで、それをキャッチできないと演じられないですし、あの素晴らしい台本を自分が壊すようなことはしたくないなと思いながら、悩みました。殿と瀬名が積み上げてきた歴史もみていないのに、あの場にいていいのか、どういう心情でいたらいいのか。でも、かといって、感情的になるのも違うし…と。でも自分なりに意図を読み取れた時、脚本の素晴らしさをあらためて感じたんです。殿と瀬名をずっとそばで見てきた家臣団は、とてもじゃないけど瀬名の介錯なんてできない。逆に適度な距離感をもった半蔵と大鼠だからこそ、最期を見届けられるんじゃないかと」
現場はどんな雰囲気だったのか。
「あの日の撮影は、25回まで積み上げてきた殿と瀬名と家臣団とスタッフさんたちの思いをすごく強く感じて、いつも以上に熱い空気が流れていました。瀬名が振り返って『介錯を頼む』と言った時に初めて目が合ったのですが、その目を見た時、もう一度彼女の顔を見て確かめたくなりました。それで、再度顔を覗く動きが生まれて…。瀬名の表情、目から、本気なんだと確信することができて介錯する覚悟ができたというか。あの瀬名の目がなければ私はしゃがんでもう一度目を見に行くこともなかったですし、介錯できる気持ちにはならなかった。そこまでの瀬名や殿や家臣団のお芝居があったからこそ、たまらなくなって土下座に至ったんだと思います。土下座も台本にはありませんでしたが、介錯した後、そのままその場に居続けることはどうしてもできなくて、思わずひれ伏しました。皆さんの芝居に動かされていったシーンでした」
最後に視聴者へのメッセージも。
「大鼠というオリジナルキャラクターを皆さんがそれぞれに解釈して楽しんでくれたり、たくさんの反響や感想が私の支えになっていました。大鼠が、いいスパイスになれていたらうれしいです。これまで自分が演じてきた役とは全然違うキャラクターで、非常に悩んだ役でしたけれど、この一年間、キャスト・スタッフの皆さんと過ごした時間というのは、本当にありがたくて、貴重な時間でした。あらためて、本当にありがとうございました。史実からさらに想像をふくらませた『どうする家康』の世界が私は大好きです。物語はこれからまだ10回続きますので、ぜひ引き続き楽しんでいただけたらうれしいなと思っております」