棚橋弘至、WWEイヨ・スカイら男女60人の衣装手がける“カリスマ”デザイナーの熱き想い
ガッツダイナマイトキャバレーズのAKI代表が、プロレスラーのコスチュームを手掛ける熱い想いを告白した。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.165】
ガッツダイナマイトキャバレーズのAKI代表が、プロレスラーのコスチュームを手掛ける熱い想いを告白した。
リングを華麗に彩るコスチュームの数々。華やかに輝き、レスラーの個性が際立つ。コスチュームでイメージが左右されることも多々あり、人気にも影響する。となれば、慎重に、でも大胆に斬新に、細部にまでこだわり、レスラーの希望を具現化する。
新日本プロレスのエース・棚橋弘至、米WWE女子王者イヨ・スカイら男女レスラー60人ほどのコスチューム、ガウンをデザインしている。「初代タイガーマスク選手からのプロレスファン。(1995年)10・9(東京ドーム)の高田延彦戦の武藤敬司選手にも魅了された。大好きなプロレスに関われて最高」と目を輝かせる。
ファッション関係の仕事のつながりから「レスラーのコスチュームをやってみないか」とオファーを受け快諾。プロレス界の頂点に立っていた棚橋弘至、凱旋(がいせん)帰国したオカダ・カズチカ、G1クライマックスを制覇して人気急上昇中の内藤哲也など、新日本プロレスのトップ選手がAKI氏の作品を身にまとった。
「オカダ選手は髪型から私服などにもアイデアを出した。本人始めスタッフの人たちとミーティングを重ねたけど、今思い出してもワクワクしてくる」と笑みが止まらない。現在、オカダは担当していないが、棚橋らに1年に3着ほど、新作を送り出している。
ノアの清宮海斗もAKI仕様。「彼はとにかく派手で弾けるモノが希望だった。二つ提示したら、きらびやかな方を選んだ」と振り返る。小川良成にむしられた両肩の「緑の羽」は清宮本人の要望だという。
GHCヘビー級王者ジェイク・リーの変身プランも近々スタートするほか、「アイアムノア」潮崎豪、「革命トラベラー」小峠篤司、欧州遠征に旅立った稲村愛輝らノア勢も担当している。
DDT、GLEATなどの多くの団体の男子選手約30人に加え、女子選手も30人ほどの依頼を受けている。スターダムのワールド・オブ・スターダム王者・中野たむ、ジュリア、林下詩美、AZMら10数人、多くの団体選手、そして尾崎魔弓、高橋奈七永らベテラン勢などだ。
レスラーのコスチュームならではの配慮がある。男子選手は破れないことが最優先。選手の様々な要望にはできるだけ応じているが、ファイト中の破損は許されない。
女子選手は意外にも「洗濯しても白くならないこと」だという。女子は毎日の洗濯にも色落ちしないモノが必須で「一度に3パターン、1年に3回、新たに作るのが基本」と男子よりも大変かもしれない。
昭和の時代、女子選手は水着を着てリングに上がった。「水着は夏しか売ってないから、夏場にまとめ買いした。あまり色やデザインも多くなくて、着たいものがなかった。まして普通の女の子より体格が良いので、大きいサイズとなると本当に限られていた」と当時の選手は振り返る。「今はカラフルできれいで素敵ですね。みんな、自分の好きな色やデザインでイキイキしていますね」とちょっぴり、うらやましそうだ。
レスラーとしてリングに上がった経験も
そんな華麗なコスチュームを生み出すAKI氏だが「僕はデザインだけ。製作する職人さんが足りない。注文に追いつかないのが現状。せっかくお話をもらっても断ることも多い」と残念そう。コスチューム職人を募集中だという。
180センチを超える身長で、実はレスラーとしてリングに上がったこともある。征矢学、勝俣瞬馬と組んで6人タッグマッチに出陣。東京・新宿FACEのリングに立った。貴重な経験だったようだが、どうやら次は考えていないようだ。
大企業の制服、ロゴマークなどもデザインしているが、プロレスの仕事を大切にしている。「他よりも思い入れが強いから早く進む。しかも何度も寝かせて、納得できるまで手を入れる。いくつかパターンを作って選んでもらっている」と楽しげだ。
レスラーの体型は一般人とは違う。筋肉量が多く、筋肉は丸い。「丸く見えないように、トンガリを入れる。会場、テレビ、写真で見え方も違うので、どのような見方でもちゃんと見ていただけるように工夫している」と熱い。
プロレスラーを支え、プロレスを愛するAKI氏。「100年に1人のプロレスコスチュームデザイナー」を目指す。「忙しいけどやりがいがある」と充実した笑顔。プロレスに貢献する大切な人がここにもいた。