「次に変わるべきはメディア側」…ジャニーズにコントロールされてきたキャスティング問題

 ジャニーズ事務所が2日、故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡る2回目の会見を都内で行った。ENCOUNTからも記者2人とカメラマンが参加した。約300人を前に、登壇した東山紀之社長とジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦らは、10月17日から社名をSMILE-UP.に変更すること、新たなマネジメント会社設立、退所者を積極的に応援していく姿勢などを示した。社名継続を表明した9月7日の第1回会見を反省する言葉もあり、「今度こそ本気で変わる」という意志を感じさせた。次は、事務所と向き合うメディア側がどう変化していくのかだ。

故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡る2回目の会見が行われた【写真:山口比佐夫】
故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡る2回目の会見が行われた【写真:山口比佐夫】

「反省と変える強い意志」を感じた2時間7分の後に思ったこと

 ジャニーズ事務所が2日、故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡る2回目の会見を都内で行った。ENCOUNTからも記者2人とカメラマンが参加した。約300人を前に、登壇した東山紀之社長とジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦らは、10月17日から社名をSMILE-UP.に変更すること、新たなマネジメント会社設立、退所者を積極的に応援していく姿勢などを示した。社名継続を表明した9月7日の第1回会見を反省する言葉もあり、「今度こそ本気で変わる」という意志を感じさせた。次は事務所と向き合うメディア側がどう変化していくのか。会見で一部記者が見せた「ルール違反」の態度も含め、メディア側にも「反省」が求められている。(取材・文=ENCOUNT編集長 柳田通斉)

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 2時間7分。東山と井ノ原の口からは何度も反省の言葉が出た。第1回会見で社名継続を明言しながら、報道陣から「被害者のことを考えていない」などと追及されたことを踏まえ、「内向きな体制でした」と言い切った。

 ENCOUNTの取材では、6月にジャニーズ事務所の社名変更は内定して新社名も一本化されていた。当時社長の藤島ジュリー景子氏も賛成していたという。だが、8月に入ってタレント側から「ジャニーズの名前は残したい」の声が高まり、新社長に内定していた東山も賛同。「ジャニーズというのは創業者の名前であり、初代のグループの名前でもありますが、これまでタレントさんが培ってきたプライドでもありますので、その表現は1つあってもいいと思います」と言うに至った。

 だが、約1か月の時を経てその方針を変えた。新たなエージェント会社の設立も、スポンサーを含めた外部からの提案を受けてのことだ。会見では「なぜ、最初の会見で示せなかったのか」の指摘もあったが、反省して変えられる意欲と力を感じさせた。そして、東山が質問に答える形で「退所しても遠ざけることはないです」「皆さんが見たくなるような化学反応もあるかもしれません」と話したことも意義深かった。

 瞬間、今年7月からジャニーズ事務所の退所者が加入しているTOBE所属のタレントとの共演をイメージした人も多かったと思う。現段階で計12人。その数は増えていくと思われるが、12人に関しては、TOBE加入後にテレビ出演が1度もない。

会見には東山紀之(右)や井ノ原快彦らが出席した【写真:山口比佐夫】
会見には東山紀之(右)や井ノ原快彦らが出席した【写真:山口比佐夫】

 取材をしていくと、テレビ局側がいまだにジャニーズ側に遠慮、忖度があるように感じる。藤島氏の母親である故メリー喜多川氏が「裏切者は絶対に許さない」の考えで、退所者を使おうとしたメディア側に圧力をかけた歴史があるからだ。井ノ原も前回の会見で「昔、メリーさんにこう言われたから」と話して、それを守ろうとするメディア側スタッフがいることを証言している。その流れがあって、「ジャニーズ退所者はすぐには使いづらい」「ジャニーズの現役とはなかなか共演させられない」の意識が浸透しているのが現実だ。

 背景には「視聴率第一主義」がある。ジャニーズのタレントを使うことこそ数字につながってきた歴史があり、人気者を多く抱える大手事務所の意向に従うことこそが大事と考えるテレビマンも多くいる。結果、事務所側の発言権は大きくなり、キャスティングの段階で「共演NGタレント」を示し、制作会見などでも主要キャストの事務所の意向で「NG媒体」を排除している。

 つまり、テレビ局側が大手事務所側を向いてきたからこそ、ジャニー氏の性加害問題も看過されてきた。その疑いは否定できないだろう。元スポーツ紙芸能デスクの私自身、ジャニーズにはすさまじい数のファンがいることを意識しながら紙面作りをしていた。「これを大きく扱えば売れる」という考えだ。そのために事務所側とさまざまなの駆け引きがあった。それも否めない。

 だが、そうした事務所側とメディア側のいびつな関係はもう終わりすべき。その考えは、今回の会見でさらに強くなった。キャスティングする側は、事務所のパワーや政治力で判断するのではなく、無名でも事務所が小さくても、視聴者の心を動かす人を使うべきではないか。実際、TBS系連続ドラマ『VIVANT』では、それを感じさせる起用もあった。本来、テレビ局が本気を出せばできること。令和の今、変革のチャンスが来ている。

 活字媒体も変化が求められている。今回の会見では挙手せずに質問をし、さえぎられて声を荒げた記者が複数人いた。これは昭和から続いてきた一部新聞記者のスタイル。これで問題追及をしてきた歴史はあるものの、井ノ原は「この会見は子供たちも見ている。(性加害)被害者の皆さんには、自分たちのことでこんなにもめているんだと思ってほしくない。ルールを守る大人たちの姿を見せたい。どうか、どうかお願いします」と懇願。直後、報道陣から大きな拍手が起こった。

 私自身も無意識に拍手をしていた。視聴者から一括りに「メディアは偉そうだ」と思われたくなったし、「そんなルール無視、配慮なしの昭和スタイルはもう止めにしてほしい。井ノ原氏の発言でヤジも飛び交っていた空気が変わり、止まっていた質疑が進む」と思ったからだ。挙手を続けても指名されず、質問できなかったことは個人的に残念。だが、聞きたかったことは事務所に問い合わせていけばいい。全てのメディアがそうすべきとは言わないが、ENCOUNTはそのスタイルでやっていきたい。令和に生まれた新たな媒体として。

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