夢か現実か…『ウルトラセブン』で実現した特殊演出の数々 実相寺昭雄監督の世界観

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や映画『シン・仮面ライダー』の庵野秀明監督が師と仰ぐのが、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の実相寺昭雄監督。また、2023年秋に『ウルトラセブン』55周年コンセプトムービー『ウルトラセブン IF Story「55年前の未来」』が公開される予定で、大きな節目を迎えている。本記事では『ウルトラセブン』の中から、実相寺氏が監督を務めたストーリー3本を紹介する。

『ウルトラセブン』で実相寺氏が監督を務めたストーリー3本を紹介【写真:ENCOUNT編集部】
『ウルトラセブン』で実相寺氏が監督を務めたストーリー3本を紹介【写真:ENCOUNT編集部】

受け継がれている独特の世界観

 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や映画『シン・仮面ライダー』の庵野秀明監督が師と仰ぐのが、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の実相寺昭雄監督。また、2023年秋に『ウルトラセブン』55周年コンセプトムービー『ウルトラセブン IF Story「55年前の未来」』が公開される予定で、大きな節目を迎えている。本記事では『ウルトラセブン』の中から、実相寺氏が監督を務めたストーリー3本を紹介する。

 1本目は第8話「狙われた街」。ある日、北川町でタクシーの暴走事件が発生し、時を同じくしてウルトラ警備隊のアンヌ隊員の叔父が操縦する旅客機が墜落する。

 ほかにも列車衝突事故、タンカー爆破、ライフル魔が起こり、そのすべてが北川町の住人が関連していた。ウルトラ警備隊による調査の結果、北川町で販売されていたタバコが原因だと判明。タバコを補充しに来たワゴン車を追跡した主人公のモロボシ・ダンは、たどり着いた川崎のアパートでメトロン星人と対峙(たいじ)する。

 この話の中で実相寺監督は極端に落とした照明を活用したり、ほかでは見られないカメラアングルを取ったり、「実相寺アングル」と呼ばれる独特の撮影方法を採用する。特にアパートでダンとメトロン星人がちゃぶ台を挟んで向かい合うシーンは多くの反響を呼び、SNS上でも「ちゃぶ台を囲むシーンがシュールで実相寺監督の魅力でした」「ちゃぶ台のシーンは特撮の名作中の名作」などの声があがっていた。

 また、第43話「第四惑星の悪夢」も印象的な話だ。宇宙ロケット「スコーピオン号」の試験飛行に搭乗したウルトラ警備隊のダンとソガは、20日間の睡眠状態を経て、ロボットが住民を支配する「第四惑星」にたどり着く。第四惑星は、地球を植民地にして地球人をエネルギー源にすることを計画していた。第四惑星の地球侵略部隊が出撃すると、ダンはウルトラセブンに変身し、周辺の主要建造物や侵略部隊を殲滅するのだった。

 43話ではウルトラセブンと戦う怪獣が登場しない。にもかかわらず印象的な話になっているのは、落とし気味の照明で撮影された作戦室に代表される「実相寺アングル」を始め、実相寺監督による独特な演出の賜物だろう。

 第45話「円盤が来た」でも実相寺氏が監督を務めている。下町の工場街に住む青年・フクシンは、ある日の深夜、星空の中に編隊を組む何十機もの円盤を見つける。防衛軍に通報するも、異常は観測されなかった。実は、不透視バリヤーという特殊なシステムを使ってぺロリンガ星人が母星からの大円盤群を隠していたのだ。

 45話はウルトラ警備隊やウルトラセブンではなく、フクシン青年という一市民の生き様を中心に物語が進む。『ウルトラセブン』の主人公はウルトラ警備隊のダンだが、この作品ではまるでフクシン青年が主人公のようだ。ウルトラセブンを脇役に追いやった珍しいストーリーといえる。

『ウルトラセブン』の放送時間は約25分。今回紹介した作品を見ると、実相寺監督がこの短時間に施した工夫に驚きを感じる。本作品を見たうえで庵野監督の作品を見れば、受け継がれている独特の世界観に気づけるかもしれない。

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