リビングレジェンド・藤波辰爾の最後の使命 ドラゴンスタジアムがついに発進
リビングレジェンド・藤波辰爾のプロレス界への恩返し構想が、いよいよ発進する。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.164】
リビングレジェンド・藤波辰爾のプロレス界への恩返し構想が、いよいよ発進する。
「ドラディション」旗揚げ15周年記念ツアーとして8チームが参加するタッグトーナメント「レック presents DRAGON CAP 2023」を開催。1回戦(10月29日、大阪・ATCホール)、準決勝&決勝(11月17日、東京・後楽園ホール)で争われる。
藤波は第1回ドラゴンスタジアム優勝選手とコンビを結成し出場する。若手選手が団体の枠を超えて覇を競うドラゴンスタジアムは、猪木さんら先人たちが築き上げた「プロレス」を伝承していくために、藤波が戦いの場を提供するもの。戦いの様子は藤波の公式YouTubeチャンネルで10月に配信される予定だ。
当初は立会人を考えていた藤波だが「私自身もリングに上がり、背中で想いを伝えていく」とDRAGON CAP 2023出陣を決意。ドラゴンスタジアムを勝ち抜いた若手選手とともに、自らが思い描く「プロレス」をするというわけだ。
参加8チームは、普段は見られないスペシャルなチームが揃った。対戦チームとのバトルはもちろん、タッグパートナー同士が競い合うことで、チーム力は上がる。タッグチームは1+1が2ではなく5にも10にもなる。まさにプロレスの醍醐味だ。
「若手からベテランまで共に競い合ってほしい」と力説する藤波。経験と刺激を与え合い、まだまだ進化を遂げてほしいという藤波の狙いは明確だ。
実際に、興味深いコンビがエントリーされた。藤波とXはもちろん楽しみだが、全日本プロレスの「暴れん坊専務」諏訪魔とドラディションのベテラン、長井満也とタッグを結成する。暴走ファイトを看板とする諏訪魔とドラディションの番頭格・長井。どんな化学反応が生じるか、想像もつかない。
船木誠勝、LEONA組もたまらない。新日本プロレスからUWF、パンクラスで活躍し、格闘技イベントを経て、今やノアなど多くの団体で存在感を示しているベテラン・船木。円熟期に達しても、そのコンディションは全盛期と変わらない。藤波の息子、LEONAにどんなゲキを飛ばすのか。タッチワークも見逃せない。
藤原喜明と冨宅飛駈のベテランコンビも、プロレスの魅力を存分に発揮してくれそうだ。
日本マット史に刻まれる名セリフ「お前。平田だろう」が絡むストロングマシーン・J、MAZADA組も目が離せない。藤波がストロングマシーンの正体といわれる平田淳二に投げかけた衝撃の一言。平田の息子と思われるストロングマシーンJの心中やいかに、である。平田の息子であるなら平田姓だろう。もしも藤波に同じ指摘をされたら、どのように対処するのだろうか。
越中詩郎とAKIRAのベテランコンビは、昭和のプロレスを披露してくれるはず。懐かしさもある斬新なタッグチームだ。
KENSOとDDTの若武者・樋口和貞とのチームこそ、ドラゴンスタジアムの目指す姿かも知れない。日本そしてWWEと世界を股に掛けたKENSOと、令和のマットで暴れまわる樋口の合体攻撃は見ものだ。
倉島信行と竹村豪氏のドラディションコンビも、藤波の熱い想いを背負っての出陣となる。
この8チームがそろったDRAGON CAP 2023には、藤波の「プロレスを伝えていきたい」という熱い想いがこめられている。思えばドラゴンボンバーズなど理想のプロレスを追求する藤波の野望は、夢の途中で途絶えた感がある。
今回も「各団体の育成法もある。ファイトスタイルも違う。今の選手はアピールを先に覚えてしまっている。イチどころかゼロから教えたいところだけど、なかなかそうもいかない」と、ドラゴンスタジアムの問題点に直面する藤波の正念場でもある。
だが、基礎は大事だ。プロレスという根っこの部分は同じだ。基本がしっかりしていなければ応用も活用もできない。
猪木さんらが大切に守ろうとしていた「プロレス」の伝承という使命感にドラゴン魂を燃やす藤波。マット界に恩返しする最後のミッションかも知れない。実りの秋に自身の集大成を体現し、来年の辰年に向けてさらなる飛躍を誓うリビングレジェンドに注目だ。