阪神&オリックス優勝で“なんば線シリーズ”が話題 甲子園と京セラドームつなぐ鉄道の意外な歴史とは

9月14日、ついに18年ぶりの「アレ」に関西が沸いた。阪神タイガースの18年ぶりセ・リーグ制覇。20日にはパ・リーグでもオリックス・バファローズが3連覇を決め、セ・パ両リーグでの関西球団優勝が実現した。クライマックスシリーズ(CS)を挟んで迎える日本シリーズでは59年ぶりの関西対決の可能性も期待が高まるばかり。ファンの間では、両球団の本拠地をつなぐ鉄道にちなんで“なんば線シリーズ”との呼称も生まれ、大きな盛り上がりを見せている。

近鉄と阪神の列車が阪神なんば線を介して直通する(写真はイメージ)【写真:写真AC】
近鉄と阪神の列車が阪神なんば線を介して直通する(写真はイメージ)【写真:写真AC】

阪神のローカル支線が神戸と奈良をつなぐ動脈に変貌

 9月14日、ついに18年ぶりの「アレ」に関西が沸いた。阪神タイガースの18年ぶりセ・リーグ制覇。20日にはパ・リーグでもオリックス・バファローズが3連覇を決め、セ・パ両リーグでの関西球団優勝が実現した。クライマックスシリーズ(CS)を挟んで迎える日本シリーズでは59年ぶりの関西対決の可能性も期待が高まるばかり。ファンの間では、両球団の本拠地をつなぐ鉄道にちなんで“なんば線シリーズ”との呼称も生まれ、大きな盛り上がりを見せている。(取材・文=大宮高史)

 セ・パともに関西球団が頂点に立った年は、2リーグ発足以来74年の歴史の中でも1964年の阪神と南海ホークスの例しかなく、59年ぶりだ。この阪神・オリックス両球団の本拠地を電車1本で直結しているのが、2009年に開業した阪神なんば線だ。

 なんば線は近鉄の大阪難波駅から、オリックスの本拠地京セラドーム大阪の最寄り駅のドーム前駅を経由しつつ、阪神尼崎駅で阪神本線に接続。なんば線を通じて阪神本線と近鉄奈良線が相互直通運転を行っていて、阪神の神戸三宮方面と近鉄奈良方面が乗り換えなしで移動できるようになった。甲子園球場最寄りの甲子園駅と、京セラドーム最寄りのドーム前駅もこのルートで相互に結ばれていることが“なんば線シリーズ”とも言えるゆえんだ。

 09年に開業したようになんば線の歴史は浅く、それまでの阪神電鉄はミナミへのアクセス路線を持たなかった。なんば線の原型となる計画は終戦直後からあり、尼崎駅から南に分かれて千鳥橋駅まで伸びていた伝法線を難波方面へ延伸する型で路線免許を出願した。

 しかし、1964年に大阪環状線との乗換駅になる西九条駅まで延伸してからは用地取得と工事が遅れ、西大阪線と呼ばれた尼崎~西九条間は長い間支線扱いで、本線を追われた旧型車による普通列車が行き来するだけだった。

 ようやく近鉄の大阪難波駅まで線路がつながったのが2009年3月20日で、この時になんば線と改称、奈良と神戸が1本のレールで結ばれた。とりわけ阪神電鉄にとっては、既存の大阪梅田駅に加えて大阪難波駅へ路線を伸ばすことができ、キタ(梅田)とミナミ(難波)の両都心への自社による乗り入れがかなったことが大きかった。

 開業以来、なんば線の輸送人員は堅調に上昇。阪神電鉄の輸送人員を押し上げ、関西大手私鉄の中で輸送人員の伸び率はトップに。なんば線開業前の2004年に底を打っていた阪神電鉄の年間輸送人員は、19年度には約2億4600万人に達し、04年と比べて約25%増え、コロナ後の22年度も約2億1800万人をキープ。1995年の阪神・淡路大震災で大きな打撃を受けた阪神沿線にとっては大きな起爆剤でもあった。

 大阪南部や奈良と神戸の行き来を飛躍的に便利にしたなんば線だが、近鉄の広い路線網を生かして、長距離の臨時列車の乗り入れが可能な路線でもある。あくまでツアー形式の団体臨時列車であるが、近鉄名古屋線から阪神甲子園駅まで直通する、開通10周年記念の臨時特急や、阪神神戸三宮駅から近鉄京都駅への臨時特急などが運転されてきた。

「沿線外の大阪ドーム」がバファローズ&ブルーウェーブ合併の遠因?

 この「なんば線シリーズ」は、過去に1度実現しかけたことがある。9年前の2014年にレギュラーシーズン2位の阪神がCSファイナルステージで1位の巨人を破り、日本シリーズに進出。パ・リーグではペナントレースでオリックスとソフトバンクが激しい競り合いを繰り広げていたが、ゲーム差なしの勝率2厘差でソフトバンクが制した。2位オリックスは逆転を狙ったCSでも1stステージで敗退したため、日本シリーズでの阪神との対戦はかなわなかった。

 また、現在のオリックス・バファローズは、04年にオリックス・ブルーウェーブと大阪近鉄バファローズの合併で現体制となった経緯がある。事の発端は近鉄球団とバブル崩壊後の近鉄グループの赤字で、そこに大阪ドーム(当時)に支払う球場使用料が毎年約6億円を要して球団経営を圧迫。これも球団合併の遠因になった。

 近鉄沿線の藤井寺市にあった藤井寺球場から1997年に大阪ドームに本拠地を移転したバファローズだが、当時なんば線は未開業で完全に近鉄沿線から外れていた。現在であればなんば線への直通列車のおかげで近鉄沿線からも訪れやすくなった京セラドーム。もし近鉄バファローズ時代に同線が開業していれば、近鉄グループにおける球団の価値も上がり、球団合併とは違う途もあったかもしれない、とも考えさせられる。

 おまけに大阪ドームを管轄した第三セクターの大阪シティドームも累積赤字により近鉄・オリックス合併と同年の04年に経営破綻を来たし、同社もオリックス・グループの傘下で再建が図られている。タイガースという人気面で圧倒的なライバル球団が立ちはだかる関西において、こうして球団経営の「重石」を清算したオリックスは早くから「オリ姫デー」「夏の陣」などのイベントを開催、低迷していた成績も戦力がそろって21年からの3連覇を達成した。

 関西の人の流れを変え、阪神・オリックス両球団の経営にも追い風となったなんば線。開業15年目で両球団による同一年リーグ制覇が実現したが、同線の存在も関西の野球ファンの熱気を支えている。

次のページへ (2/2) 【写真】阪神電車は優勝記念マークを掲出
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