大原櫻子「私っていつも戦闘モード」 デビューから10年、今も続ける過去との“勝負”

大原櫻子は10年前、17歳で映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)のヒロイン役を演じ、同時に歌手の歩みも始めた。2つの舞台でスポットライトを浴びてきた27歳。9月30日に記念イヤー第1弾となるミニアルバム『スポットライト』をリリースした。デビュー10周年の今、大原がこの“通過点”で感じていることを語った。

デビュー10周年を迎えた大原櫻子【写真:舛元清香】
デビュー10周年を迎えた大原櫻子【写真:舛元清香】

デビュー時からの理想「芝居と歌の垣根をなくす」を貫いて手応え

 大原櫻子は10年前、17歳で映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)のヒロイン役を演じ、同時に歌手の歩みも始めた。2つの舞台でスポットライトを浴びてきた27歳。9月30日に記念イヤー第1弾となるミニアルバム『スポットライト』をリリースした。デビュー10周年の今、大原がこの“通過点”で感じていることを語った。(取材・文=福嶋剛)

 大原はデビュー時からの理想「芝居と歌の垣根をなくす」を貫いてきた。「まだ10年なので」と言いながら、10年でつかんだ手応えはある。

「私にとって俳優と歌手は別々ではなくてイコールなんです。ドラマの現場でも監督から急に『ここで歌って!』というリクエストがあったらすぐに歌いますし、演技と歌を切り替えるスイッチをなくすことは、表現者として望んできたことです。なので、今はすごく理想に近付いている感じがしています」

 新作『スポットライト』は、そんな理想形を追い求めて完成させた。

「前作のアルバム『FANFARE』では、楽曲という舞台に立つキャラクターを歌で『どう演じるか』という課題に挑戦しました。『スポットライト』も同様に舞台を作り上げるように1曲1曲を作り上げていきました。ただ、前作と大きく違うのは、『余計なものを1回捨てる』という作業をしたことです。俳優として歌手として、10年間で作り上げてきた歌唱テクニックや魅せる表現をできるだけ削ぎ落しました。色に例えると白に近い形でシンプルに見せたいと考えました」

 1曲目『寂しいの色』、3曲目『どうして』、5曲目『星の日』は、確かにシンプルさに磨きをかけた表現が垣間見られる。

「『寂しいの色』は、大切な人と会えなくなってしまった寂しさや虚しさに対して『歌でどう寄り添うか』を表現しました。今までにないテーマを扱ったドラマチックな曲です。『寂しいの色は綺麗な色』という歌詞がとても気に入っていて、『救われる言葉だな』と思っています。今回、絵師のY_Y(ワイワイ)さんに歌の世界観をリリックビデオで表現していただきました。ぜひ、見てほしいです。『どうして』は1回聴くと歌えてしまうくらいサビが覚えやすくて、切なさ、かわいらしさ、温かさが散りばめられた曲です。この曲も余計なテクニックを使わずに真っすぐに歌うため、気持ちの中では“素っ裸”で歌いました(笑)。『星の日』は、10年前だったら歌えなかった大人っぽい曲です。作詞をしていただいた蒼山幸子さんによる『一瞬で情景が浮かぶ魔法のような言葉』に感動しました。この曲はライブでさらにシンプルに歌いたい1曲です」

 2曲目『Hello My Fave』、4曲目『JUMP』は大原の真骨頂でもあるライブで盛り上がる元気ナンバーだ。

「今回は『ずっと応援してくれるファンのみなさんからいただいた愛情を感謝として届けたい』という思いが強いです。『Hello My Fave』はそんなファンのみなさんをイメージしながら、私自身も好きなアーティストのライブに行く時の高揚感みたいなものを歌詞にしていただきました。『JUMP』は『みんながくれる優しさが 私の太陽♪』という歌詞があって、『私にとっての太陽はファンのみなさんです』という感謝のメッセージが込められています。10月から全国4か所でZeppツアーが始まるので、そこで一緒に『JUMP』するのを楽しみにしています」

「これからは、もっと過去を塗り替えていきたい」【写真:舛元清香】
「これからは、もっと過去を塗り替えていきたい」【写真:舛元清香】

緊張しながら一生懸命歌った人生初めてのライブ

 ファンへの感謝。その「深み」「重み」は10年前とは大きく変わったという。

「人生初めてのライブは、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の撮影で初めて見ず知らずの大勢のお客さんを前に歌ったことです。撮影でしたが、1500人くらいのエキストラさんの前で歌って、とにかく寒い日で緊張しながら一生懸命歌ったことを覚えています。デビューした頃って、『こんなに応援してくださる人がたくさんいるんだ』って、どちらかというと驚きとか圧を感じて怯(ひる)んだりすることもありました。それが、ライブを重ねていくうちに友達みたいな感覚が芽生えて、最近はファンと触れ合う機会も多くなりました。SNSのコメントでも『私の曲で救われた』とか、『この曲があったから頑張れました』とか、そういう感想をいただくと、誰かの励みになっていることが本当にうれしくて。そんなみなさんの愛情が私の励みにもなっているので、今の『ありがとう』は10年前とは深みも重みも全然違うんです」

 今作のリード曲となった6曲目の『bitter sweet cinema』は、これまでにないタイプの個性的な楽曲。大原はとても気に入っている。

「メロディーも歌詞も届いた瞬間に一目惚れでした(笑)。まるで映画のワンシーンのような人生の光と影を映し出してて、『スポットライト』というアルバムタイトルにもぴったりです。10年目を迎えた今の私らしさを詰め込んだ曲です」

 一方で、今作に取り組むにあたり、「過去の自分と対峙(たいじ)しながら成長していく」との強い思いがあったことも明かした。

「私っていつも戦闘モードなんです(笑)。『過去の自分に負けないように良い作品を残したい』という気持ちが強いんです。『スポットライト』は、10周年イヤーのスタートということもあって、今までにない声色だったり、楽曲のテーマを今まで以上に深く掘り下げて表現したいという思いもありました。10年前はホントに歌が好きで、『歌うことが楽しい』って、それだけの思いでした。それが、デビューして届ける側に立ったとき、責任感や重圧を感じるようになりました。だから、楽しさはデビュー前とは変わったのかもしれないけれど、『今の方が楽しい』と感じる瞬間がいっぱいあります。これからは、もっと過去を塗り替えていきたいですし、この先も良い作品を作って誰かの励みになったり、みなさんに寄り添える曲を歌っていきたいです」

 2年前に始めたYouTubeでは、大衆居酒屋でひとり飲みを楽しむ“おじさん的一面”も出している。文字通り、素顔の大原だ。

「普段の私は動画のまんまで、生まれつきオヤジっぽいところがあるんです(笑)。小さい頃からおつまみっぽい食べ物が大好きで、お酒が飲めるようになってからさらにエスカレートしています(笑)。今はすっごく辛いものにハマっています(笑)。でも、YouTubeってオンとオフがなくなるので、逆に素顔に戻すのが実は大変だったりします。そうは言っても、そのまんまの素を出したくてやっているので全然気にしてません(笑)」

□大原櫻子(おおはら・さくらこ)1996年1月10日、東京都生まれ。日本大芸術学部映画学科卒。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国ヒロインオーディションで5000人から抜てき。スクリーン&CD同時デビューを果たす。14年、俳優として日本映画批評家大賞新人賞、歌手として日本レコード大賞新人賞を受賞。15年、全国高校サッカー選手権大会応援歌の『瞳』で、NHK紅白歌合戦に初出場。その後も歌手活動と並行して、数々のテレビ、ドラマ、舞台に出演。

◯Zeppツアー2023『大原櫻子10(点)灯式』
10月3日:Zepp Nagoya
10月5日:Zepp Namba
10月12日:Zepp Haneda
10月14日:Zepp Fukuoka

次のページへ (2/2) 【写真】ピンクの華麗な衣装を披露した大原櫻子
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