「17LIVE」CEOインタビュー 「人気ライバーになるには“一貫性”が必要」 勝負は最初の3か月
「イチナナ」の愛称で親しまれている国内最大級のライブ配信アプリ「17LIVE」。歌やダンス、トーク、ゲーム、バーチャル配信など、ライバー(ライブ配信者)が披露したいこと、話したいことをいつでもどこからでも発信できる台湾発の新感覚エンターテインメントだ。アジア、米国を中心に登録者は5000万を超え、世界規模でライブ配信が楽しめるプラットフォームとなっている。また、「17LIVE」の認証ライバー数はコロナ禍で3.2倍に増加。億円単位の収入を稼ぎ出すライバーもいるという。ENCOUNTは、来日した17LIVE代表取締役兼グループCEOのアレックス・レン氏にインタビュー。今回の『後編』では、トップライバーになるために必要なことなどを聞いた。
リスナーはライバーの物語に関心 リスナーと前進するため新たな物語の創造が大切
「イチナナ」の愛称で親しまれている国内最大級のライブ配信アプリ「17LIVE」。歌やダンス、トーク、ゲーム、バーチャル配信など、ライバー(ライブ配信者)が披露したいこと、話したいことをいつでもどこからでも発信できる台湾発の新感覚エンターテインメントだ。アジア、米国を中心に登録者は5000万を超え、世界規模でライブ配信が楽しめるプラットフォームとなっている。また、「17LIVE」の認証ライバー数はコロナ禍で3.2倍に増加。億円単位の収入を稼ぎ出すライバーもいるという。ENCOUNTは、来日した17LIVE代表取締役兼グループCEOのアレックス・レン氏にインタビュー。今回の『後編』では、トップライバーになるために必要なことなどを聞いた。(取材・文=鄭孝俊)
――トップライバーになるためには何が必要ですか。
「例えば、前編でも紹介した岸田直樹さんというライバーがいます。彼は日本のライブ配信における先駆者ですが、とにかくライブ配信にかける情熱がすごい。命をかけているというぐらいどこでも配信を行っていて、ライブ配信が自身の生活の一部になっています。トップライバーのあるべき姿を彼は体現してくれています。ライブ配信にかける情熱という面ですごく注目しています」
――情熱があればトップライバーになれますか。
「いえ、それだけでは足りません。本当に人気のあるライバーになるために必要なことは“一貫性”です。一貫性を保つためには、毎日継続してライブ配信を行い、リスナーとコミュニケーションをとる方法を学ぶ必要があります。最初の3か月が非常に重要です。リスナとのコミュニケーションの方法、話題の方向性、そして、リスナーの反応を学ぶべきです。ただ、独力ではなかなか難しいのも事実です。17LIVEには、ライバーマネジメントチームという、日本、台湾、東南アジア、香港など世界中のあらゆるところからライバーを育成するリモート管理チームがあります。ライバーやリスナーから得た『いいね!』の数など各種データをライバーにフィードバックし、リスナーがライバーを応援したくなるような環境をサポートしています。次に大切なものは、”イベントへの参加”です。毎日非常に多くのライブ配信があり、ライバーがパフォーマンスを通してリスナー(ファン)を獲得していきます。その際、ライバーがどのようなステージ進行をすればリスナーの満足度が高まるのか。そして、リスナーがどのように評価してライバーにギフトを提供するのか。ステージで適切なパフォーマンスができ、成功体験を得られるよう私たちが全力でサポートしますが、ライバーもリスナーに価値を与えられる新しい自身を創造する必要があります」
――貫性ということで言えば、ネコが好きなライバーはネコの話題だけで大丈夫ですか。
「それはリスナーによります。例えば、Vライバーは多くの方がアニメーションのキャラクターをまとっていますが、リスナーは素顔を隠したライバーの背後にある物語に関心を持っています。ライバーの背後にある物語が何であれ、それは非常に重要です。ですから、ライバーはリスナーの要望をすぐに理解する必要がありますし、リスナーと共に前進する新たな自分の物語を創造していかねばなりません。例えば台湾の例で言うと、女性の僧侶がある日、ライブ配信を始めました。リスナーを積極的に増やそうという姿勢はあまりなく、ただ身近にカメラを置いているだけでした。しかし、ある日を境に彼女は突然多くのリスナーを獲得し始めます。きっかけはリスナーからの人生相談に対して彼女が仏の教えをひもときながら答えていったことでした。リスナーが直面している困難に寄り添う姿が人気を得た理由です。スピリチュアルな指導ではありますが、そんな女性僧侶がたどってきた人生にリスナーは関心を持ちました。結局、彼女は自分自身の人生やリアルな姿を伝えることでリスナーと一緒に歩んでいたのです」
――日本には素顔を見せたくないライバーが他の国・地域に比べて多い印象があります。
「投げ銭で収益を得ているTop10のYouTuberのうち9人がVチューバーとなっており、これらのVチューバーたちはアニメーションを利用して自分がなりたかったキャラクターに変身しています。顔を見せたくない人が活躍できるのも私たちが提供する最新テクノロジーを利用しているからです。想像以上に簡単にVライバーになることができ、独自のコンテンツを作ることができます。ライブテクノロジーにより素早くキャラクターが制作できるため、今後、5倍あるいは10倍規模の拡大が期待できる成長市場と捉えています。世界中のどなたにも、Vライバーへの扉は開かれています。17LIVEでは今年8月から、3Dキャラクターモデルを投稿して、他のユーザーと共有できるプラットフォーム『VRoid Hub』との連携をスタートしました。それによってより気軽にVライバーとしての配信が可能となりました」
――ゲーム業界での経験を生かし、『17LIVE』で新たなプロジェクトを始めると聞きました。具体的にはどう進めていきますか。
「17LIVE内でライバーとリスナーが一緒に楽しめるインストリームライブゲームサービスをスタートしています。そこではゲームに参加するライバーをサポートするギフトを有効活用することがまず考えられます。ライバーがゲーム上で勝ち残っていくためには、リスナーの協力が必要です。その際、ギフトはライバーとリスナーを結びつける相互作用を生み出します。現在、カプコンや任天堂など、世界に誇るゲームタイトルを輩出する企業との取り組みをはじめ、より多くの方にゲーム配信を安心して楽しんでいただける施策の実施を予定しております」
――ECサイトや動画投稿サイトがライブコマースに進出しています。17LIVEの取り組みを教えてください。
「今年7月から現在、『イチナナショッピング』と呼ばれる新しいライブコマースサービスをスタートしました。これにより、17LIVEアプリ上でシームレスに配信視聴から商品購入・決済まで可能になりました。ライブコマースで重要なことはライバーのキャラクターにマッチするよう適切な商品を選ぶことです。配信中のAPP(application software、application programの略称)にアイコンがあり、そのアイコンをクリックすると商品ページに移動します。17LIVEには多くのライバーがおり、ライブコマースサイトでの販売を積極的に行ってくれますが、その際にライバーと商品のコンセプトを一致させる必要があります。私たちの持つテクノロジーが、今後そのギャップを埋めるのに役立つと思います。ご存知の通り、日本ではライブコマースはまだ初期段階にあります。だからこそ多くのチャンスがあると考えています。例えば、スープがおいしいカップ麺を食べたいと思っているユーザーがいる時、ライバーが発信するスープに関する情報があなたを納得させれば良いのです。ライバーは非常に複雑な商品を売るわけではありません。それは日常の中でよく接する商品について簡単な情報が伝えられれば良いということを意味します」
――今年6月には、「17LIVE」アプリ内でのオンラインイベントを勝ち抜いたVライバーとリアルライバー計10人が出演した未来型ライブイベント『MIRAI Stage』が、東京・池袋で行われました。8月には『Vライバー』ジャンル設立5周年を記念したリアルイベントが開催されました。手応えと今後の展望を教えてください。
「ライバーとリスナーが対面するオフラインイベントはとても魅力的な空間です。特定のスペースで開催されるこれらのイベントは我々が市場を牽引してきた強みでもあります。ライバーが実際に音楽を作り、歌い、パフォーマンスするイベントを通して、ライバーが自身だけのIP(Intellectual Property:知的財産)を立ち上げることができます。誰でもお気に入りのキャラクターになり歌を披露し顔バレもしないので気兼ねなくライブ配信に挑戦できますし、イベントではテクノロジーを駆使してステージ上でリアルとバーチャルが融合したパフォーマンスも可能です。6月に台湾で『17LIVER EXPO人気製造祭』を開催しましたが、12月には日本で『イチナナライバーEXPO』を開催予定です。どなたも無料で参加できますので、ライバーもリスナーもぜひ、参加してほしいです」
――最後に日本市場の将来性と逆に難しいところ、課題があれば教えてください。
「17年に日本に参入した当初はライバルがあまりいなかったと思いますが、現在においても競合他社がひしめき合っている、という状況ではありませんので、ライブ配信市場はまだまだ成長の余地があると思います。私たちが本当に焦点を当てる必要があるのは、17LIVEというプラットフォームを絶えずバージョンアップしていくことです。適切なツール、適切なテクノロジー、そしてさまざまな種類のコンテンツを見つけて日本のライブストリーミング業界を成長させ続けます。私たちにとって日本はコア市場ですが、日本市場での経験をさらに他の地域に拡大していくことを考えています。プラットフォームの安定性と、今後提供するはるかに多くの機能の点で準備ができています」
――ちなみに好きな日本のアニメは何ですか。
「私が初めて日本に来たのは84年です。子どもの頃はアニメーションと漫画を見るのが好きだったので、日本での滞在をとても楽しんでいました。鳥山明の『ドラゴンボール』や大友克洋の『AKIRA』(アキラ)はよく読みました。今でも日本のアニメや漫画に接すると幸せな気持ちになります(笑)」
(※アレックス氏の使用言語はすべて英語)
□アレックス・レン 台湾生まれ。14歳で米国に移住し、ノースイースタン大(Northeastern University)を卒業。通信業界で約9年間勤務した後、スターバックスに転職し、中国に赴任。2008年にはゲーム業界に転身し中国を拠点にゲームの設計・開発・運営・マーケティングの統括を担当。Break Media社ではマンガアートスタイル、パルクールアクション、クラシックゾンビのジャンルを融合させたモバイルアプリゲーム「Zombie Parkour Runner」を開発。17LIVE入社後は、台湾と東南アジアのゼネラルマネージャーとして次世代グローバルライブ配信プラットフォームを構築。22年9月、17LIVE代表取締役兼Group COOに就任。今年3月、同 CEOに就任。「17」は中国語の「一起(イーチー:一緒に)」に由来する。