上川隆也、『遺留捜査』SPは“特別な作品” 一人二役の甲本雅裕を絶賛も「笑うんですよ」
テレビ朝日系のドラマシリーズとして2011年にスタートした『遺留捜査』の新作スペシャルが、9月21日午後8時より放送される。このほど主演の上川隆也、共演する甲本雅裕が「放送直前トークイベント」に出席し、本作の見どころを語り合った。
21日午後8時より新作スペシャルが放送
テレビ朝日系のドラマシリーズとして2011年にスタートした『遺留捜査』の新作スペシャルが、9月21日午後8時より放送される。このほど主演の上川隆也、共演する甲本雅裕が「放送直前トークイベント」に出席し、本作の見どころを語り合った。
新作スペシャルの舞台は、瀬戸内海に浮かぶ架空の島、“蒼海島(あおみじま)”。物語は、京都市内で不動産会社の営業スタッフ・坂上千尋(横山めぐみ)が殺害された事件から始まる。上川演じる主人公・糸村聡は、彼女の遺留品である神秘的なガラス玉に導かれるようにして、島のガラス工房へ。そこで出会ったのが、寡黙なガラス職人・相良克典(甲本)だった。本作では岡山・鹿久居島で大々的なロケーションを敢行、のどかで美しい風景も大きな見どころとなっている。
甲本はこれまでシリーズ1作目から登場する科捜研の研究員・村木繁も演じてきたが、今作では、村木と相良の二役に挑戦する。上川は「このドラマがジョーカーを切った」「今回の一番の目玉なんですよ」と最大の見どころだと強調する。
甲本は今作の撮影で、「初めて村木ではない役で参加させてもらって、初めて糸村聡という男と出会うんですけど、全く別の人間として糸村と相対したときに、こんなに変人だったんだって。もうありえないぐらいおかしな人だったんですよ」と衝撃を受けたとのこと。
糸村といえば、事件現場に残された“遺留品”が持つ意味を徹底的に探り、声なき遺体が訴えたかったメッセージを代弁。事件そのものを解決するだけでなく、遺族の心情をも救う優しさと、超マイペースで空気を読まない刑事だ。
そんな本シリーズの主人公に甲本は、「もうセリフを言うにも笑えてきちゃって。もうおかしいんですよ。『あ、糸村さんって、こんなにおかしな人だったんだ』っていうのを、改めてというより初めて知った、新鮮な今回のスペシャルでした」と、糸村聡の“変人ぶり”に圧倒されたようだ。
上川からも「甲本が珍しく撮影中に笑いを止めることができなくなってしまった」として、「何回やってもテストから笑いよるんですよ。もう12年ですか、一緒にこの作品で関わってるだけでも。糸村と村木としてずっと顔突き合わせて芝居してきたにもかかわらず、今回に限って何回テストやっても、何回本番を重ねても、オッケーの後で笑うんですよ」と明かした。
これを隣で聞いていた甲本が「ハハハハッ! ちょっと待って、思い出しただけで……」と顔をそらすと、上川はすかさず「ほら、笑うんですよ」と投げかけ、報道陣の笑いを誘った。
今作で一人二役を演じる甲本は、ロケが行われた岡山出身。「どこに行っても自分が役者として演技できる場があることは全く同じではあるんです」としたうえで、「なんだろう……安心感みたいなものが、やっぱり自分が生まれた県であるっていうことがあります。『恥ずかしいことできないぞ!』っていう思いもちょっとあったりもします」と感慨深げに語った。
そんな甲本の演技を間近で見ていた上川は、「この作品以外でも、彼が携わってきたさまざまな芝居も見ておりますし、演じられる幅の広さは、そのときごとに関心や驚きを伴いながら見ているのは確かなんです。村木さんのような、どこか愛らしくて憎めないけれども、人のことは言えない変人ぶりであるとか。一方で、とんでもない毒をはらんだような人間も、闇深く演じることができます。ですから、今回の役柄に関しても、彼が彼なりにきっちりと構築して、まだ僕が今まで会ったことのない人物と合間見えることになるんだろうなとは思っていました。実際、それはその通りになりました」と、惜しみない賛辞を送った。
今作では糸村にも変化が
上川は今作の印象的なシーンについて、甲本のほかに糸村のちょっとした変化を挙げた。
「決して大きなことではないんですが、この4月から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。糸村は警察官ですから、きちんとそれにのっとって、ちゃんとヘルメットを着用して自転車に乗っています。実は13年目にして初めてのことなんですけど、そうした時局の流れにも乗っている、オンタイムのドラマであるということが、実感できた瞬間でもありました。今後も物語が続く限り、スタイルを貫きながらも変化を受け入れていく糸村の姿をお届けできるのではないかと思っています」
糸村のヘルメット着用シーンを甲本は「不思議なんだけど、ヘルメットをかぶっても糸村さんは糸村さんなんだよなって思った。なんでこんなになじんでんだろうっていう感覚になりましたね。似合ってたよ」と、上川に声をかけた。
終始なごやかに笑いも交えてトークを展開する2人。劇中で笑ってしまう場面といえば、本作で定番となっている糸村と村木による“科捜研シーン”だ。ファンの間でも人気となっている。
そんな科捜研シーンを上川は、「多くの場合、1発で取るんですよ」と舞台裏を明かす。「しかもほとんど軽い確認事項だけを決めて、すぐにカメラを回してしまうような撮り方が多いですから、この2人の中で生まれるリアクションなどがその場で発生することで、盛り上がっていったり、膨らんでいったりします」と説明し、しばしばアドリブも交えて繰り広げられているようだ。
甲本も「お互い笑いそうなのを我慢してる姿を見ていただく感じです。たまにやばいときあるじゃん? 『あ、上川ちょっと待って、やばい』って瞬間はあるんですけど」と打ち明けると、上川も「はい。楽しんでしまってるところは、多々あります」と笑顔でうなずいた。
そんな『遺留捜査』は今年で放送開始から13年目。連続ドラマとしては昨年放送の第7シーズンが最後となった。長く愛される本作の魅力について上川は熱弁した。
「どこかで今の世の中って、たとえば迷子に声をかけることもはばかられるように、人と人との触れ合う距離感みたいなものが乾燥している気がしています。でも、糸村にはそんなことはお構いなしなんですよ。自分が興味を持った遺留品から、どんな人間関係やその背景が紡がれていって、それをいかに残された人たちに届けるかっていうことに“だけ”専念しています。規制やハードルがある世の中だからこそ、皆さんにとっては、ある種の人間関係のファンタジーというか、渇望を感じています。この『遺留捜査』なら、その触れられる、こうであってほしい人と人との距離感が描かれているのだと思います」
イベント終了後、上川は『遺留捜査』に長く携わってきたチーフプロデューサー・佐藤凉一さんが今作の撮影後、急逝したことに触れると、「僕たちにとっては哀悼を捧げるような作品です」と、特別な一作であることを明かした。