堀江美都子、アニソンを歌い続けて半世紀 アイドル全盛期に味わった引け目と葛藤

堀江美都子は『キャンディキャンディ』を始め、多数の主題歌を手掛けるアニメ界のレジェンドだ。「タツノコプロ創立60周年記念特別公演~Tatsunoko 60th Legends~」(10月1日、BS松竹東急でオンエア)でも、変わらぬ美声を披露している。しかし、一時はアニメ主題歌を歌うことも拒んだこともあった。そのワケは?

アニメ界のレジェンド・堀江美都子は今でも変わらぬ美声を披露している【写真:ENCOUNT編集部】
アニメ界のレジェンド・堀江美都子は今でも変わらぬ美声を披露している【写真:ENCOUNT編集部】

アニメ界のレジェンド レコーディングした楽曲は1000曲超

 堀江美都子は『キャンディキャンディ』を始め、多数の主題歌を手掛けるアニメ界のレジェンドだ。「タツノコプロ創立60周年記念特別公演~Tatsunoko 60th Legends~」(10月1日、BS松竹東急でオンエア)でも、変わらぬ美声を披露している。しかし、一時はアニメ主題歌を歌うことも拒んだこともあった。そのワケは?(取材・文=平辻哲也)

 堀江は1969年、テレビまんが『紅三四郎』の主題歌でアニメ歌手デビュー。以後、主題歌は週に10曲以上も放送され、数々のヒットソングが生まれた。レコーディングした楽曲は1000曲超というから驚異的だ。歌手、声優として55年近いキャリアを持つが、その美声は衰えを見せない。

「続けることは難しいですが、一つの秘訣としては、幸いにも声がほとんど変わらなかったことがあります。そのおかげで長く歌い続けられました。特別なことをしているわけではありませんが、喉を大切にして生活しています」

 1977年の『キャンディキャンディ』は100万枚を突破する大ヒット。しかし、その後はアニソン歌手を辞めたいと思ったこともある。一時はライブでも『キャンディキャンディ』を封印していた。

「当時は麻丘めぐみらアイドル全盛期だったんです。私も同じくらいの年齢なのですが、当時のアニソンは作品がメインで私は影の存在でした。自分としてはシンガーとして認められたかったんです。私とは何が違うんだ、と悩んだこともありました。歌手として、いろいろな世界観の歌を歌ってみたいと思っていたんです」

 特に歌いたかったのは、洋楽だという。

「好きなのは、古くは米R&Bコーラスグループの『フォー・トップス』、『スタイリスティックス』、『アースウィンド・アンド・ファイア』、スティーヴィー・ワンダー、ジャーニー、TOTO、キャロル・キング……。挙げたらきりがないほど。洋楽が好きだと言い続けた結果、コンサートで洋楽のカバーを何曲か歌う機会もありました。当時はファンの方も驚いてしまったようです」

 そんな悩んだ時期を経て、再びアニソンの世界に戻っていった。

「成長の段階で壁にぶつかったんでしょうね。実際に歌謡曲の事務所から誘いがあったこともありましたが、よくよく考えてアニメソングの世界観やメロディーの面白さに引かれて、アニソンに専念することにしました。これが私の人生で最高の決断でした」

 歌手だけではなく、『魔法少女ララベル』(1980年)のララベル、『ひみつのアッコちゃん』第二期(88年)のアッコ、世界名作劇場シリーズ『愛少女ポリアンナ物語』のポリアンナ役、『私のあしながおじさん』のジュディ・アボット役など声優としても活躍した。

「私の場合、主題歌を歌うと同時に主人公の声も担当していました。その後、声優だけの仕事も増え、それぞれ別の仕事として考えるようになりました。アッコちゃんなら、呪文があったり、決めセリフがあると演じやすかったですね。『アッコちゃん』は人生の歯車が動き出した作品でもあります。歌の仕事が少なかった時期にオーディションに呼んでいただいて、『よかった』との評価をいただけたので、思い入れも深いです」

 今では『アニメソングの女王』、『アニソン界のプリンセス』とも言われているが、その原動力は何か。

「やっぱり、アニメソングだからですね。今になって、歌詞やメロディー、作品の力に自分自身が励まされ、元気をいただいています。今でも常に新鮮に1曲1曲新しい気持ちで歌えています。それに、先輩のささきいさおさんが81歳になられた今でも、あの響く声で歌っていらっしゃる姿を見ると、私が弱音を吐けないなと思ってしまいます」

 ウオーキングと25年続けているフラダンスが日課。

「暑い時期はあまり歩けないので、夜や夕方にウオーキングをしています。時間がないときは3キロ、普通には5キロ、長いときは7キロくらい歩いています。7000歩ぐらいが快適です。フラダンスは週に何回か通っています。体格や健康に特に恵まれているわけではないので、自分の体をうまく活かして持続できる方法を考えています。今まで一人でマイペースに活動してきましたが、それが自分にとって一番良いと思っています。日本コロムビアという安定したバックボーンがあり、それが私にとって一番安心です」とアニソンの女王は微笑んだ。

□堀江美都子(ほりえ・みつこ)3月8日生まれ、神奈川県大和市出身。1966年、フジテレビ『ちびっこのど自慢』に出場。1969年、テレビまんが『紅三四郎』の主題歌でアニメ歌手デビュー。1977年には空前のアニメブーム、『キャンディキャンディ』は100万枚突破の大ヒット。2014年にはデビュー45周年を迎え上海、香港、ブラジルなど海外にも活躍の場を広げる。また、堀江美都子シンガーズラボ(MSL)を主宰し、次世代に自身の経験から生まれた歌唱テクニック全般を指導。洗足学園音楽大学 声優アニメソングコース教授。2019年、東京アニメアワードフェスティバル2019にて、功労部門受賞。特技:ゴルフ、スキー、バイオリン、ウィンドサーフィン。

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