歌舞伎俳優の市川猿翁（いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦＝きのし・まさひこ）さんが13日午前6時55分、不整脈のため都内で死去した。83歳だった。市川中車こと俳優・香川照之（57）の父で、自殺ほう助の罪で起訴された市川猿之助被告（47）の伯父。訃報に接し、猿翁さんの元妻で俳優の浜木綿子がコメントを発表した。

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「永きに渡り闘病生活をおくっていらっしゃいましたが、驚きました。中車、團子、澤瀉屋一門の活躍をお感じになり安心して、逝かれたのだと、思います。本当によく頑張って下さいました。これからは泉下より中車、團子、澤瀉屋一門をずっとお見守り下さい。偉大なる歌舞伎役者安らかに、お休み下さいませ。私は今度こそが、本当のお別れでございます。浜木綿子」

　猿翁さんと浜は1965年に結婚。一人息子の香川をもうけたが、68年に離婚した。香川は浜が引き取った。破局の原因は日本舞踊藤間流名取（のちに紫派藤間流を創始して家元）で、16歳年上で俳優の故藤間紫さんとの猿翁さんのダブル不倫だった。紫さんとの離婚が85年に成立し、猿翁さんは2000年に藤間さんと再婚した。

　香川は東大を卒業し、89年に俳優デビュー。25歳になった香川が猿翁さんの公演先に会いに行ったが、猿翁さんは「私は家庭と決別した瞬間から蘇生したのです。だから今の僕とあなたとは何の関わりもない。あなたは息子ではありません。今後二度と会うことはありません」と突き放したことで知られている。その後も断絶は続いたが、紫さんが間に入って45年ぶりに親子の関係が修復。11年9月17日、自身の2代目猿翁、香川が市川中車を襲名する際の会見には席を並べた。そして、猿翁さんは「浜さん、ありがとう。恩讐のかなたにありがとう」と浜に感謝の言葉を述べて話題になった。