1日798円で車が借りられる? 低価格を実現できる仕組みとは 「月300万円売り上げる店舗も」

ロシアとウクライナの間で勃発した戦争や止まらない物価高の影響で、家計の圧迫に悩む人は多いだろう。燃料価格も上昇し、いまやレギュラーガソリンの全国平均小売価格は180円を超えるなど、車業界も例外ではない。その中で車を1日798円から提供し、注目を集める全国フランチャイズのレンタカー店がある。低価格を実現する秘訣、全国展開で勝負できるワケとは。さいたま市にある「株式会社ニシザワ」の代表取締役CEOを務める西澤道明氏に聞いた。

激安レンタカーが提供できる裏側を聞いた【写真:JBレンタカー公式サイトより】
激安レンタカーが提供できる裏側を聞いた【写真:JBレンタカー公式サイトより】

車の仕入れから店舗の設備までコストを削減

 ロシアとウクライナの間で勃発した戦争や止まらない物価高の影響で、家計の圧迫に悩む人は多いだろう。燃料価格も上昇し、いまやレギュラーガソリンの全国平均小売価格は180円を超えるなど、車業界も例外ではない。その中で車を1日798円から提供し、注目を集める全国フランチャイズのレンタカー店がある。低価格を実現する秘訣(ひけつ)、全国展開で勝負できるワケとは。さいたま市にある「株式会社ニシザワ」の代表取締役CEOを務める西澤道明氏に聞いた。(取材・文=関臨)

 西澤氏は1968年、埼玉生まれ。大学卒業後、不動産会社に入社した。現在でも地元である埼玉で仕事を続けている。しかし、当時の社長とビジネスビジョンの相違が生まれ、独立。現在はレンタカー会社を始め、ゴルフ用品やエステなど10を超えるサービスを提供している。「自分で考えたアイデアを実現させるのが喜びなんです」と自身の考えを明かした。

 レンタカー事業を始めたのは約4年前。始めたきっかけは、「不動産として少し離れた土地を持っていたんです。駅から遠く、田舎だった場所を有効活用しようとしたのが最初です」というもの。店舗を構えるのではなく、デリバリー配車の方式をとった。通常車を借りることができない、若年層で元手がない人や、クレジットカード利用でブラックリストに入ってしまった人などにも安く車を貸せることで売上が上がった。

「やり方はレンタカーにしては珍しいかもしれませんが、不動産業界ではウイークリーマンションと基本的には同じやり方なんです」。不動産業で培った仕組みを活用しているという。

 それにしてもレンタカー代の値段には驚愕(きょうがく)だ。通常、大手レンタカー会社で最低価格のクラスを借りた場合、1日約6500円~約9000円台が相場となっており、マンスリーレンタカーを借りた場合は、数社の公式サイトを見てみると約8万5000円~約14万円台の費用が表示されている。一方、西澤氏が手掛けるレンタカー会社では最低価格の軽自動車クラスを30日間借りた場合、2万3940円。1日に換算すると798円である。これほどまでの低価格を実現できる仕組みとは?

「1つは高年式、高走行距離の車を仕入れていることです。新車を期待されているお客様の中には残念に感じる方もいらっしゃいますが、価格を考えると皆さん納得してくださいます。もう1つは初期の設備投資を抑えているということです。車は配車するので看板等を出すこともありませんし、駅の近くに店舗を構える必要もありません。マンションの1室があれば開業できるので初期に大きな費用はかかりません」と徹底的にコストを抑えるからくりを明かした。

 レンタカー事業は最初に加盟料を98万円支払い、その後は月に10%を本部にロイヤリティーとして払う仕組みになっている。フランチャイズは広がりを見せ、現在では北は東北から南は九州まで、30以上の店舗数になっているという。「社内で1番売り上げているのは福岡の店舗で、月300万円売り上げています。また、広島では昼はレンタカー、夜は居酒屋と“二毛作”の形で運営している場所もあります。貸し出す車に居酒屋の広告を出すことで、居酒屋の売上も上がり、一石二鳥になっているようです」。

 しかし、高年式、高走行距離の車を使用することで弊害も生まれる。修理にかかるコストだ。当然、長期間使用された車であるため、念入りなメンテナンスが必要だ。中でもバッテリーはコストがかさむ。しかし、西澤さんはそれすらも事業にした。「取り替えることで半永久的に交換せずに済むバッテリー液も取り扱っています。こちらもフランチャイズでやっていますが、加盟料はいただいていません。初めに2ダース仕入れていただき、気に入った場合はそこから継続して仕入れていただく、という形になります」。実際に使用した人の評判は上々だという。

 バッテリー液は農機具や船など多くの乗り物に使用されているそうだ。「ハイブリッド車でバッテリー交換となると大体6万円ほどかかります。弊社が取り扱う車も交換費用がかからなくなったので、弊社が一番もうかっているかもしれません」と笑顔を見せた。

 これまでさまざまな業種を手掛けてきたが、この先のビジョンはどう描いているのか。「何ができるかではなく何が残るかを考えることが必要だと思います。さまざまなサービスが発達し、進歩していく中で、われわれの年代が若い世代の流行についていくことはなかなか難しい。ではどうすれば生き残れるか。生活に欠かせないサービスを安く提供する。これがないと困る、といったものに照準を合わせてやっていく必要があります」。

 その言葉通り、暮らしの周りに存在するサービス展開を進めている。今後はトレーラーハウスを完備したパーティールームや、Wi-Fi、訪日中国人向けのファットバイクのレンタル事業も展開していく予定だと言う。

「絶対的な正義を大事にしています。だましたり、ごまかしたりといったことはしません」。西澤さんはそう力を込めた。今は多くの事業を抱える西澤氏も10年後には不動産事業に専念したいという。

 激安で提供できる裏側には経営努力と強い信念があった。

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