玖村将史が憧れたK-1 「格闘技の熱をK-1中心に」の真意「現代は実力以外を見られがち」
格闘技イベント「K-1 ReBOOT~K-1 ReBIRTH~」(ABEMAで全試合生中継)が10日、神奈川・横浜アリーナで行われる。第14試合のK-1 WORLD GPスーパー・バンタム級タイトル戦では挑戦者・玖村将史(K-1ジム五反田チームキングス)が王者・金子晃大に挑戦する。決戦を控えた玖村に金子や「K-1」について話を聞いた。
「RISE」のトップファイターを2人倒し自信に
格闘技イベント「K-1 ReBOOT~K-1 ReBIRTH~」(ABEMAで全試合生中継)が10日、神奈川・横浜アリーナで行われる。第14試合のK-1 WORLD GPスーパー・バンタム級タイトル戦では挑戦者・玖村将史(K-1ジム五反田チームキングス)が王者・金子晃大に挑戦する。決戦を控えた玖村に金子や「K-1」について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
現在はボクシング界で活躍する武居由樹のベルト返上で、新たな時代に入っていたスーパー・バンタム級。今回の一戦でまた時代が変わる。玖村と金子はこれまで2度対戦し、1勝1敗。2020年3月の「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K’FESTA.3~」では2-0で判定勝ち、22年2月の「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~第3代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント~」の決勝では0-2で判定負け。新しいK-1が始まる日に今回で最後の戦いがある。この対決に4度目はない。
◇ ◇ ◇
――金子晃大を意識し始めたのはいつだったのでしょうか。
「Krushに出始めころ(2018年)ですかね。そのころ無敗で一個下の階級の王者で『強い』、『金子はやばい』みたいなことを周りが言ってました。そのときは『いけるやろ、俺の方が強いし』って思ってたくらい。2019年にお兄ちゃん(玖村修平)が試合をして、そこくらいから『いつかやる』の意識に変わりました」
――「いけるやろ」って思っていたのは明確な自信からだったのでしょうか。
「僕やったらいけるっていうのはありました。こうしたら絶対勝てるというものがありました」
――そんななか、2人は1勝1敗です。2試合とも僅差の判定ですが、負けの部分をどう分析していますか。
「格闘技って技術、強さだけではなくて心技体の六角形のグラフがあったら全部そろって満点に近い方が強いと思います。そうなったときに(負けの理由は)気持ちが1番大きかったですね。彼に対する思いがなかった。1回勝っていたので、もう1回勝つというよりは王者になるっていう方が強かったです。
対トーナメント(第3代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント)しか考えていなかった。向こうは決勝で僕にリベンジするためにやってきたと思うんですけど、僕は誰が上がってきてもという感じでした。1回勝ってたのもあって、過信していました」
――別の団体「RISE」のトップ2人(志朗、鈴木真彦)を倒しています。そこはどんな影響を与えていますか。
「そこも絶対勝てると思っていました。金子選手以外で間違いなく強いなと思って見ていた2人です。他団体だと自分がどのレベルなのか、あの2人とやったら分かると思っていて、そのなかで勝てました。やってきたことが間違いじゃなかったなって自信になりました」
――いままでもさまざまな経験をしてきたと思いますが、他団体の選手を倒すっていうのは普段と違いますか。
「団体を背負って戦っているので、負けられないですよね。K-1のなかで試合をするのと、また別のプレッシャーがあります。『THE MATCH 2022』と対抗戦はメンタル的にも成長できました」
――そんななかで臨む3度目の戦いはどんな心境なのでしょうか。
「志朗選手に勝ったあとにコンペット(シットサラワットスア)に負けました。志朗選手に勝ったことで自信を持ちすぎて、そういう過信は良くないとわかりました。毎回、相手をしっかり見ないといけない、相手との戦いに対するマインドをコンペット戦で改められました。
22年12月にイスマイル・アル・カディに勝って23年3月に鈴木(真彦)選手にも勝った。マインド的に自分のなかにハマるものがありました。いまは良い状態で、3度目ですけど油断は一切なく、1人の王者と戦う気持ちです。挑戦者として100%を出したいなと」
――挑戦者マインドはいままでにありましたか。
「いままでなかったですね。自分が1番強いと思って、自信でやってきたところが少しありました。挑戦、追う者の強さを昨年のトーナメントで知りました」
――3度目の対戦でいままでと何か変わることはありますか。
「お互い手の内は分かります。言い訳はできないですよね、お互いに。だからこそフラットにできる。2戦目をやって、お互いに3回目あると分かって1年半過ごしてきたと思います。文句なしの真剣勝負が今回はできるんじゃないかと思います」
――3回目があると思いながら過ごしてきた。
「負けたまま終われなかったですし、敗戦はトーナメントの決勝だったので、僕はワンマッチでやりたいという思いがずっとありました。そのために1年半やってきました」
――ここまでいつも頭の片隅にいる選手はいましたか。
「いなかったですね。今回で間違いなく終わらせるんですけど、自分のファイターとしての経験としては、この3年間でめちゃくちゃ成長できた。だからこそ、今回で終わらせて次のステップに。みんな楽しみにしてくれていると思うんですけど、それ以上に楽しい試合をできるように勝ちたいですよね」
玖村将史にとっての“K”「K-1ファイターが僕のなかではヒーロー」
――「格闘技の熱をまたK-1中心に」という発言がありました。その真意を教えてください。
「いまの時代ってSNSが昔よりも盛んなので実力以外を見られがちですよね。試合・大会は間違いなくK-1が面白いと思うんですけど、他団体の選手の方がSNSはうまいのかなって。エンターテインメントとしての見せ方がいまの時代は必要なのか。
でも格闘技は強さが必要だと思う。一周回って、格闘技に強さが求められる。エンターテインメントっていうのは一時的なものだと思うので、だからこそ僕たちは本物を求めています。絶対にいつかまたK-1の時代が来ると思うので、そこを作っていきたいですよね。MMA、ボクシングも小さいころから見ていましたけど、僕が1番食らったのがK-1なので」
――K-1は玖村選手にとってどんなものでしたか。
「昔のK-1はもう、その日にK-1があるだけで1日がワクワクするというか、そのために生きていたみたいな(笑)。幼稚園ぐらいからそんな思いがありましたね。何人か見ている子がいて、『今日K-1やな』って話をしていました。K-1ファイターが僕のなかではヒーローだったので」
――なぜキックボクシングが自身に1番響いたと思いますか。
「シンプルに打撃が1番強さだと思っています。子どもながらに1番強いのはキックボクシングって思ったんですよね。MMAは打撃が弱くても勝ったりする。打撃だけで強さを決められるのが本当に強いって。そのときの感覚は間違っていないと思っています」
――今回、新たなスタートとなるK-1の顔でもあります。心境はいかがでしょうか。
「絶対になるって思っていたんですけど、やっとここまで来れたなっていう感じはあります。でも、そこに満足はしていないし、今回勝たないとなにも意味がない。いまここにいるだけじゃ意味がないので、これからこの時代を作っていかないといけないなと思います」
――会見ではカルロス菊田氏の「世界の舞台を用意する」という発言もありました。具体的にどう見据えていますか。
「世界に行くなら本物の世界一になりたいと思っています。全団体、みんなが知っているような大きい団体で1番になりたいです。僕らの階級だとONEの選手とはやってみたい。今回勝ったら間違いなく日本一だと思うので、そういう海外の本物とやっていきたいです」