松井玲奈、昔から変わらないネガティブ思考 「楽になった」負の感情との向き合い方
映画『緑のざわめき』(9月1日公開、監督:夏都愛未)で主演を務める松井玲奈(32)は、「芝居をするために入った」という芸能界で、役者としてのキャリアを着実に積み重ねている。そんな彼女に仕事への向き合い方や葛藤との向き合い方などを聞いた。
躍進の原動力は「人に求められること」
映画『緑のざわめき』(9月1日公開、監督:夏都愛未)で主演を務める松井玲奈(32)は、「芝居をするために入った」という芸能界で、役者としてのキャリアを着実に積み重ねている。そんな彼女に仕事への向き合い方や葛藤との向き合い方などを聞いた。(取材・文=中村彰洋)
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3人の異母姉妹が織りなす物語を描いた同作は、葉脈と血のつながり、ファミリーツリー、性と聖のつながりをテーマに描かれたオリジナル作品。主人公を演じた松井は「共感できる部分を見つけることができなかった」と自身と交わることのない道を歩む小山田響子という役柄について振り返った。
「違う人生を歩みすぎていて、何もかもが正反対だったからこそ、共感できる部分を探しました。分かったつもりになるのではなく、友人のような気持ちで寄り添って、彼女の1番の理解者になることを目指しました。それを自分を通してお芝居で消化することができたらいいなと思っていました」
これまでにも自身と離れた性格や境遇の役を多数演じてきた。共通点のあるキャラクターのほうが演じやすいのかと思いきや、そういうわけでもないという。「自分に『似ているな』と思うと、『自分ではないようにするためにはどうするんだ?』という引き離す作業が必要になるので、どちらも難しい部分はあります」と説明する。
今作では、女性ならではの生きづらさやトラウマなどセンシティブな話題も扱っている。監督は松井と同い年の女性監督。撮影現場では、たくさんのディスカッションを重ねた。「意見を出しやすいし、監督もそれを受けて自分の思っていることをはっきり伝えてくださいました」と良好な雰囲気で進んでいった。
「夏都さんの考え方がとても力強く描かれているなと思いました。しっかり芯を持たれているからこそ、現場でも『この画でこの場面を撮りたい』など、はっきりと示してくれました。でもかわいらしい部分もあって、分からない部分は『分からない』って素直に言って、真剣に悩むんです。現場の雰囲気で決めることもありましたね」
挑戦してみたいことは脚本家「誰かに演じてもらう前提です!」
同作では、「きれいな女性って得だから」「就活に失敗しても、美人だし結婚すればいい」といった女性蔑視な発言など、女性ならではの葛藤も描かれている。松井自身も過去に、そういった目を向けられたことがあるというが、「今はもう忘れちゃいました」と笑う。
「“人は人”という風に考えています。もちろん私は女性として生きているので、『自分は女として生きるんだ』という感覚はあるのですが、周りに何を言われても、『だって私は女だし』と考えられるようになりました。性別とかではなく、『人間はみんな人間なんだから』と思うようになったら、すごく楽になったんです。『性別ってそこまで関係ないな』と最近思うようになりました」
役者になることを夢見て入った芸能界。あまたのステージを経験し、現在は多数の作品に出演するなど、役者として充実の日々を過ごしている。「お芝居をするためにいろんな経験をして、その1つ1つが重なって今につながっていたらいいなと思っています」とこれまでの歩みを振り返りながら、「夢をかなえている途中です」と現状を見つめた。
自身の性格については、「昔からずっと変わらないですね」と分析する。
「マイナスな感情からスタートすることが多いです。でも、それが全部伸びしろだと思うと『頑張ろう』という気持ちになれるんです。落ち込むことは人よりも多いかもしれないです。自分の中でうまく消化して、常に頑張らなくてもポジティブでいられるようになったらいいのにな、と思うことはあります」
論理的に思考を整理していくことでネガティブな自分と向き合うことが「楽になった」とも明かす。
「負の感情がバネになって、頑張る力になることもあります。自分の中で、ネガをポジに変えるゲームみたいなものをやっていて、それが切り替えの速さにつながっていると思います。Aのプランが『ダメだ、私には向いてないかも』となったときに、『どうしたらできるんだろう』と、うじうじしてしまうより、『じゃあBのプランにしましょう』と切り替える。そういうゲーム感覚の考え方をするようになってから、以前よりも気持ちの整理がスムーズになったと思います」
感情的に行動することはほとんどなく、石橋をたたいて渡る慎重派。「理解できないと動けなくて。それはすごくめんどくさいなと思います」と苦笑いも浮かべた。
今後の目標については、悩みながらも「ないですね」と返答。「人に求められていることに応えたい気持ちが強いので、その中で、自分ができることを一生懸命頑張りたいです」と、根底には松井ならではの仕事への向き合い方があった。他者の評価を気にすることも多く、自分自身を「俯瞰」することを常に意識しているという。
一方で、挑戦してみたいこととして、「脚本を書いてみたい」と挙げた。これまでに2冊の本を執筆するなど小説家としての顔も持つ松井。「書くことと、お芝居が最もつながっているものが脚本だと思うので、いつか挑んでみたいなとは思います」と宣言。「自分は出ないですよ! 誰かに演じてもらう前提です!」と笑顔を浮かべながら、次なるステージを見据えていた。
□松井玲奈(まつい・れな)1991年7月27日、愛知県出身。2015年ごろから本格的に役者としての活動をスタート。18年『まんぷく』、20年『エール』でNHK連続テレビ小説に出演。23年には『どうする家康』で大河出演を果たした。同年8月7日からは『やわ男とカタ子』にヒロインとして出演中。19年『カモフラージュ』、21年『累々』(いずれも集英社)を執筆するなど小説家としても活躍中。