なぜ木村ミノルは禁止薬物に手を出したのか K-1離脱後の孤独と葛藤「いつ試合ができるか分からない」

元K-1ファイターの木村“フィリップ”ミノルのドーピング検査の結果が「陽性」であると公表された。K-1時代の使用は否定した。会見で木村が自らの口で使用の経緯や使った理由を説明。大勢の報道陣の前で心の弱さと向き合っていた。

スーツ姿で会見に臨んだ木村“フィリップ”ミノル【写真:ENCOUNT編集部】
スーツ姿で会見に臨んだ木村“フィリップ”ミノル【写真:ENCOUNT編集部】

K-1時代の使用は否定

 元K-1ファイターの木村“フィリップ”ミノルのドーピング検査の結果が「陽性」であると公表された。K-1時代の使用は否定した。会見で木村が自らの口で使用の経緯や使った理由を説明。大勢の報道陣の前で心の弱さと向き合っていた。

「今回、ドーピングをした状態で試合をしてしまい、ロクク・ダリさん、関係者のみなさん、応援してくださるファンのみなさん、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 木村は2010年デビューの29歳。第3代K-1 WORLD GPスーパーウェルター級王者でこれまで48戦37勝(30KO)10敗とかなりの試合をこなしている。“ドーピング疑惑”が出たのはK-1のころからで、筋骨隆々な見た目とパワーから怪しむ声が上がっていた。

 今年6月24日に北海道で開催された「RIZIN.43」でロクク・ダリ(コンゴ)とキックボクシングルール(3分×3R)で戦い、1R・68秒でKO勝利(現在は無効試合)。相手を失神させる衝撃的なKOだったが、この大会終了後に榊原信行CEOから検体をWADA(世界アンチ・ドーピング機構)に送り、ドーピング検査を行っていることが明かされた。

 約2か月後の2日、検査の陽性を報告。6月の試合が無効試合になること、罰金処分、半年間の出場停止処分が発表された。なぜ木村は禁止薬物に手を出してしまったのか。

「K-1を離脱してから、ずっと試合ができなくてモチベーションが保てない時期がありました。いつ試合ができるか分からない状態でトレーニングを続けていました。僕が使用したのはクレンブテロールという成分。トレーニングのパフォーマンスを上げたり、状態をいいものに保つために摂取していました」

RIZIN選手を見て罪悪感「どんなに小さい男なんだろう」

 木村がK-1を離脱したのは2021年12月。コンディションを保ちたいという焦り、所属ジムもないなかで相談する者もなく、自分の意志でネットで購入したという。

「INOKI BOM-BA-YE × 巌流島 in 両国」(2022年12月28日)の矢地祐介戦、1.75kgの計量オーバーで話題になった「KNOCK OUT 2023 SUPER BOUT “BLAZE”」(23年3月5日)のクンタップ・チャロンチャイ戦の2戦で3回ずつ禁止薬物を使用し出場した。

 きつい減量、代謝を上げる目的で摂取した。薬の効果について「代謝を上げて筋肉量をあげたり、運動量をあげたりです。飲んで筋トレをやれば筋肉の増強につながります。飲んだだけで強くなるわけではないです。いつもよりたくさんトレーニングができます。クンタップ戦は僕の戦略でパワー勝負をしようと思ったので、薬を筋力アップに使いました。それで減量が間に合いませんでした」と説明した。

 使用して出場した両団体には「禁止規定はないと思っていて、自分のコンディションを第一に考えてしまいました」とうつむく。

 合計6度摂取しているが、心のどこかで抵抗する気持ちはあった。それでもいつ試合の話が来るかどうか分からない不安が結果的に手を出すことへとつながってしまった。

「絶対ダメなことですし、アスリートとしても勝負するファイターとしてもずるい選択だと思う。僕はずっと自分の体に全部を注いでやってきました。なので、どうしても体のパフォーマンスが上がるものとか、練習の質があるものがあれば、それを第一に優先するという考えがあって、アスリートのなかで違法なものなのですが、試合もないなかで……という葛藤があるなかで摂取していました。悪いとは思いますけど、そのときは下手したら3年試合がないかもしれない、それでも体はベストな状態を保ちたいというなかで葛藤はありました」

 使用したのは2戦。RIZINに出ると決まってからは使っていなかった。今回の検査での陽性判定は体内の薬成分が抜けきらなかったためだという。RIZIN出場選手を見て木村の考えも変化していった。

「RIZINには強い選手がいっぱいいる。そういう人を見ているなかで、自分の弱さ、自分がどんなに小さい男なんだろうという気持ちになりました。もし、RIZINにドーピング検査がなかったとしても使っていないと思います」

 出場停止期間は6か月。格闘技の日である大みそかには解けている。「クリーンな体を作って試合に出たい」「これまで以上に強くなる」。同席した榊原CEOは「甘い」と一喝したが木村はこう語った。落ちてしまった“信頼”をどう取り戻していくのか。今後の動向にも注目だ。

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