潮崎豪との決勝へ、拳王の覚悟「お前がずっとノアのトップでいても、これ以上、上に行かない」
今年のノアN-1VICTORY決勝(9月3日、エディオンアリーナ大阪)には、Aブロックから拳王、Bブロックからは潮崎豪が勝ち残った。ともに絶対に負けられない闘いを、あとひとつのところまでこぎつけた。
毎週金曜日午後8時更新、柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.160】
今年のノアN-1VICTORY決勝(9月3日、エディオンアリーナ大阪)には、Aブロックから拳王、Bブロックからは潮崎豪が勝ち残った。ともに絶対に負けられない闘いを、あとひとつのところまでこぎつけた。
Bブロック代表の潮崎は公式リーグ戦最終戦(8・27神奈川・川崎大会)で、薄氷の闘いに臨んだ。中嶋勝彦とのAXIZ対決を制し、リーグ戦では30分時間切れで引き分けた征矢学との優勝戦進出者決定戦に進出した。
この日、征矢はファンの圧倒的支持を集め、GHCナショナル王者イホ・デ・ドクトル・ワグナーJrを下している。武骨で実直、力強いファイトで健闘しながら、なかなか結果を出せないでいる征矢への期待は大きく膨らんでいた。征矢への歓声が上回る中、潮崎は盟友・中嶋の想いも背負って、負けられない闘いだった。
潮崎は第15・17・26・33・38代と、ノアの頂点GHCヘビー級王座の最多戴冠記録を保持している。「アイアム・ノア」の自負とプライドもうなずける。ところが、現在のGHC王者はジェイク・リー。今年になってノア上陸を果たすや、あっという間に「ノアの舵取り人」の座に収まってしまった。
ジェイクは潮崎が一時期、所属していた全日本プロレスからの移籍組。となると、潮崎の全日時代を掘り起こされることにもなり、複雑な思いを隠せなかった。
一切合切を清算するには、N-1を制覇し、ジェイクからGHCベルトを獲り返すことしかない。一戦一戦、勝利を重ねていくのみ。まずは拳王との優勝戦とあって「大阪、俺がいただきます」と決意を新たにしている。
かたや拳王は一足先に打倒ジェイクを果たした。8・27川崎決戦のAブロック公式リーグ戦で。全勝街道をひた走ってきたジェイクに何度も追い込まれながらも、奥の手・炎輪で3カウント。ノアでシングル戦無敗だったジェイクにとうとう黒星をつけて決勝進出を果たした。
ノアを業界のトップにもって行く。ことあるごとにアピールしている拳王。発信力のある拳王自身がノアの名実ともに先頭を走ることが、ノアが業界の盟主になる近道。拳王の熱い想いはますます強くなっている。
「潮崎、また上がって来たのか。何年、ノアのトップにいるんだ」と、何とも辛辣な言葉を投げかけた。潮崎は幾度となくケガに悩まされ、欠場している。ただ、拳王の言う通り「休んで、何もしないで復帰し、ちょこっと弱くても、またいつもの実力を取り戻す」のが潮崎なのだ。
身長もあり、イケメンで強い。拳王は潮崎を認めてはいるが「お前がずっとノアのトップでいても、ノアはこれ以上、上に行かない」とズバリ指摘。ノアのトップ戦線がこのままでは「現状維持が精いっぱい。新日本プロレスに追いつき、追い越すことはできない」と持論を展開する。
対照的な2人の激突
「俺がノアを変えてやる。ノアをプロレス界の頂点までもって行ってやる」と咆哮する拳王。9・3大阪決戦で、潮崎を完膚なきまでに叩き潰して「ノア・新時代」を満天下にアピールするのだ。
ノアを愛する潮崎と拳王。ともにノアマットの充実を目指しているが、その方法論は違っているようだ。
ファイトスタイルが異なるように、リングを降りてもかなり個性の違う2人。サンリオ展示会に参加した潮崎は気さくで明るくさわやか。華やかなオーラがありながらも、ふんわり柔らかな空気をかもし出していた。
かたや、さまざまな団体の選手が集う食事会に参加した拳王は、他の選手の話にじっと耳を傾けながらもピリピリした空気感。なごやかに語り合う他の選手が揃った宴席でも、他団体の選手と常に闘っているかのような緊張感を漂わせていた。
「絶対に負けられない闘い」で激突する2人。男と男の意地と面子が真正面からぶつかりあう大一番は、今年のベストバウトを狙える熱戦、間違いなし。
「アイアム・ノア」の潮崎か。「俺について来い」の拳王か。どちらが勝利をつかみ取るのだろうか。どちらがファンの声援を集めるだろうか。見逃せない。