“悪魔”中島と“太陽神”Sareeeが赤い闘魂タオルを巡って舌戦 中島はウナギ・サヤカにも言及「覚悟を感じた」
「SEAdLINNNG~8周年大会!~」(25日、後楽園ホール)で同団体のシングル王座をかけて雌雄を決する、王者・中島安里紗とSareeeが、SNS上で舌戦を展開した。今回はこれを含め、決戦に向けた最新情報をお届けする。
“クソ悪魔”と“クソ勘違いヤロー”
「SEAdLINNNG~8周年大会!~」(25日、後楽園ホール)で同団体のシングル王座をかけて雌雄を決する、王者・中島安里紗とSareeeが、SNS上で舌戦を展開した。今回はこれを含め、決戦に向けた最新情報をお届けする。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「敵のテリトリーがあーだこーだ言ってた割に赤いタオル掛けながらルンルン笑顔でポーズを決める”中島安里紗”。いやいやタイトルマッチ前に笑わせないで。8.25まで後5日、打倒“クソ悪魔”」(Sareee)
「赤いタオルが全部お前のものだと思うなよ! クソ勘違いやろー!!」(中島安里紗)
25日にタイトルをかけて闘う王者・中島安里紗とSareeeが、20日、SNS上で舌戦を展開した。
事の発端は、“冷酷の悪魔”中島が19日に実施したトークイベントだった。中島はその模様をSNSに投稿したが、その際、中島は笑顔で赤い闘魂タオルを巻きながら、イベント参加者と一緒に撮影された記念写真を公開した。これに“太陽神”Sareeeがかみついたのだ。Sareeeからすれば大事なタイトル戦の前に笑顔でイベントをする余裕があるのかと、自身のシリアスな思いを汚された気分に陥ったのかもしれない。
思えば中島は、7日にタイトルマッチの調印式が「アントニオ猪木展」(8月3~15日まで京王百貨店で開催)で実施された際にも、「記念すべき大会のメインイベントの調印式を敵(Sareee)のテリトリー(アントニオ猪木展)でやっている、上(SEAdLINNNGの南月たいよう代表)もバカだと思う。そういう平和ボケした女子プロレス界を全部ぶっ壊していきたい」と発言。
中島からすれば、Sareeeがアントニオ猪木の一番弟子だった藤波辰爾らと同展示会のプレオープンイベント(8月2日)に出席したことからそうコメントしたのだろうが、この発言の直後、取材陣からフェイスオフ(向かい合ってにらみ合う)の要望を出された際には、お互いの髪の毛をつかみ合う場面も見られた。つまり、もうこの時点で両者の闘いは、すでに沸点に達していたといっていい。
ちなみに19日に行われたトークイベントで中島は、Sareee戦に向けた心境を聞かれると、「楽しみなんですけど……」と前置きした後に、こう答えている。
「(試合以外の運営側としての)準備がすごく大変なんですよ。もちろん試合に向けて集中してますし、カラダの調子もバッチリですけど、今はメチャクチャ忙しいです。とにかく忙しい。でも、逆にいいですね。ドキドキとか緊張とか、言っている暇もないので」
この発言から、中島はすべてを前向きに捉えながら決戦の日を待っていることがうかがえる。
「南月さんから『毎回、これが最後と思って試合をしろ。どの試合が引退試合になってもいいように闘え』って言われているので、毎回試合に賭ける思いっていうのは一緒なんですけど、相手がSareeeっていうのは…(ちょっと違う)」
“悪魔”が相手を認める基準
Sareee戦に対して、中島が特別な思いがあることは十分に伝わってきたが、その理由を中島は以下のように打ち明けた。
「ベルトがかかっているっていうのはありますけど、これだけやりあえる相手って他にいないので、絶対に悔いを残したくないっていうのはあります。あの時、もう一発殴っとけばよかったとか、あそこはスカさないで、しっかり受けとけばよかったとか思いたくいないから、100%やりきって、100%受け切ってやりたいっていう思いがあるので。そこに向けたコンディションを整えたりっていうのはありますね」
ここでガラリと話は変わる。中島は14日、宮城・仙台にある夢メッセみやぎで、最近、プロレス界で話題の人物の一人、ウナギ・サヤカとタッグマッチながら初遭遇を果たした。
試合後、ウナギは自身のSNSを更新。中島戦の感想を「まじでお前やべえやつだったわ。みんなが言ってるよりも遥か上のヤバいやつだったわ。また戦ってやってもいいぞ」と投稿していた。
そこで中島に、初遭遇を果たしたウナギの印象を尋ねると、「(試合前に)思ってた(ウナギの)レベルがメチャクチャ低かったので、正直。なのでよかったです。期待値は超えました。だから期待値がすごく低かった分、それは全然超えてた」とコメント。
要するに中島にとってウナギは、イロモノ、キャラモノのイメージがあったということだろう。
「そう。ま、でも、私の中の基準は、試合中に(相手と)目が合うかどうかっていうのがあって。私と対戦する時って、たぶん私が怖いだろうし、ここ(顔)をやられたくないから、みんなこうなっちゃう(顔をそむける)んですよ。そういう選手のことは、ホント嫌だなって思うんですけど、その点、(ウナギは)常に目が合うというか、試合中に。なので、そういうところは覚悟があるんだろうなっていうふうには感じました」
どうやらウナギは、“悪魔”の考える女子プロレスラーの基準値には達していると感じたようだ。
もちろんこの書き方だと、かなり上から目線のようにも受け取れるが、発言の主が“悪魔”や“バイオレンス・クイーン”と呼ばれ、業界随一の殺気をリング上から充満させる女子プロレスラー・中島のものだと分かれば、いかにウナギが評価されているのかが理解できる。
「でも、ちょっとしかやってないから試合がどうこうは分からないけど、気持ちはあるんだろうし、こっちも思い切り(顔面に)アザをつけられましたよ。でも、かわいいよね。顔がかわいい。かわいい選手は好きなんですよ」
中島からすれば、ウナギからプロレスに対する気持ちが感じられたのは嬉しかったようだが、この話を聞いて、ふと思い出したエピソードがあった。
それは90年代、神取しのぶ(現・神取忍)と「デンジャラスクイーン決定戦」(1993年4月2日、横浜アリーナ)を闘った北斗晶が、試合後、「(神取は)プロレスに対する心がない」と発言したことだ。
そこで“悪魔”中島が考える、心がある・ない女子プロレスラーとはいったい誰なのか……?
この問いに対して中島は「心がないのはいっぱいいるんじゃないの?」と辛辣(しんらつ)なコメントを発した。
Sareeeの師匠・伊藤薫の視点
「心がないっていうか足りない。いっぱいいますよ、そんなのは。プロレスを足がかりに上に行ってやろうみたいな(腰かけ女子プロレスラーが)。このプロレスを使ってどうにかなってやろうみたいな心の足りない人っていっぱいいますよ。だからパッと名前が出てこないのは、いっぱいいすぎて逆に出てこないって感じ。とくに若い子ですよ」
逆に「心があると思ったのは?」と聞かれると、「やっぱりSareeeじゃないですか? プロレスに対する熱さで言えば」と宿敵の名前が飛び出した。
当たり前の話だが、あれだけ壮絶な殴り合い・蹴り合いの「殺し」を繰り広げる両者だからこそ、裏を返せば、それだけ認めるものがあるのは理解ができる。
「あとは誰だろうね? 例えば先輩方でいうと、心がなかったらプロレスラーとして生き残っていない人たちだから。あの人たちはすごい膨大な数のなかから選ばれた人たちで、さらにここまで闘い抜いてきた人たちだから。それだけの思いがなければここまでやれてないし。例えば堀田(祐美子)さんとかはメチャクチャ熱いんですよ。今でも女子プロレスが大好き、女子プロレスを盛り上げたいみたいな気持ちがすごい強い人。あそこまで熱が持続するのがすごい」
そう言って、中島は師匠でもある堀田祐美子の名前を上げた。
ちなみにSareeeは、その堀田とも女子プロレス界屈指の激闘を展開した伊藤薫の愛弟子でもある。つまりは、かつての堀田VS伊藤の続きが、中島VSSareeeの試合から垣間見える可能性もあるのだ。
実際、伊藤は21日にSNSを通じて以下の投稿を公開した。
「Sareee選手を育てたのが自分なら中島安里紗選手は堀田選手からなんですね。今の時代とは合わないのかも知れませんが、昭和の匂いがプンプンする。お互いが認め合うレスラーとしての闘い。昭和の堀田祐美子対伊藤薫。平成の中島安里紗対Sareee。見逃せないですね!」
いみじくもSareeeの師匠からもそんな期待を寄せられる中島VSSareee。そして、この言葉と同じように気になるのは、昨年、あちらの世界に旅立ったアントニオ猪木である。冒頭に記述した、自身のトレードマークともいえる赤い闘魂タオルを巡って、女子プロレス界を代表する「殺し」の継承者である二人が、それぞれの見解を交わしていることをどう思っているのか。
ふとそんな思いが脳裏をよぎったが、正直に言えば、意外と喜んでいるような気もするのだ。
もちろんそれはアントニオ猪木が口にしてきた「プロレスは闘いである」を具現化する中島とSareeeの二人だからこそ。しかも中島からすれば、Sareee同様、闘魂タオルを巻いたことで目に見えない力が湧いてきたのであれば、思わず笑顔が込み上げてきてしまうのも合点がいく。それだけあの闘魂タオルには、不思議な力が宿っているのかもしれない。
ともあれ、泣いても笑っても決戦まであとわずか。令和の女子プロレス界に、かつてない「殺し」の嵐が吹きまくる!
果たして生き残るのは“悪魔”か“太陽神”か――。