「おもちゃでなく家族として迎えてあげて」 安価なインコ、多頭飼育崩壊の現実が波紋

屋内に放たれた100羽を超えるインコの群れ……。愛鳥の保護活動を行う事業者が公開したセキセイインコの多頭飼育崩壊の様子に、ネット上で波紋が広がっている。犬や猫などとは異なる小鳥の飼育を巡る現実について、画像を投稿した「べるを商店(@bellwo5963)」の新井香織さんに聞いた。

べるを商店が公開したセキセイインコの多頭飼育崩壊の現場【写真:本人提供】
べるを商店が公開したセキセイインコの多頭飼育崩壊の現場【写真:本人提供】

小鳥はワクチン接種や健康診断が義務付けられておらず、病気の個体が売られていることも

 屋内に放たれた100羽を超えるインコの群れ……。愛鳥の保護活動を行う事業者が公開したセキセイインコの多頭飼育崩壊の様子に、ネット上で波紋が広がっている。犬や猫などとは異なる小鳥の飼育を巡る現実について、画像を投稿した「べるを商店(@bellwo5963)」の新井香織さんに聞いた。

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「少なくみても100羽…その他、うさぎさん モルモットちゃんなど何十といるそうです 状態はわからない だからこそ1日でも早く行政介入によるレスキュー この仔たちに明るい未来を見せてあげたいです」

 今月16日、SNS上に投稿された画像には、100羽を超えるセキセイインコの群れが屋内で放し飼いにされている様子が収められている。ショッキングな画像は700件を超えるリポスト(リツイート)、2000件近い“いいね”を集めるなど話題に。投稿には「なんでこうなるのか 1羽を大事に育てた我が家からは、考えられない」「こうなる前にどうして気付かないんだろう 多頭飼育崩壊を見るたびに思う。可愛いだけでは飼ってはいけないと思う」「なんで増やしてしまうのか…。普通管理できるのは1、2羽です。絶句です」といった声が相次いでいる。

 同日、行政介入により地元ボランティアの人たちと捕獲レスキューに参加した新井さんが現場の凄惨な状況について説明する。

「中部地方の個人宅です。鳥さんたちを傷つけないように虫取り網で1羽1羽、全て捕獲するのに3時間くらいはかかったでしょうか。セキセイインコは全部で151羽、卵は23個ありました。驚くことに、飼い主さんの話では2015年に購入した2~3羽から買い足しはしていないということで、すべて近親交配で増えた個体。足が弱かったり、目が飛び出していたり、欠損のある子も多く、またお腹に卵を抱えている子もいて、捕獲後の車での移動中も次々と卵が産まれてくるような状況でした。台風の影響で渋滞と交通規制に巻き込まれ、残念ながら卵は全滅かと思われます」

 新井さんは片足が壊死したマメルリハインコの保護をきっかけに、昨年8月から個人での保護活動を開始。飼い主やペットショップの利用者から依頼を受け、飼えなくなったり売れなくなった鳥たちを保護し、譲渡会で適切な飼育者に譲り渡す活動を行っている。今回のように100羽を超えるケースはまれだが、活動開始後の1年間で行ったレスキューは40~50件にも及ぶという。

「支援のスピード感が落ちたり、保護に費用が発生したりするので、NPOのように法人化せず、基本的に私個人で活動しています。家庭の事情で飼えなくなったという方や、鳥さんが病気になったけど治療代が払えないという方から依頼を受けたり、ときには販売店のスタッフから告発のような形で依頼が入ることもあります。NPOとは違って、販売店から保護する場合はあくまでも客として購入するしか手段がない。運営費用は寄付やチャリティーイベントの他、提携農家さんから仕入れたペットフードやおもちゃの販売でまかなっています。

 譲渡会は以前は無料でお譲りしていましたが、は虫類のエサにされていたケースがあったため、今は一般的な生体価格と同じ値段でお譲りしています。一度保護された鳥さんなので、健康状態や人慣れ具合など、条件的にはペットショップやブリーダーから購入した方がいい。それでもお金を出して購入したい、大切に育てたいと言ってくださる方にのみお譲りしています」

 犬や猫とは異なり、小鳥は販売業者によるワクチン接種や健康診断が義務付けられておらず、病気を抱えた個体がそのまま売られていることも少なくない。また、比較的安価に購入できるため「病院に連れていくくらいなら新しく買った方が……」と考える飼い主がいることも事実だ。

「オカメインコは3~5万円ほどしますが、文鳥は6000~1万円ほど、セキセイインコなら2000~3000円で購入できてしまいます。販売業者による検査義務がないので、実は売られている子で病気にかかっていない子の方が珍しいくらいなんです。5000~1万円ほど余計にかかりますが、お迎えしたら素嚢(そのう=消化管の一部で、食べたエサを一時的にためておく器官)とフンの検査だけでもしてあげてほしい。安いからと子どものおもちゃ感覚で飼われる方もいますが、おもちゃではなく、家族として迎えてあげてほしいと思います」

 べるを商店による譲渡会は今月19~20日に東京・市ヶ谷、10月に東京・南千住での開催を予定している。

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