2023年2月25日にデビュー30周年を迎えた5人組ダンス＆ボーカルグループ・TRF。来年2月18日、東京・北の丸公園の日本武道館でTRF 30th Anniversary Live at 日本武道館 「past and future.」を行う。サウンドクリエイターのDJ KOO（62）とダンスクリエイター、ダンサーのSAM（61）のENCOUNT独占対談の後編。2人が互いのこと、初期サウンドを作り上げた小室哲哉氏への思いを明らかにした。（構成＝平辻哲也）

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――来年の武道館ライブは今年2月25日ZEPP HANEDAのライブが早々に完売し、大きな反響を受けて開催が決まったと伺いました。どんなものになりますか。

DJ KOO「私はSAMにかなり頼っていて、自分のやりたいことをSAMに伝え、それを形にしてもらいたいと考えています」

SAM「メンバーそれぞれに考えや希望があると思いますが、共通して『シンプルだけど楽しい』をテーマにしたいと思っています。今後、メンバーやスタッフとの会話を通じて、さまざまなアイディアやヒントが出てくると思います。TRFが30年間の活動を経て、武道館でのライブを行うというのは、高い期待値があると感じています。それに応える形で、シンプルだけど感動的なライブを作りたいと思っています」

――武道館で開催することの意味は。

DJ KOO「武道館は、私たちにとって新たなスタートの場として非常に意味があります。最初のツアーのファイナルを武道館で行ったことを思い出しつつ、31年目のTRFとしての新たな始まりとしてのステージとしたいです」

――お2人にとって、互いはどんな存在ですか。

DJ KOO「最初の頃は、SAMのダンサーとしての表現が画面でどう映るのか、また、アンダーグラウンドからメジャーシーンへの移行がどうなるのか、といったことを考えていました。しかし、30年が経過した今、SAMの演出能力に非常に頼っています。さまざまなダンスグループが出てきていますが、我々のスタイルは独自です。DJとしての自分のスタイルや見せ方についても、さまざまな方法で楽しく取り組んでくれています」

SAM「KOOちゃんは数少ない同級生の一人です。同い年のダンサーはほんとに少ない。同じグループのメンバーとして、そして友人として、とても信頼しています。困ったことや考えていることを気軽に話せる関係性があります。お互いの考えが異なることもありますが、その違いが頼りになっています。80年代のディスコからの経験や、ラグビー部としての共通の背景など、さまざまな接点がある中、一緒にここまで活動できたのは、彼がいてくれたからだと思います」

――初期のサウンドを作り上げた小室さんは、どんな人ですか。

DJ KOO「小室さんは、感情をガンガン出すタイプではないのですが、彼からの明確な意思表示は少ないものの、彼自身が非常に熱心にTRFのことを思って支えてくれていたことを感じています。例えばTRFの新曲を出す際や『SEE THE SKY～1999…月が地球にKISSをする～』（1999年）のような曲ではプレッシャーを感じながらも、全力で支えてくれていたことを最近になってより強く感じています」

SAM「小室さんは非常に不思議な方で、私たちとの時間を共有しながらも、言葉は少ない。しかし、彼の言葉の中にはヒントが隠れていて、それをキャッチしてライブやコンサートを作る材料として使っていました。歳を重ね、長い付き合いを経て、今では小室さんの人となりや考え方をより深く理解できるようになりました」

――2人とも還暦を過ぎました。DJ KOOさんは6年前に脳動脈りゅうも経験されていますが、健康には留意されていますか？

SAM「KOOちゃんは大きな病気を経験しているので、僕よりも健康の大切さを感じていると思います」

DJ KOO「僕は毎日の生活習慣、食生活や運動、考え方も健康志向です。いつでも気持ちのマインドを明るく保っています。今まで寝ていなくても仕事ができれば良いという感じだったんですが、健康検査を受けたり、家族とともに健康を見守ることが大切だと感じています。昔はお酒を飲んで『ウェーイ！』と盛り上がっているのがかっこいいと思っていたこともあったけど、今は健康で、みんなと一緒に楽しむことが一番かっこいいと思っています」

SAM「私は高齢者の健康寿命に関するプログラム『ダレデモダンス』を作ったり、ジェロントロジー（加齢学）を勉強していますが、自分自身の健康は少し後回しにしている感じがあります。食事はタンパク質中心や、好きな野菜を取り入れることを心掛けていますが、夜中に豚骨ラーメンも食べてしまうことも。若い頃と変わらない生活スタイルを続けていますが、今は家族がいるので、夜遅くまで飲んだりはしないです。12時には寝て、朝6時には起きて活動しています。我々の世代では、まだまだ元気に活動している人がたくさんいるので、その流れに乗っていきたいです」

――個人の目標を教えてください。

DJ KOO「気負わずに、さまざまな人やジャンル、若い世代と関わり、自身を進化させていきたいです。先輩たちとの会話も非常に刺激になります。最近、浅草演芸場でDJをした際に、三遊亭好楽師匠と話をしました。師匠は77歳。すごくお元気です。師匠のように、現役で続けていくことを目指しています。これからは、5年先やもっと先を見据えて、自分を成長させていくことに焦点を当てたいです」

SAM「体と頭が元気ならば、ずっとダンスを続けていきたいと思っています。しかし、体の不調やモチベーションの低下が怖いです。そこで、3年前から能を始めました。今年12月24日には建て替えのため、一時閉館となる宝生能楽堂で、師匠（宝生流能楽師・シテ方の佐野登さん）との最後の公演を控えています。もしダンスができなくなっても、高齢者のためのダンスプログラムを続けていくつもりです。そして、さまざまなビジネスや活動に挑戦していきたいと考えています」

□TRF（ティーアールエフ）1992年、小室哲哉のプロデュースにより、サウンドクリエイターDJ KOO、メインヴォーカリストYU-KI、そしてダンスクリエイター、ダンサーSAM、CHIHARU、ETSUの5人によってテクノ・レイヴ・ユニット「TK Rave Factory」（trf）が結成された。1993年2月25日にシングル『GOING 2 DANCE/OPEN YOUR MIND』でデビュー。1996年のシングル『Hey! Ladies & Gentlemen』リリースを機にグループ名を大文字の「TRF」に改名。1994年から1995年の間に、リリースしたシングルは5作連続でミリオンセラーとなり、総計で2200万枚以上を販売し、ダンスミュージック界に一大ムーブメントを起こした。2012年6月には、ヒット曲とエクササイズを組み合わせた新しいコンセプトのDVD『EZ DO DANCERSIZE』をリリース。このDVDは大きな反響を呼び、シリーズ全体で350万枚以上の売上を記録した。

□DJ KOO（ディージェイ・コー）1961年8月8日、東京都出身。TRFのDJ・リーダー。ソロとしては、ダンスクラシックやEDM、J-POPなど幅広い音楽をプレイし続けている。近年では、日本の伝統的な“お祭り”や“盆踊り”とのコラボを展開。2019年のアフリカ盆踊りの実現や、洋楽ノンストップコンピレーションアルバムのリリース、そして22年の日本盆踊り協会特別名誉顧問就任、大阪芸術大学客員教授就任など、多岐にわたる活動を行っている。

□SAM（サム）1962年1月13日、埼玉県岩槻出身。TRFのほか、SMAP、東方神起、BoA、V6など多くのアーティストの振り付けやコンサートプロデュースを手がける。自らが主宰するダンススクール「SOUL AND MOTION」を2004年に開校し、07年には日本工学院専門学校ミュージックカレッジ ダンスパフォーマンス科のトータルプロデューサーに。12年の「EZ DO DANCERSIZE」DVDシリーズは累計380万枚のセールス。16年には「ダレデモダンス」を設立し、2022年には認知症対策として「リバイバルダンス」DVDをリリース。