高速バス業界は「サラリーマン化」 “長時間ブラック”イメージでも「意外にそうでもないです」
長時間労働の是正を中心とした働き方改革は、あらゆる業界で必要に迫られている。長時間勤務のイメージが強いバス業界だが、ある高速バスの運転手が、いい意味で「サラリーマン化」が進む現状についてSNSで報告し、話題を集めた。「意外にそうでもないですよ」という実際の労働環境とは。
名古屋―東京間の片道運行「準備や車庫入れを含めて1日8時間以内」
長時間労働の是正を中心とした働き方改革は、あらゆる業界で必要に迫られている。長時間勤務のイメージが強いバス業界だが、ある高速バスの運転手が、いい意味で「サラリーマン化」が進む現状についてSNSで報告し、話題を集めた。「意外にそうでもないですよ」という実際の労働環境とは。
「高速バス業界はだいぶサラリーマン化されてきていて、うちの営業所ではほとんど法定労働時間に収まっています。月給、賞与合わせてそこそこの年収になります。若い人もどんどん入社し、運行便数も増え、収益が上がるので、給与も上がります。人手不足な状態ではないです」
高速バス運転士@中部地区(@HWBDChubu)さんによるX(ツイッター)の投稿は、“300”いいね、1.6万回を超える閲覧数を記録している。
大学新卒で業界入りし、数年ほど勤務しているZ世代の高速バス運転士さん。路線バス・観光ツアーバス・高速バスの3種類に分けられるバス業界で働く実情について聞いてみると、「私は名古屋―東京間をお客様を乗せて走る高速バスの運転に携わっています。『長時間労働が大変そう』『ドライバーの年齢層が高め』『人手不足でブラック』というイメージで世の中から見られがちですが、実際は意外にそうでもないんですよ。高速バス業界のイメージが向上し、もっと人手が増えたらいいなと思い、投稿しました」と教えてくれた。
名古屋から東京を毎日同じ道で運行し、よほどの大渋滞にはまらなければ、1日8時間労働で終わるという。「1日片道運行で終了し、翌日に同じ道で帰ってきます。休憩時間を含めて片道で5時間30分ほど、バスの準備や車庫入れを含めて、1日8時間以内で業務を終える形です。次の日の勤務まで12時間以上空くので、プライベートの時間も十分確保できます」と明かす。高速バス運転士さんの営業所では公休は年間105日以上あり、「休日出勤を頼まれることもありますが、断ることもできます。もちろん出勤して走れば給料に反映されます」とのことだ。
それに、「車庫でバスの掃除を行う際に、昔のようにサービス残業で毎回時間をかけてワックスをかけてピカピカにするといったことはせず、お客様が不快に思われない程度できれいに掃除・ワックスがけをするという流れになっています」。無駄な残業をなくしたり、夜行運転を終えて朝に営業所に到着後はダラダラせずに帰るといった意識付けが浸透しているという。
過去に残念ながら起きてしまった事故などの教訓から、業界全体で労働環境の改善が重ねられてきたといい、「私は経験がありませんが、過去には昼間に名古屋から東京に行って、数時間の仮眠を挟んで夜行で帰ってくるという日程もあったと聞きました。『お客様の命を預かっている』ということを改めて確認し、見直しを図ってきたと理解しています。ハード面でも、事故防止の技術を含めて、乗務員にとって運転が楽になっています」と強調する。
「このままでは若い世代がついてこなくなってしまいます」
働き方改革が推し進められる中で、来年4月から、トラックやバス、タクシー運転手を対象に、時間外労働の上限規制などが実施される。一方で、運転手の収入減などを要因とする人手不足の悪化を懸念する声も上がっている。
高速バス運転士さんは「私は高速バスのドライバーなので、他の業界の事情について詳しく分かりませんが、やはり人間らしく働くということは大事なのではないでしょうか。『仕事も生活の一部だ』と考える世代の方々と、『仕事とプライベートは分ける』と考える若い世代のギャップが生じてしまい、このままでは若い世代がついてこなくなってしまいます。家庭、余暇、趣味の時間は人生において大事なものです。ある程度、法律でもって流れを持っていくことも必要なのかなと感じています」。収入の安定とともに、時代に合わせたワークライフバランスを実現するための工夫や変化が求められそうだ。