48歳ママ落語家・柳亭こみちが「生き残りたい」で始めた挑戦 笑点メンバーも反応「こんな面白いのは…」

落語家・柳亭こみち(48)が明日12日、東京・日本橋社会教育会館で芸歴20年記念公演『この落語、主役を女に変えてみた~ こみち噺スペシャル』を開催する。古典落語に登場する男性を女性に変換した“こみち噺”の会で、他に女性落語家3人が出演する。「女性の立場から古典落語に新たな魂を吹き込む」をテーマにしたイベントでもあり、こみちにその狙いと戦略を聞いた。

柳亭こみち
柳亭こみち

芸歴20年の柳亭こみち

 落語家・柳亭こみち(48)が明日12日、東京・日本橋社会教育会館で芸歴20年記念公演『この落語、主役を女に変えてみた~ こみち噺スペシャル』を開催する。古典落語に登場する男性を女性に変換した“こみち噺”の会で、他に女性落語家3人が出演する。「女性の立場から古典落語に新たな魂を吹き込む」をテーマにしたイベントでもあり、こみちにその狙いと戦略を聞いた。(取材・文=渡邉寧久)

 こみちは早稲田大を卒業後、出版社に就職した。だが、故柳家小三治さん(享年81)の落語に衝撃を受け、28歳の2003年2月、小三治さんの弟子・柳亭燕路に入門。前座、二つ目を経て17年9月に真打ちに昇進した際には、その先の難しさを感じていた。

「死に物狂いで古典落語と闘っても、寄席の楽屋にいるのは落語の猛者、バケモノみたいな才能を持つ巨人の師匠や兄さんたち」「人間国宝の五街道雲助師匠や『笑点』メンバーの兄さんが並ぶ番組(=プログラム)で、自分にしかできないものをやらないと心に残らない」「もっとお客さんが喜んでくださる形を探したい」

 東京で初めて女性真打ちが誕生したのが、1983年。江戸時代に始まった寄席興行で大部分の歴史を担ってきたのは、男性落語家による芸の数々だ。その現実と焦りの中、三遊亭白鳥が当て書きをしてくれた江戸落語『長屋の花見 おかみさん編』を披露すると、客に大受けした。女性が主人公の作品。こみちが1つの手応えをつかんだ瞬間だった。

「お客さんの笑い声の量が半端なく増えるんです。目の前のお客さんが笑うこと、喜ぶことを体感しました」

 こみちは入門時から「古典落語をまっすぐやりたい」と思ってきたが、この成功体験が路線を少し脇へとずらした。

 壺を買うために、変な値切り方をして店側を混乱の極みへと突き落とす滑稽噺『壷算』。元の噺では、値切る人も、値切られる店の人も男性だが、こみちは値切る人を大阪のおばちゃんに変えた。これがビンゴ! 客席がドッと沸いた。

 これまで改作した噺は約30本で、「他にも女性の登場頻度を上げている噺が、70席ほどあります」。いわゆる“女性活躍落語”で、そばっ食いの大食漢が出てくる噺『そば清』を『そばの清子」に変えた噺がラジオに流れたことがあった。直後、『笑点』メンバーの林家たい平からLINEが届いたという。そこにはこう書かれていた。

「こんな面白い『そば清』を、生まれて初めて聞きました。こんどお稽古、お願いします」

 同じく『笑点』でおなじみの春風亭一之輔には、寄席で顔を合わせるたびに「今日、女版やるのか?」と聞かれるという。実績のある同業者に認知され、師匠の燕路にも「女版、作れ。作っていいぞ」とお墨付きをもらっている。

 そして、『この落語、主役を女に変えてみた~ こみち噺スペシャル』では、自身が名作『らくだ』を改作した『らくだの女』を披露する。その他、弁財亭和泉が『死神婆』、春風亭一花が『井戸の茶碗~母と娘編』、古今亭雛菊が『あくび指南 女版』を演じる。

「他の女性落語家が“こみち噺”をしゃべるのは初めてです。打ち上げ花火のつもりでやりますし、どんどん広まって普段の寄席でもかけてほしいです。私自身、60代、70代になっても、寄席に顔付けされる芸人になりたいと思うと同時に、“こみち噺”を落語のジャンルに残せたらいいなと思っています。人生を懸けています」

 こみちいわく、「自分で何かを生み出さないと生き残れないのが落語界」。2児の母でもある48歳は落語活性化のため、自分のためにこの会に臨む。

□柳亭こみち(りゅうてい・こみち) 1974年12月10日、東京・東村山市生まれ。早稲田大第二文学部卒。出版社勤務を経て、28歳の2003年2月に人間国宝・柳家小三治さんの高弟・7代目柳亭燕路に入門。前座名はこみちで、06年11月に二つ目に昇進。17年9月に真打ちに昇進した。日々、高座に上がり、ナレーション、講演、執筆、学校寄席などでも活動。特技は日本舞踊で吾妻流名取。家族は夫の漫才師・宮田昇(46)と長男(10)、次男(7)。

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