盗撮ハンターは「自警団でもなんでもありません」 加害者狙う“もう1つの犯罪”、専門家が明かす実態

犯罪行為の「盗撮」を巡り、盗撮の加害者をターゲットにした“もう1つの犯罪”が問題化している。盗撮行為を見つけて接触し、金銭を脅し取る「盗撮ハンター」だ。今年8月1日には、女性を盗撮した男性に「会社にバレたらクビだよ」などと言い寄って現金100万円を脅し取った疑いで男3人が警視庁に逮捕されたニュースが注目を集めた。盗撮行為は言語道断だが、加害者のやましさにつけ込むハンターの実態とはどのようなものなのか。盗撮事件に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士がENCOUNTに寄稿文を寄せた。

盗撮は犯罪で言語道断だが“盗撮ハンター”の存在も問題視されている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
盗撮は犯罪で言語道断だが“盗撮ハンター”の存在も問題視されている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「盗撮は犯罪」の大前提、身分証をコピーされ消費者金融を回らせる脅しの手口も

 犯罪行為の「盗撮」を巡り、盗撮の加害者をターゲットにした“もう1つの犯罪”が問題化している。盗撮行為を見つけて接触し、金銭を脅し取る「盗撮ハンター」だ。今年8月1日には、女性を盗撮した男性に「会社にバレたらクビだよ」などと言い寄って現金100万円を脅し取った疑いで男3人が警視庁に逮捕されたニュースが注目を集めた。盗撮行為は言語道断だが、加害者のやましさにつけ込むハンターの実態とはどのようなものなのか。盗撮事件に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士がENCOUNTに寄稿文を寄せた。

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 そもそも盗撮ハンターというのは何かということについて、典型的なのが、例えば新宿駅などで盗撮をしている人間を見つけ、その盗撮犯に「今盗撮してただろ。警察にいくぞ」と言って声をかけます。盗撮犯のほうもなんとか警察に連れていかれないようにと考え、「示談になりませんか」と両者の間で話が始まっていきます。

 盗撮ハンターの目的は金銭ですが、彼らもいろいろな手法を知っており、法律について詳しい知識を持っています。かつての主流は、「お前が撮影していた被害者は俺の彼女だ」とうそを言って、盗撮犯側から示談にしてくれませんかという話を待つタイプでした。

 ただ、実際に盗撮被害に遭った女性と関係がなければ、「俺の彼女だ」とうそをついてお金を受け取る行為は詐欺罪に該当することはハンター側も分かっています。それゆえ、実際には女性とグルになっていて、ハンターが盗撮犯側から受け取ったお金について、実際に女性に渡しているケースもあります。こうなってくると詐欺とは言いにくくなり、恐喝罪になるかどうかという話になります。実際、女性も含めて恐喝罪で立件されたケースもあります。

 いずれにしても、盗撮ハンターは自分からお金の話をすることはありません。「警察にいくのが嫌であれば、何ができるか自分で考えろ」と差し向け、盗撮犯側からお金の話が出てくるのを待ちます。そして金額の話になれば、ハンター自身が例えば東京都の迷惑防止条例(100万円以下の罰金などと罰則が規定)などを調べて「示談なら100万円だ」と突き付けます。

 そして、ハンター側は、お金をつくる手段にとにかく詳しいという特徴があります。消費者金融を回らせ、業者との受け答え方法について指示があったり、現金の持ち合わせがない場合には換金しやすい新幹線のチケットをクレジットカードで大量に購入させたりします。銀行の仕組みにも詳しく、ATMの引き出し限度額を一時的に上げる方法も知っています。

盗撮事件に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士【写真:本人提供】
盗撮事件に詳しいレイ法律事務所の河西邦剛弁護士【写真:本人提供】

「全ては盗撮した人間の自業自得ということに尽きます」

 私は今まで600件以上の盗撮等の刑事事件を扱っており、毎年1000件近くの相談を受けています。傾向について言うと、盗撮被害が多発する場所に盗撮ハンターはいます。

 まず、新宿駅は盗撮被害が多発します。盗撮犯は改札付近で人待ちをしているふりをして、物色し、対象(被害者の女性)を見つけると階段やエスカレーターで行為に及びます。他には、東京駅の京葉線の長いエスカレーターです。アミューズメントパーク帰りの女性を狙っているケースです。横浜駅の中央改札口のエスカレーターも少なくありません。

 こういった盗撮被害が多発する場所を狙い、盗撮ハンターたちも恐喝行為を行っているということです。

 盗撮ハンターは自警団でもなんでもありません。なぜならば金銭目的の犯罪だからです。その一方で、盗撮犯も犯罪行為を行っています。恐喝の被害者ではありますが、言うまでもなく盗撮の加害者で擁護できる余地がありません。

 盗撮した側にとっては地獄の始まりです。盗撮ハンター側は、盗撮犯の身分証明書のコピーを取得したり、写真撮影をして保管しています。事件から数年後に、盗撮ハンターが別件で逮捕され、その際の押収物から芋づる式に数年前の盗撮事件が明るみになり、ある朝警察官数人が盗撮犯の自宅に突然現れ、「何で来たか分かるよね」ということになります。

 全ては盗撮した人間の自業自得ということに尽きます。まずは絶対に盗撮という犯罪に及ばないこと。盗撮してしまったらずっとビクつきながら生活するか、悔い改め自首を検討するかでしょうか。

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