健常者から“詐欺呼ばわり”…「白杖=全盲とは限らない」視覚障がい者が語るロービジョンの現実
視覚障がい者や目の不自由な人が安全に歩行するために、なくてはならない白杖(はくじょう)。一方で、障害の程度は人それぞれで、中には誤解を受けてしまうケースもある。ネット上では、白杖を使っている最中に、健常者から詐欺呼ばわりされたと訴える投稿が話題を呼んでいる。投稿者に話を聞いた。
白杖を使っている最中に、健常者から詐欺呼ばわりされたと訴える投稿が話題に
視覚障がい者や目の不自由な人が安全に歩行するために、なくてはならない白杖(はくじょう)。一方で、障害の程度は人それぞれで、中には誤解を受けてしまうケースもある。ネット上では、白杖を使っている最中に、健常者から詐欺呼ばわりされたと訴える投稿が話題を呼んでいる。投稿者に話を聞いた。
「さっき市役所での事!! 遮光メガネをしたまま白杖をついて本庁へ。用事を済ませエレベーターに乗ったら先客が…普通に乗って1階ボタンを押して閉めるボタンを押した。『なんだー、見えとるがな!』とおっちゃんが…」
今月20日、視覚障害のある投稿者が健常者の男性から声をかけられたという投稿は、3000件を超えるリツイート、8000件の“いいね”を集めるなど話題に。投稿者が「ええ…視野障害なんで真ん中は普通に見えてるんですよ」「ロービジョンいわゆる弱視でも杖使わないと危ないもので…」と説明したところ、男性から「見えとるんやったら、白杖つかんでもええがな!! 紛らわしい!!」「そんなん見えとったら白杖使ったら詐欺やがな!!」とまくしたてられたという。
一連の投稿は「ロービジョンの人たちが、よく詐欺呼ばわりされてるのは知ってたけど、初めて言われてめっちゃ腹が立った まだドキドキしてる…」という言葉で結ばれており、「#白杖イコール全盲とは限りません」「#ロービジョン」「#網膜色素変性症」など、視覚障害の現実を訴えるハッシュタグが添えられている。
「祖母が緑内障を患い、私が小学生の頃には全盲でした。社会人になって眼科へコンタクトレンズを処方してもらいに行ったときに、祖母が緑内障だから検査してほしいと頼んだところ、網膜色素変性症だと告げられました」と投稿者。網膜色素変性症とは、目の奥の網膜にある視細胞が死滅していき、徐々に視野が欠けていく遺伝性かつ進行性の難病だが、投稿者の場合は突発型で家族親戚には同様の病気の者はいないという。
その他にも、輪状暗点といってドーナツ型に視野が欠ける「視野狭窄」、光がないところでは何も見えない「夜盲」、太陽が出ているところでは目が開けられないほどまぶしく景色全体が白っぽくモヤが掛かっているように見える「羞明(しゅうめい)」、色の識別が困難な「色覚異常(色盲)」や視界の中を黒い物体が動いているように見える「飛蚊症」など、複数の症状があるという。矯正視力は右目で0.7、左目で0.5あり、パソコンもスマホも使用できるものの、視界中心の視野は10度程度しかなく、障害者等級は2級。日常生活では白杖を使用しているのが現状だ。
投稿者のように、たとえ見えていたとしても「見えにくい」「まぶしい」「見える範囲が狭くて歩きにくい」など、日常生活での不自由さをきたしている状態のことを「ロービジョン」といい、適切なケアが求められているが、社会全体での認知が進んでいるとは言いづらいのが実情だ。「白杖=全盲とは限らない。視覚障がい者のうち全盲の方は1割ほどで、あとの9割の方は何かしら見えてる状態です。逆にいうと、単独で白杖使用してらっしゃる方はロービジョンの方だと断言できるくらいです」と投稿者。今回の一件を機に、ロービジョンへの理解が進むことを願っている。